岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
70 巻, 6 号
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特別講演
  • 超高精細CTの登場と臨床応用
    吉岡 邦浩
    2019 年 70 巻 6 号 p. 181-187
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    超高精細CTは,従来のCTと比較して8倍の空間分解能を有する最新鋭のCT装置である.具体的には,超高精細CTの最小スライス厚は0.25mmであり,1画素は0.25×0.25×0.25mmである.この超高精細CTの開発は,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして国立がん研究センターを中心とした研究チームによって始められたが,実用化を目指した研究開発には岩手医科大学も加わり心血管領域を担当した. 超高精細CTではその優れた空間分解能から,診断精度の向上や微細構造の描出が期待されている.冠動脈疾患では,測定誤差が極めて少なく診断精度が高いことが明らかになった.また,大動脈の手術の際に問題となるAdamkiewicz動脈の診断能も有意に高いことが判明した.さらには,従来のCTでは描出が困難であった足(手)指の動脈の描出も可能であることが実証された.
  • 佐々木 章
    2019 年 70 巻 6 号 p. 189-196
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    肥満外科手術は, 長期的な体重減少の維持と肥満関連健康障害の改善が内科治療に比べて優れていることが高いエビデンスレベルで証明され,最近では代謝疾患が術後早期に改善することから,メタボリックサージェリー(代謝改善手術)として注目されている.この背景から,米国糖尿病学会のガイドライン2017年板では,2型糖尿病に対する治療において,BMI≧37.5 kg/m2のアジア人では血糖コントロールに関わらず,BMI≧32.5 kg/m2では血糖コントロールが不良な患者に対してメタボリックサージェリーが推奨された.わが国のメタボリックサージェリーの多施設共同研究では,術後3年の糖尿病寛解率は78%と海外よりも良好な成績であるが, 長期成績の検討が課題である.メタボリックサージェリーの糖尿病に対する効果発現の機序については明確となってはいないが,消化管ホルモン,アディポカイン,胆汁酸シグナル,腸内細菌, 臓器連関などの関与が報告されている.
  • 櫻庭  実
    2019 年 70 巻 6 号 p. 197-202
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    顕微鏡下で血管や神経を縫合する技術であるマイクロサージャリーは,臨床応用されるようになってから60年近くが経過する.高度な技術が要求される難しい手術と考えられがちだが,現代では切断指再接着や遊離組織移植による再建外科などなくてはならない技術の一つとなっている.著者がこれまで経験した再建外科の症例を供覧し,更に最近の進歩についても紹介する.
  • 分子標的薬と免疫療法
    前門戸 任
    2019 年 70 巻 6 号 p. 203-215
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    20年前までの肺がん治療は手術,放射線,化学療法の三本柱であったが,2002年から分子標的薬のゲフィチニブ(イレッサ)が上市され,その中で劇的な効果を発揮する患者が活性型EGFR遺伝子変異を有することが2004年に判明した.その後,ゲフィチニブをはじめとしたEGFR-チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が複数開発され,肺癌治療の一つの柱となった.EGFR-TKI治療の一つの問題点は,耐性遺伝子変異の出現である.この耐性の原因の50%がEGFR耐性遺伝子変異T790Mであり,この遺伝子変異に対する薬剤オシメルチニブ(タグリッソ)が開発され,耐性克服に繋がっている.このオシメルチニブは,活性型遺伝子変異と耐性遺伝子変異の両方に活性を持っているため,現在は初期治療からオシメルチニブが用いられる様になっている. 進行肺がん治療のもう一つの進歩は,免疫チェックポイント阻害剤である.肺がんの場合,ニボルマブを含め4種類のPD-1/PD-L1阻害剤が使用可能となっている.これらの薬剤はがん免疫に対するバリアを外すことで自己の免疫が腫瘍を攻撃してくれるため,がんが正常細胞と異なるがん抗原を出していることが必要である.一番のがん抗原が遺伝子変異により作り出される変異タンパク質であり,これは喫煙者に多いことが知られている.この免疫チェックポイント阻害剤の出現により進行した肺がんでも治癒する患者が出始めている.進行期肺がん治療も延命ではなく,治癒を目指せる時代に移りつつある.
抄録
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