β-naphthoflavone(βNF) はaryl hydrocarbon receptor(AhR)のアゴニストとして使用されてきた合成フラボノイドである.βNFはAhRに結合し,薬物代謝酵素の発現を誘導することが明らかになっている.βNFと同様にAhRのリガンドとなるbenzo[a]pyrene(B[
a]P)は,肺における発がん誘導に重要な化学物質として知られており,我々はこれまでに,B[
a]Pが肺がん3次元細胞塊(3D細胞塊)の細胞増殖を増強することを見出している.しかし,これまでβNFと肺がん細胞との関連についての研究は,薬物代謝酵素の誘導についての研究が中心であった.本研究では3D肺がん細胞塊を用いて,βNFの肺がん細胞への影響を細胞増殖に着目して調べた.その結果,B[
a]Pが細胞増殖を誘導するのに対し,βNF添加のがん細胞塊では細胞数が増えず,同じAhRのアゴニストであっても肺がん細胞における細胞増殖への関与は相反する結果となった.これらの結果は,肺がん細胞の増殖・進展メカニズムの解明に有用な知見を与えるものと考える.
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