日本看護科学会誌
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27 巻, 4 号
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原著
  • ──第2報:看護介入の影響と介入プログラムの提唱
    小野 智美
    原稿種別: 原著
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_3-4_13
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    第2報における研究目的は,第1報で試作し施行した看護介入が日帰り手術に向けての幼児の自律性と親の自己効力感に与える影響と,看護介入を通して親と看護師が協働することについて,第1報で抽出された【親子の相互主体】の4つのありようごとに記述し,それらを基に看護介入の内容や方法を再検討して看護介入プログラムを提唱することである.その結果,看護介入は日帰り手術に向けての幼児の自律性と,医療体験に向けての幼児の自律性に関する親の自己効力感に肯定的な影響を与えることが記述された.日帰り手術に向けての幼児の自律性を支援するために親と看護師が協働することとは,親と看護師がお互いに医療体験に取り組む幼児との間に形づくる関係性や支援のあり方に働きかけ合いながら,その後の活動に活かしていくことであると捉えられた.日帰り手術に向けての幼児の自律性を親と協働して支援する看護介入プログラムは,手術前に看護師が親に子どもの支援法を提案し,親が手術に向けて子どもに実施した支援を手術後に看護師と共有するという内容によって提唱された.
  • ──社会関連性と生活習慣に焦点を当てて
    篠原 亮次, 杉澤 悠圭, 安梅 勅江
    原稿種別: 原著
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_14-4_22
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,地域に在住する高齢者の社会関連性および生活習慣と3年後の要介護状態との関連を明らかにすることを目的とした.
    方法:対象は大都市近郊農村の65歳以上の在宅居住者であり,戸別訪問による配票留置の記名自記式質問紙を用いた.有効回答は,調査両年(2002年,2005年)に回答し,かつ両年の要介護状態不明者を除く,601名であった.調査内容は,年齢,性別,要介護状態,罹患,ADL,社会関連性指標,生活習慣であった.
    結果:1)社会関連性指標項目では「期待役割の遂行」「興味対象あり」「生活の工夫」「積極的に取り組む」「社会貢献の可能性」が,また生活習慣項目では「栄養バランスの配慮」「運動の実施」が,いずれも乏しい場合,3年後の要介護状態と有意に関連していた.2)年齢,性別,要介護状態(基準年),罹患,ADLを調整変数として投入した多重ロジスティック回帰分析では,社会関連性指標項目のうち「期待役割の遂行」と「社会貢献の可能性」が,3年後の要介護状態と有意な関連を示した.
    結論:地域在住高齢者の日常生活における社会との関わりの促進が心身機能の維持増進につながる根拠を踏まえ,今後の介護予防マネジメント等への活用が期待される.
  • ――オストメイトを対象に
    小野 美穂, 高山 智子, 草野 恵美子, 川田 智恵子
    原稿種別: 原著
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_23-4_32
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,病者のピア・サポートの実態を明らかにし,病者のピア・サポートと精神的健康との関連を実証することを目的とした.中四国のオストミー協会7支部会員計862人に,アンケート調査を行い,回答の得られた499部(回収率57.9%)を分析対象とした.
    病者のピア・サポートは,「サポート提供」,「情緒的サポート受容」,「情報的サポート受容」の3因子で構成され,具体的なピア・サポートは,病者の‘同病者を支える役割意識’,‘闘病への励み’,‘客観的な病状認識’,‘共感’に関するものが多く,同病者と病の体験を共有することの重要性が示唆された.
    病者のピア・サポートと精神的健康との関連に関しては,ピアからのサポートを多く受けている者のほうが,より抑うつが軽減され,現状満足感,存在価値,意欲を感じていることが明らかとなり,病者の精神的健康に良い影響を与えることが実証された.
  • 細田 泰子
    原稿種別: 原著
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_33-4_41
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,看護学士課程の学生のメタ認知的な臨床学習環境に影響を及ぼす教育インフラストラクチャーを明らかにすることである.
    方法:看護学士課程の4年次生205名を対象に,構造方程式モデリングを用いて教育インフラストラクチャーと臨床学習環境との因果関係を分析した.臨床学習環境の測定にはClinical Learning Environment Diagnostic Inventory(CLEDI)を用いた.この測定尺度は,臨床学習環境の感覚的,知覚的,象徴的,行動的,反省的側面を測定する.
    結果:教育インフラストラクチャーから臨床学習環境への標準化係数は0.97で,教育インフラストラクチャーの観測変数のうち「大学と臨床の連携」が最も強い影響を示していた.教育インフラストラクチャーは「感覚的臨床学習環境」に強い影響をもち,他の下位尺度には中程度の関連性があることを認めた.
    結論:以上の結果から,大学と臨床の連携システムを整備することが学生の臨床学習環境の質の保証に結びつくことや,感覚的臨床学習環境への影響を考慮する必要性のあることが示唆された.
