日本看護科学会誌
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29 巻, 1 号
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原著
  • 小児病棟におけるエスノグラフィーから
    川名 るり
    原稿種別: 原著
    2009 年 29 巻 1 号 p. 1_3-1_14
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    本稿は小児病棟の看護における熟練した技術とはどのようなものかを明らかにし,報告することを目的としている.研究は長期参与観察とインタビューによるエスノグラフィーで行った.フィールドワークの全過程は1年7ヵ月であった.結果,その技術は,6つの特徴,『相互に交流し合う身体感覚を用いる』『状況に埋め込まれている』『タイミングが合う』『言語化することが難しい』『実践の中で洗練される』『向心性がある』をもっていた.また,単なるやり方ではなく,子どもに合わせてどのように自分の身体と技術を生かせばよいかを知ることによって生まれる実践に内在する“行為”であり,現場でのみ学ぶことが可能な知識であることがわかった.そして,3つのスキル,『身体の動きと感覚』『タイミング』『判断』で構成されており,これらによって子どもと看護師との状況の変化がおこり,生み出されている行為であった.
  • 深堀 敦子, 鈴木 みずえ, グライナー 智恵子, 磯和 勅子
    原稿種別: 原著
    2009 年 29 巻 1 号 p. 1_15-1_24
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    【目的】 地域で生活する健常高齢者の介護予防行動に影響を及ぼす要因とその関係を明らかにした.
    【方法】 改訂Health Promotion Modelの枠組みに基づき,健常高齢者148名を対象に質問紙調査を実施した.因子分析により得点化した介護予防行動(17項目,α=0.83)に影響を及ぼす要因のパスモデルを作成した.
    【結果】 対象者の平均年齢は70.86±6.36歳だった.パスモデル(χ2=26.57, p=.28, AGFI=.93, RMSEA=.03)から,介護予防行動に直接的に影響していたのは自己効力感(β=.60, p<.001)と実行負担の知覚(β=−.14, p<.05)であり,間接的に影響していたのは,介護予防の知識,年齢,主観的幸福感,通院や処方薬の服用,主観的幸福感,Health Locus of Control,在宅介護の経験であった.
    【結論】 健常高齢者が主体的に介護予防行動を実行するためには,自己効力感を高め,実行負担の知覚を軽減させる支援が必要だと考えられた.
研究報告
  • 田内 香織, 神里 みどり
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 29 巻 1 号 p. 1_25-1_31
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    【目的】 本研究は終末期がん患者のケアに携わる看護師のスピリチュアリティとスピリチュアルケアの関連性を明らかにすることを目的として実施した.
    【方法】 看護師295名を対象として,無記名自記式質問紙調査を行った.質問紙の主な内容はスピリチュアリティ評定尺度とスピリチュアルケア測定尺度,基本的属性で構成した.
    【結果】 基本的属性は,平均年齢30.6±8.1歳,経験年数8.3±6.7年であった.特定の信仰を有する者は8.3%(仏教2.6%,キリスト教2.2%など)であった.最終的にスピリチュアリティとスピリチュアルケアとの因果関係モデルが示された.スピリチュアリティやスピリチュアルケアについて学ぶこと,臨床経験を積むことによって看護師自身の自己に対する意味感や価値観が高まる.この意味感や価値観は看護師のスピリチュアリティを高め,スピリチュアルケアの実践につながっていた.
    【結論】 スピリチュアルケアに最も強い影響を与えていた要因はスピリチュアリティであり,スピリチュアリティの高い看護師はスピリチュアルケアをより積極的に行っていることが示された.終末期がん患者のケアに携わりながらもスピリチュアリティやスピリチュアルケアを学び続けることによって看護師が自分自身のスピリチュアリティを意識し,スピリチュアルケアをより積極的に実践できるようになると考えられる.
  • 鈴木 真知子
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 29 巻 1 号 p. 1_32-1_40
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    小児在宅療養の推進が求められている中,医療的なケアを必要とする重度障害児の増加に伴い,特別支援学校では,平成16年に看護師配置が認められたが,学校をケア付き託児所と間違うような認識があり,教育環境の質向上にはつながっていないという声も聞かれる.そこで,本研究の目的は,学校看護師の専門的役割の明確化に向けて,保護者の子育てに対する考えを表す子育て観がどのようであるかを質的に探求することである.就学中の医療的なケアを必要とする児の保護者29名に半構成的面接を実施し,得られたデータを質的帰納的に分析した.その結果,学校看護師が配置され,学校に子どもを単独で通学させることが可能となった現状から,医療的なケアを必要とする子どもの子育てについて,保護者は,【子どもの特性による対応の難しさ】がある子どもに対して,【安心して預けられる場所がない】中で,【自由度の少ない生活】を送りながら世話をしている,という思いをより鮮明に浮かび上がらせることとなっていた.そのような状況への認識を基盤とし,保護者は①子どもに向かう姿勢,②子育てへの意識,という2つの局面からなる子育て観を構成していた.さらにそこでは,【子ども主体】,【この子のことは親の責任という自覚】と【子どもではなく自分が主体】,【放任】の「子どもとともに成長」と「子どもを切り離す」という〈両極端〉な保護者の子育て観として特徴づけられた,二極化した保護者の認識が明らかになった.それらより,学校看護師は,保護者の参加を前提とし,学校が「子育て」と同時に親の意識改革など「親育て」の「場」となり,教員とよきパートナーシップを築きながら子どもの教育効果が高められるように,子どもと保護者の両者を支援することが必要であると推察された.
  • 清水 嘉子, 関水 しのぶ, 遠藤 俊子, 廣瀬 昭夫, 宮澤 美知留, 赤羽 洋子, 松原 美和
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 29 巻 1 号 p. 1_41-1_50
    発行日: 2009/03/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,母親の育児幸福感を高めるための,2時間程度の少人数参加型プログラムを開発し評価することである.
    方法:プレテスト後,プログラムを7人1グループに2回実施した.プログラムに参加した14名に対しプログラムの前と後および1週間後の心理学的指標による気分や幸福実感,育児幸福感や育児ストレス,生理学的指標によりリラックスやストレスの評価をした.
    結果:心理学的な気分の変化では,“不安感”“緊張と興奮”が低下していた.育児ストレスは,“子どもの発達に対する懸念”が低下し,“夫の育児サポート不十分”が上昇していた.育児幸福感では,“子どもからの感謝と癒し”が上昇していた.生理学的には,心拍数の低下,HFの上昇が認められた.脳波では,θ波,β波が低下し,α波の中でも特にα3波が上昇しリラックスの効果が認められた.また,母親自身の視野の広がりや安心感,託児による母親の心のゆとりが生じ,子どもとの関係の見直しにより子どもへの愛着や成長を実感していた.
    結論:今後は継続的なコースによるプログラムの展開と,その後の縦断的な育児幸福感の変化の評価が課題である.
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