岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
73 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Original
  • 脇本 将寛, 鈴木 健二
    2021 年 73 巻 2 号 p. 53-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    心房中隔欠損症患児では健常児に比して左心室の狭小化を伴っており,全身麻酔導入後低血圧を呈しやすいことが考えられる.しかし,その術前予測因子については未だ明らかでないため,今回はそれについて後ろ向き調査を行った.対象は15歳以下の二次孔型心房中隔欠損症患児120名.身体所見,バイタルサインおよび心エコー検査所見についてカルテより収集し,麻酔導入後低血圧の有無で二群に割付して統計処理を行った.導入後低血圧群では,術前の収縮期および平均血圧が有意に高かった(順にp <0.0001,0.0022).これらは収縮期血圧の低下率ともよく相関していた(順にr = -0.5548, -0.3349).しかしながら,その他の身体所見,心エコー検査所見や麻酔薬には群間差がみられなかった(p > 0.05).結論としてこの研究では,心房中隔欠損症患児は術前の血圧が高いほど麻酔導入後に低血圧を呈しやすかった.一方,心エコー検査からはそのリスクを予測することは難しかった.
  • 中村 侑哉, 木村 聡元, 大塚 幸喜, 松尾 鉄平, 八重樫 瑞典, 佐々木 章
    2021 年 73 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    直腸癌手術は比較的難易度の高い手技であり,修練初期に安全に行うために,患者選択を慎重に行う必要がある.本研究では,腹腔鏡補助下直腸手術(laparoscopic-assisted rectal surgery, LARS)と ロボット支援下直腸手術(robotic-assisted rectal surgery, RARS)のlearning curve形成期に適した患者選択の指標を目的に,患者背景,画像所見と手術成績から,難易度に関わる因子を検討した.多変量解析では,LARSは血管結紮位置,骨盤入口径,腹部内臓脂肪面積,骨盤容積,RARSは直腸容積が難易度因子として抽出された.手術法による交互作用の検討では,LARSと比較しRARSで直腸容積が有意に難易度を上げる因子となっていた.他の多くの因子でLARSとRARSの回帰直線が正負逆の傾きを示す結果となり,ロボット支援下手術では腹腔鏡下手術とは違った教育プログラム構築の必要性が示唆された.
  • 高清水 清治, 大塚 幸喜, 八重樫 瑞典, 木村 聡元, 松尾 鉄平, 佐々木 章
    2021 年 73 巻 2 号 p. 73-884
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    肥満大腸癌の腹腔鏡手術は難易度が高く,当院では2014年から周術期合併症軽減の目的で肥満患者に対し術前減量を行なっている.2012年から2020年まで待機的に腹腔鏡下大腸切除術を行なった大腸癌1,247名を対象に,肥満群と非肥満群の短期手術成績を検討した.さらに肥満大腸癌患者に対する術前減量の安全性と有効性を検証する目的で,減量前後の免疫,栄養,腫瘍学的項目の評価と肥満患者の短期手術成績 (減量群と非減量群) を比較した.肥満群の短期手術成績は,手術時間(202.5 vs 184.0 分,p < 0.001),出血量(12.0 vs 10.0 ml,p = 0.007)が多く,郭清リンパ節(20.0 vs 21.0 個,p = 0.048)が有意に少なかった.術前減量では平均4.9kg (5%)の体重減少と平均21.0 cm2 (7%)の内臓脂肪面積減少が得られ,安全性を示す栄養や免疫学的指標の極端な悪化は認めなかった.肥満群の減量効果は郭清リンパ節数(減量群23.5 vs 非減量群 11.5 個, p = 0.002)に影響を与え, 減量によってより精度の高いリンパ節郭清を施行できる可能性がある.
  • 片岡 郁美, 山本 佳世乃, 德富 智明, 福島 明宗
    2021 年 73 巻 2 号 p. 85-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,乳房を日常的に意識して生活するブレスト・アウェアネスと言う概念が再認識されている.高濃度乳房と若年層乳がんに対する具体的な対応策であり,実践行動として乳房セルフチェックが推奨されている.本研究では,乳房セルフチェックの実態を把握し, さらに実施頻度に影響を与える要因を分析することを目的とした.2019年に青森県で20歳以上の一般女性を対象にアンケート調査を実施し206名を分析した.乳房セルフチェック実施割合は59.2%であり,そのうち定期的実施は17.0%と低かった.順序ロジスティック回帰分析の結果,実施頻度に影響する要因として40歳以上であること(OR = 2.56,95% CI:1.36 - 4.83,p = 0.003),検診を定期的受診していること(OR = 2.86,95% CI:1.37 - 5.98,p = 0.019),高濃度乳房と言う言葉だけ聞いたことがあること(OR = 3.12,95% CI:1.48 - 6.58,p = 0.003),高濃度乳房の意味を理解していること(OR = 3.71,95% CI:1.60 - 8.62,p = 0.002)が示唆された.
学位報告
feedback
Top