研究報告
  • 小出 恵子, 猫田 泰敏
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_42-4_53
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,3か月児および3歳児健診の面接場面において,保健師が継続的な支援が必要な事例かどうかを判断する際のアセスメント項目群の構成因子について検討することを目的とした.調査方法は横断的調査であり,政令指定都市2市のすべての保健所・保健福祉センターに勤務する常勤保健師293人を対象に,各アセスメント項目(3か月児健診では58項目,3歳児健診では65項目)の重視度を尋ねる自記式調査票を郵送した.アセスメント項目群の構成因子を分析するために探索的因子分析(主因子法,斜交回転)を行った結果,3か月児健診では,第1因子「家族の背景」,第2因子「家族のサポート力」,第3因子「対人関係のあり方」,第4因子「母親の体調」,第5因子「子どもへの接し方」,第6因子「子どもの気性」,第7因子「育児への対処」,第8因子「子どもの発育・発達」の8因子が抽出された.3歳児健診においても,第1因子「家族の背景」,第2因子「対人関係のあり方」,第3因子「家族のサポート力」,第4因子「子どもの生活状況」,第5因子「子どもの発達」,第6因子「育児への対処」,第7因子「子どもへの接し方」,第8因子「子どもの発育」の8因子が抽出され,3か月児健診と共通の内容と解釈される構成因子が5因子みられた.また,各因子と属性との関連を分析した結果,3か月児健診では第1因子「家族の背景」と地域性・教育背景に,第2因子「家族のサポート力」と地域性に関連がみられた.3歳児健診では,第3因子「家族のサポート力」,第7因子「子どもへの接し方」と地域性に,第5因子「子どもの発達」,第8因子「子どもの発育」と経験年数に関連がみられた.
  • 佐田 律子, 泉 キヨ子, 平松 知子
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_54-4_62
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,転倒により大腿骨頚部骨折を受傷し,観血的治療を受けて自宅退院した高齢者の日常生活における再転倒に対する対処行動について明らかにすることを目的とした.
    方法:エスノグラフィーを用いた.データは,病院から自宅退院して3カ月から1年程度経過している65歳以上の高齢者18名を対象に,半構成的面接と参加観察より収集した.
    結果:再転倒に対する対処行動として6つのカテゴリーが見出された.【今度転んだら寝たきりだ】は,再転倒に対する対処行動の根底にあるのもとして位置付けられ,他の対処行動に作用していた.また,転倒原因に対する対処行動である【ふらつく身体を安定させる】と【転びやすいところは避ける】,日常生活活動における対処行動である【自信のない行動はしない】と【自分なりに転倒しない工夫をする】が見出された.【周りの支えを求める】は,これら4つの対処行動に作用していた.
    結論:以上より,再転倒予防に取り組む彼らの積極的な姿勢は,転倒予防や介護予防に活かしていくことができると考える.
  • 川添 郁夫
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_63-4_71
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    統合失調症を発症した子どもをもつ母親9名への対処過程に関して半構造化的インタビューを実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)に準拠して分析した.その結果,母親は子どもの異常行動に対して緊張感を維持しながらケアを継続していた.ケアを継続できた要因は,仲間との出会い,仲間との共感,仲間に支持されたことの自信であった.母親にとって,子どもの統合失調症発症を受容することは困難を伴うことであり,回復の兆しに治癒を期待し,症状が再燃するたびに落ち込みを体験していた.受容は,母親のケアに対する積極的意思への変化により深まる傾向がみられた.また,母親は統合失調症に関して混乱と恐怖を強く記憶に留めていた.母親がもつ恐怖体験に対して,早期に心理的ケア行うなど,支援が必要であると示唆された.
その他
  • ――解釈学的現象学アプローチを用いた探求
    和泉 成子
    原稿種別: その他
    2007 年 27 巻 4 号 p. 4_72-4_80
    発行日: 2007/12/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    目的:日本のターミナルケアの中に内在する臨床に即した看護の倫理的価値観を帰納的に抽出・記述することを目的に本研究を行った.
    方法:ターミナルケアの経験を有する看護師32名を対象に非構成インタビューを行い,Bennerらによる解釈学的現象学の手法を用いてその逐語録の分析を行った.
    結果:ターミナルケアにおける看護師の倫理的価値観は,それぞれの場面で看護師が大事にしているあるいは気にかけている「関心」として表された.抽出された倫理的関心は,①患者を傷つけない,②誠実,③隔絶・孤独の解消,④その人らしさを尊重する,⑤患者の希望を尊重する,⑥安楽,苦痛からの解放,⑦患者が有意義なあるいはよい時間を過ごすの7つであった.
    結論:これらの倫理的関心は日本の看護に内在する倫理的価値であり,生命倫理における倫理原則と共通する部分もあるが,文化的意味や動機づけなど異なる部分もあった.
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