日本看護科学会誌
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26 巻, 2 号
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原著
  • 野村 佳代, 村田 惠子
    原稿種別: 原著
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_3-2_11
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    ハイリスク治療の意思決定への子どもの参加には親が強く関与し,親の働きかけとして「治療受け入れへの促し」と「確かめ」が先行研究から確認された.そこで本研究は,治療受け入れへの親の促しの構造を探求することを目的として,造血幹細胞移植を受ける子どもの親をプロスペクティブに調査し,グランデッドセオリーアプローチを用いて分析した.
    その結果,「子どもの治療受け入れへの促し」は【親が期待する子どもの治療受け入れ】として《変化の受け入れ》《必要性の受け入れ》《主体的受け入れ》を目標と設定し,これらの目標実現に向けた【促し方】として《移植の告知》《動機づけ》《効果の提示》《子どもの情報収集の操作》《拒否への対応》《主体的受け入れへの促し》,【促しを効果的にする工夫】としての《適任者》《タイミング》の検討から成り立ち,これは,『子どもの治療受け入れに向けた促しのための親の方略』であることが明らかになった.
研究報告
  • 重松 豊美, 川西 千恵美, 池川 清子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_12-2_22
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究では子宮の手術を受けた患者の術後の排便の実態を明らかにすることを目的とした.研究デザインはメソドロジカルトライアンギュレーションとし,術前および術後3日目~9日目までの排便状況を経時的に評価すること,排便に関するその人の体験を対話によって開示することを試みた.対象者は子宮の手術を受けた16名であった.
    術後の腸管運動障害が危惧される術後3日目~4日目までだけではなく,術後7日目前後にも便が出にくくなる傾向があった.この時期を過ぎると75%の人はCAS得点が入院前と同じ状態に改善したが,25%の人は改善しなかった.術後2日目の時点で食欲が回復しなかった人は,術後5日目,6日目に下剤を服用せずに便が出た人の割合が低かった.このことから,術後2日目の時点で食欲が回復しない場合には自然排便を促すための積極的なケアが必要であることが示唆された.
  • 稲田 久美子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_23-2_30
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    昨今,医療現場では組織変革を迫られるなか,組織文化がその鍵であると言われているが,その概念は,まだ十分明確にされているとは言い難い.そこで,今回,「看護組織における組織文化」の概念を明らかにすることを目的に研究を行った.
    概念分析の方法は,Hybrid Model法を用いた.最初に人類学・経営学・看護学の文献検討を行い,次に2総合病院で6カ月間のフィールド調査を行い,最後にそれらを総合した分析を行った.
    その結果,組織文化は,「人工物-価値・規範-基本的仮定」のレベルをもっており,その本質は「基本的仮定」であることが明らかになった.そして,看護組織における組織文化は,「集団の基本的仮定」,「仕事の基本的仮定」,「看護師の基本的仮定」の3つの領域から成り立ち,それらは相互に重なり合っていた.
  • 小村 三千代
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_31-2_38
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,進行性筋ジストロフィー症(以下,筋ジストロフィー症)の子どもの意思や欲求に,看護師がどのように気づき関わっているかを明らかにすることである.研究方法はLeiningerの民族看護学を用いた.研究参加者は,主要情報提供者が看護師8名,一般情報提供者が筋ジストロフィー症の子ども4名を含む,看護師や家族,養護学校教員や医師等16名だった.
    分析結果から,5つのテーマと1つの大テーマが抽出された.
    大テーマ:看護師は,だんだん動けなくなっていく子どもの苛立ちに気づくと辛くなるが,子どものサインに気づき関わろうとしている.
    筋ジストロフィー症の子どもに関わるに看護師とって,子どものまなざしやかすかな声,苛立ちに気づいたとき,子どもに近づいて声をかけ確かめることの重要性が示唆された.
  • 足立 久子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_39-2_47
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    外来に通院中の糖尿病患者85名にTime Trade-Off法を施行し,糖尿病患者を健康状態の評価により高・中・低評価群の3群に分け,この3群間にSF-36によるHealth-Realted Quality of Life(HRQOL)の評価に相違があるのか,さらに無病気群84名と比較検討した.その結果,1)日常生活役割機能(身体)と体の痛みを除く6尺度の平均得点は,糖尿病患者の高評価群よりも低評価群に有意に低かった(p<.05).2)全体的健康感の平均得点は,無病気群よりも糖尿病患者の高評価群に有意に低かった(p<.01)が,活力と日常生活役割機能(精神)の平均得点は,有意に高かった(p<.05).3)体の痛みを除く7尺度の平均得点は,無病気群よりも糖尿病患者の低評価群に有意に低かった(p<.05).これらの結果は,糖尿病患者の低評価群に身体的・精神的な援助の必要性を示唆した.しかし,糖尿病患者の高評価群の活力と日常生活役割機能(精神)の平均得点が,なぜ無病気群よりも高くなったのか,検討しなければならない課題とされた.
