岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
71 巻, 3 号
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綜説
  • 佐藤 洋一, 相澤 純, 田島 克巳, 伊藤 智範
    2019 年 71 巻 3 号 p. 75-87
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    科学における不正(偽造・捏造,改ざん,盗用)が繰り返し起きている.とりわけ,科学者の就職や昇進時において研究業績が求められるようになってから,不正の事例が表立って報告されるようになってきた.多くの事例を調べてみると,研究不正の動機として,1)知的満足感を得るため,2)周囲から注目されたいため,あるいはいたずら心,3)結論ありきで,ストーリーに沿ったデータを求める上司,あるいは本人,4)営利企業に有利な結果を出すことによる資金獲得という誘惑,があげられる.また,背景として若い時に受けた研究不正に関する不適切な指導と,実験研究の細部まで目を配ることができなくなった研究体制があげられる.査読や同僚評価,あるいは煩雑な不正防止規程は抑止策として十分とは言えない.研究不正は科学の進歩に計り知れない損害を与えるだけに,教育課程の中でしっかりした研究を実体験させる必要がある.
研究
  • 中野 雄介, 脇本 将寛, 鈴木 健二, 大塚 幸喜
    2019 年 71 巻 3 号 p. 89-98
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    腹腔鏡下大腸切除術を施行された患者において,超音波ガイド下腹壁末梢神経ブロックとオピオイドの併用が術後ストレスホルモン及び臨床経過に与える効果を検討した.85名の患者が組み込まれ,術後鎮痛法別にオピオイド単独(H)群と神経ブロック併用(L + PNBs)群の二群にランダムに振り分けた.血漿カテコラミン値(エピネフリン,ノルエピネフリン,ドパミン)と血清コルチゾール値を麻酔導入後(T1),抜管前(T2),術後第一病日朝(T3)の3回測定し,visual analog scale(VAS)値,術後嘔気嘔吐(PONV)の発生も記録した.エピネフリン値とVAS値はT3においてL + PNBs群で有意に低く,第三病日までのPONVはL + PNBs群で有意に少なかった.腹腔鏡下大腸切除術の術後鎮痛において,オピオイドに腹壁末梢神経ブロックを併用することはストレスコントロールと鎮痛,PONV抑制の点で有用である.
  • 神馬 瑶子, 幅野  渉, 小澤 正吾, 寺島  潤
    2019 年 71 巻 3 号 p. 99-108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    β-naphthoflavone(βNF) はaryl hydrocarbon receptor(AhR)のアゴニストとして使用されてきた合成フラボノイドである.βNFはAhRに結合し,薬物代謝酵素の発現を誘導することが明らかになっている.βNFと同様にAhRのリガンドとなるbenzo[a]pyrene(B[a]P)は,肺における発がん誘導に重要な化学物質として知られており,我々はこれまでに,B[a]Pが肺がん3次元細胞塊(3D細胞塊)の細胞増殖を増強することを見出している.しかし,これまでβNFと肺がん細胞との関連についての研究は,薬物代謝酵素の誘導についての研究が中心であった.本研究では3D肺がん細胞塊を用いて,βNFの肺がん細胞への影響を細胞増殖に着目して調べた.その結果,B[a]Pが細胞増殖を誘導するのに対し,βNF添加のがん細胞塊では細胞数が増えず,同じAhRのアゴニストであっても肺がん細胞における細胞増殖への関与は相反する結果となった.これらの結果は,肺がん細胞の増殖・進展メカニズムの解明に有用な知見を与えるものと考える.
症例
  • 岩岡 和博, 前田 哲也, 鈴木 啓生, 寺山 靖夫
    2019 年 71 巻 3 号 p. 109-113
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒトヘルペスウイルス6 (human herpesvirus 6, HHV-6)は,免疫抑制状態にある患者において,脳炎や髄膜炎を惹起することが知られている.症例は73歳,男性.免疫不全の誘因となる基礎疾患や,内服歴はない.来院する2ヵ月前に帯状疱疹の治療歴あり.意識障害と,記憶障害を主訴に来院した.入院当初の髄液検査では,明らかな細胞数増多を認めなかった.帯状疱疹の既往より, 帯状疱疹関連脳炎を第一に考え,アシクロビル単剤で加療を行ったが,第2病日に意識障害の悪化を認めた.ステロイドパルス療法を施行したところ,急速な症状改善を認め,追加検査にてHHV-6 DNAが検出されたため, HHV-6脳炎と診断した.HHV-6脳炎の神経学的予後は不良であり,早期診断が望まれるが,免疫不全のない患者においてHHV-6脳炎の報告は稀であるため常に念頭に置き,診療に当たることが重要である.
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