岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
74 巻, 4 号
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  • 横藤  壽, 藤野 靖久, 藤田 友嗣, 高橋  学, 小野寺 誠, 井上 義博
    2022 年 74 巻 4 号 p. 131-141
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル オープンアクセス
    有機リン中毒の治療に用いるアトロピンには消化管運動抑制作用があり,消化管除染を妨げることがある.当科では2001年から腸洗浄による消化管除染を優先する治療法を行ってきた.今回当院で治療した有機リン中毒患者62例を対象とし,年齢や性別,原因物質,初期症状,治療方針,呼吸管理,症状・検査所見改善までの期間,入院期間などを診療録より後方視的に比較・検討した.さらに重症例として,血清コリンエステラーゼ(以下ChE)の最低値が3 U/L以下の症例(24例)を対象とし,治療法別に回復期間の比較を行った.結果として重症例では,血清ChE 52 U/L以上(症状改善の目安)への回復期間は,胃洗浄,ヨウ化プラリドキシム,活性炭の各群で有意差がなかったが,腸洗浄治療群では有意に短縮した.気管挿管期間,入院期間に関しては全治療法で統計学的有意差は認めなかった.今回の検討で,初期治療で腸洗浄を施行した群では有症状期間が短縮する可能性が示唆された.
  • 福田 一央, 橋爪 公平, 木澤 純也, 三部  篤, 黒坂 大次郎
    2022 年 74 巻 4 号 p. 143-151
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル オープンアクセス
    一部の網膜色素上皮細胞(RPE)の遊走が網膜疾患に関連している. これらの疾患では, トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βがRPEの遊走を促進する主要な因子である. ミオカルディン関連転写因子(MRTF)-Aは gelsolinなどのタンパク質を発現し遊走にも影響する.今回, MRTF-AやgelsolinがTGF-βによるRPEの遊走促進へ関連しているか検討した. ヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE-19)をTGF-β2と, MRTF-A阻害剤CCG-203971で処理し, ARPE-19細胞の遊走をwound-healing testを用いて, Gelsolinの発現はリアルタイムPCRとwestern blotを用いて検討した. TGF-β2はARPE-19の遊走とgelsolinの発現を促進し, CCG-203971によりこの促進が抑えられた. よってTGF-β2のARPE-19細胞の遊走促進にMRTF-Aの経路が関連している可能性が示唆された.
  • 栗原 寛人, 熊谷  基, 小林 隆史, 脇本 将寛, 片桐 弘勝, 新田 浩幸, 鈴木 健二
    2022 年 74 巻 4 号 p. 153-164
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル 認証あり
    肝移植レシピエント患者において,術後人工呼吸時間に影響する因子を明らかにする目的で後ろ向きに検討した. 当施設で施行された生体肝移植術レシピエント患者46名を対象とし,術後24時間以内に人工呼吸を離脱した患者:1群 ‹n = 33›と24時間以上の人工呼吸管理を要した患者:2群 ‹n = 13›に振り分け,患者背景および周術期データについて群間比較した. 2群と比較して1群患者は年齢が低く,男性が多かった ‹p < 0.05›.術前検査データでは,血中AST濃度が2群で高かった ‹p < 0.05›.手術終了時の検査データでは,ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値が2群で高かった ‹p < 0.05›.群間比較にて有意差を認めた因子による重回帰分析では,年齢・性別・手術終了時のヘマトクリット値が術後人工呼吸時間に影響を与える因子であった ‹ p < 0.05›. 高齢・女性・手術終了時のヘマトクリット値高値は肝移植において術後人工呼吸時間を延長させる因子であることが示唆された.
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