  • シェリフ多田野 亮子, 大田 明英
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_48-2_57
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の「ストレスの認知」に影響する要因を明らかにすることを目的とした.透析歴1~5年の196名の外来血液透析患者を対象に,種々の要因について面接式のアンケート調査を行い,ステップワイズ重回帰分析にて検討した.
    血液透析患者は,「水分の制限」,「治療時間の長さ」,「身体的活動の制限」などに特にストレスを感じていた.「ストレスの認知」には,「精神健康状態」(β=0.591),「家族からの支援」(β=−0.168),「悪性腫瘍」(β=−0.165),「スタッフに対する満足度」(β=−0.163),「導入時の家族への説明」(β=−0.126)が影響しており,これらの変数で分散の40.5%が説明された.
    血液透析患者のストレスの認知を軽減するためには,医療提供者は患者の精神健康状態を把握しその改善に努めること,患者が家族から支援を受けやすくなるよう援助すること,悪性腫瘍の早期発見に努めること,透析時を快適に過ごせるように援助を行い,医師や看護師は患者とできるだけ話すように努め患者との関わりを十分にもつこと,導入時に患者の家族が十分納得するように必要な医療情報を与えることが重要ではないかと思われた.
  • 松本 麻里, 土居 洋子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_58-2_66
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,重症慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,以下COPD)患者の希望を脅かす要素を抽出,記述することを目的とした.10名の研究参加者に対し,半構造化面接を実施し,得られたデータを質的帰納的に分析した.その結果,重症COPD患者の希望を脅かす要素として,《七転八倒の息苦しさの持続》,《衰え・悪化を知る兆しや証拠》,《活動を妨げる感覚》,《個人としての価値や人格を無視した周囲の対応》の4つのカテゴリーが抽出された.COPD患者が絶望に苛まれることのないよう,このような体験にともなう重症COPD患者の苦痛や苦悩に関心を向け,寄り添う看護師の態度は重要である.看護師は希望を脅かす要素の可能な限りの除去や最小化,あるいは適切な対処へと導くこと,また,それが困難な場合に生じた苦痛や苦悩の緩和をはかることにより,重症COPD患者が絶望を回避,希望を維持できるよう助ける必要がある.
  • ─学生の臨地実習の体験のふりかえりから─
    加悦 美恵, 飯野 矢住代, 河合 千恵子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_67-2_75
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    研究目的は,基礎看護学におけるSP参加型の授業と臨地実習のつながりを明らかにすることである.A看護大学の2年生で研究協力の得られた5名を対象に,質的帰納的研究方法を用いて実習前から終了時までの行動やその時々の気持ちなどを自由に話してもらい逐語録し,カテゴリー化と構造化をはかった.その結果,抽出されたカテゴリーは【SPの参加によって真に迫る臨地実習の体験をした】,【臨地実習前に知りえた情報から患者像を意識に浮かべた】,【SP参加型の学修から患者との出会いの場面における自分の姿を思い描いた】,【SP参加型の学修から想い描いた出会いを実践し,患者に受け入れられた手ごたえを感じた】,【自分なりに患者のことを想い,手さぐりでケア(援助)を実施した】,【実施,失敗,修正を繰り返しながら患者に見合ったケア(援助)を見出した】,【臨地実習を通して真の患者像に迫れた】の7つで,時間的経過と学習内容によって構造化された.学生は,はじめての臨地実習において早期から患者との関係を築くことができ,SP参加型の学修がいかされていた.
  • ─緩和ケア病棟に勤務する看護師の全体・年代別分析─
    和田 由紀子, 佐々木 祐子
    原稿種別: 研究報告
    2006 年 26 巻 2 号 p. 2_76-2_86
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    自己表出行動の操作や対人態度の傾向が,バーンアウトとどのように関係しているのかを明らかにすることを目的に,全国の緩和ケア病棟に勤務する看護師を対象に郵送による質問紙調査を行った.質問紙には日本語版バーンアウト尺度,セルフ・モニタリング尺度,他者意識尺度,情動的共感性尺度,内的作業モデル尺度の5つの尺度を使用した.
    対象全体では,バーンアウト得点が高いとより不安定な対人関係を示し,他者への意識がその人の外面に向きやすく感情的な影響も受けやすいこと,年齢・看護師経験が低く同居をしていない割合が高いことが示された.20歳代・30歳代・40歳代の年代別分析では,年代が異なってもバーンアウト得点の高いほうが社交性が乏しく,内的作業モデルの表象は安定したものではなく,共感時には暖かい反応が乏しくより冷淡であるという示唆が得られた.しかしバーンアウトに陥っている群の中では,バーンアウトの程度ではなく年代によって自己表出行動の操作や対人態度の傾向がそれぞれ異なっており,他の年代と比べて特に20歳代に違いがみられた.
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