岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
70 巻, 3 号
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原著
  • 奥野 孟, 今泉 利康, 坂本 うみ, 酒井 大典, 福田 一央, 三部 篤, 真柳 平, 祖父江 憲治, 黒坂 大次郎
    2018 年 70 巻 3 号 p. 81-90
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)で刺激した水晶体上皮細胞において, Myocardin関連転写因子A(MRTF-A)がI型コラーゲンの発現に影響を及ぼすかどうかを明らかにするために,ヒトの水晶体上皮細胞B3 (HLE-B3)に,MRTF-Aに対する低分子干渉RNA(siRNA)をトランスフェクトし,TGF-β2の有無で培養した.さらにα平滑筋アクチン(α-SMA)およびI型コラーゲン発現をMRTF-A阻害剤であるCCG203971で検討した.遺伝子発現はreal-time PCRによって,MRTF-Aの細胞内局在を免疫細胞染色によって検討した.TGF-β2を添加することによってMRTF-Aの細胞質からの核内移行を促進した.HLE-B3細胞におけるTGF-β2の添加は、対照のsiRNAにおいてα-SMAおよびI型コラーゲン発現を増加させたが,MRTF-A siRNAでは増加しなかった.さらに,CCG203971はTGF-β2依存性にα-SMAおよびI型コラーゲン誘導を阻害した.今回,HLE-B3細胞においてTGF-β2がMRTF-Aの核内移行を刺激し,α-SMAおよびI型コラーゲン発現を促進することを示した.この検討でMRTF-A阻害剤であるCCG203971が,前嚢下白内障および後嚢下混濁による視力低下を予防し得ることを示唆した.
  • 齊藤 美帆, 木村 英二, 人見 次郎
    2018 年 70 巻 3 号 p. 91-99
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒトを含め哺乳類の頭部血管系が,どのように形成されるのかは,いまだ十分解明されていない.本研究では,神経板と頭突起が形成される時期のマウス胚の連続切片と透明化ホールマウント標本を作製し,初期血管内皮細胞をPECAM-1の免疫染色で同定することにより,頭部の脈管形成の詳細を解析した.その結果,背側大動脈が第一大動脈弓との連絡部を超えて頭端領域まで伸長し,その拡張した先端部が神経板に接することが明らかとなった.さらに,背側大動脈先端部分と神経板直下の血管系が心臓原基や背側大動脈と独立して形成される可能性も示唆された.これまで背側大動脈の頭端についての記載は無く,頭部の主要な血管形成を担うとされてきた原始内頸動脈の発生も含めて,頭部血管系の脈管形成は再考されるべき課題と言える.
  • 鳥谷 由貴子, 松本 敦, 吉田 太郎, 伊藤 歩惟, 土屋 繁国, 高清水 奈央, 小西 雄, 外舘 玄一朗, 小山 耕太郎
    2018 年 70 巻 3 号 p. 101-106
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    過去10年間の当院新生児集中治療室における18トリソミー児15例の周産期歴,治療方針,予後について検討し,当院での現状を示した.13例が出生前に18トリソミーの可能性を指摘されていた.在胎週数の中央値は39.1週で,出生体重の中央値は1,887gであった.全例に先天性心疾患を合併し,3例に先天性消化器疾患に対する外科的治療が行われた.自宅退院したのは1例のみであり,11例が新生児集中治療室で死亡していた.生存期間の延長に,非侵襲的・侵襲的陽圧換気の使用と無輸血であることが関連していた. 18トリソミーは多彩な心・消化器合併症と中枢性無呼吸発作,重度の精神運動発達遅滞を伴い,1年生存率は10%前後とされているが,積極的な治療介入によって生存期間が延長される児がいることがわかってきた.しかし,合併症の重症度によって児の予測される予後や可能な治療の選択肢は異なるため,症例に応じた対応が必要である.
症例
  • 千葉 智恵美, 酒井 大典, 坂本 うみ, 菊地 彩, 奥野 孟, 田中 三知子, 黒坂 大次郎
    2018 年 70 巻 3 号 p. 107-111
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    非穿孔性眼外傷による水晶体後嚢破裂を伴う白内障は,若年者にまれにみられる外傷性白内障である.我々は2例の12歳の男児の手術を行った.症例1は登校旗のプラスチック棒により左眼を受傷し,症例2は野球ボールで右眼を受傷した.それぞれ受傷後8週,8か月で手術を行った.手術は強角膜切開で行い,術中に硝子体の逸脱はみられず,眼内レンズを嚢内に挿入することができた.水晶体後方に水晶体由来のfish-tailやwhite dotsが見られたが,それらは吸引のみで消失した.後嚢切開や前部硝子体切除は行わなかった.今回の症例では後嚢と前部硝子体をつなぐWieger靭帯で囲まれたBerger腔が水晶体後嚢の役割を果たした可能性が考えられた.術後視力は1.0以上が得られた.
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