Ⅲ. 外傷・外傷合併症
Ⅳ. スポーツ障害
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横川 敬, 林 育太, 永島 英樹
2023 年30 巻2 号 p.
218-221
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【はじめに】投球側の肘関節痛を主訴に受診し,上腕骨遠位骨幹部疲労骨折と診断した3例を経験したので報告する.
【症例】高校硬式野球部の1年生1例,2年生2例.全例とも同年4月~5月にかけて投球時に肘関節痛が出現し,6月に外来受診となった.全例初診時に左右差5°の肘関節伸展制限と,上腕骨遠位骨幹部の全周性に圧痛を認めた.単純X線では明らかな異常はなく,MRI STIR像で上腕骨遠位骨幹部の骨髄内に高輝度変化を認めた.投球動作の繰り返しによる疲労骨折と診断し,約2か月間投球を禁止し,その間に柔軟性の改善と体幹筋力強化を行い,全例競技復帰できた.
【考察】上腕骨遠位骨幹部疲労骨折の早期診断には,肘関節伸展制限と上腕骨遠位の全周性の圧痛,MRI STIR像の骨髄内輝度変化が有用な所見と考える.4~5月は疲労骨折の好発時期であり,肘関節痛を訴える野球選手では同骨折も鑑別に挙げるべきであると考える.
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石原 健嗣, 島村 安則, 中道 亮, 斎藤 太一, 尾崎 敏文
2023 年30 巻2 号 p.
222-228
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
背景:Panner病は骨端線閉鎖前の小児で上腕骨外側顆骨端核の無腐性壊死を呈する疾患である.Panner病の7例8肘について検討を行った.
方法:症例は全例男子で平均9.8歳,全例で野球やテニスなどのスポーツ歴を有していた.初療では全例で患肢の安静,外固定による保存的加療を行った.
結果:外固定期間は平均4.5か月でスポーツへの完全復帰は平均10.7か月で可能だった.治療開始後5肘で病変の進行がみられ,修復には平均17か月を要していた.わずかな不整像の残存や小頭の扁平化を3肘に認めたが,可動域制限や疼痛の残存を認めなかった.初診時にOCDと診断された4肘は外側顆の外側優位に病変が存在していた.
結論:Panner病は似通った臨床所見を呈するOCDとの鑑別を要する.特に病変が外側優位に存在する症例ではOCDとの判別が難しく,単純X線画像の詳細な評価や病変の経過に着目することが重要である.
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磯崎 雄一, 古屋 貫治, 八木 敏雄, 志賀 研人, 堀家 陽一, 月橋 一創, 岡田 浩希, 松久 孝行, 筒井 廣明, 西中 直也
2023 年30 巻2 号 p.
229-233
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【はじめに】Panner病は上腕骨小頭(以下小頭)の無腐性壊死で離断性骨軟骨炎(以下OCD)との鑑別を要する.Panner病を2例経験したので文献的な考察を加えて報告する.
【症例1】9歳男児.野球肘検診で右肘OCDを指摘され受診.症状はなく,年齢,画像よりPanner病と診断.肘に負担のかかる行為を禁止し,約5か月で修復傾向を認めたため投球を再開.最終観察時,症状はなく修復は良好である.
【症例2】7歳男児.空手の突き後に左肘痛が出現し受診.年齢,画像よりPanner病を念頭に安静加療を開始し,経過よりPanner病と診断した.約6か月で修復傾向を認め,最終観察時は症状もなく,修復は良好である.
【考察】Panner病はOCDより発症年齢が低い.病変は小頭の一部から全体に拡大し,小頭全体が変形する.小児の肘疾患を診察する際はPanner病も念頭に置く必要がある.
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志賀 亘祐, 吉澤 秀, 眞宅 崇徳, 石井 秀明, 阪元 美里, 前田 隆浩, 武者 芳朗, 池上 博泰
2023 年30 巻2 号 p.
234-237
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【目的】経時的にMRIを施行し,固定期間や運動開始時期を検討したことで骨端核修復を得たPanner病の症例を経験したので報告する.
【症例】8歳,男児.1か月以上続く右肘痛,可動域制限を認め受診した.単純X線画像とMRIからPanner病と診断し,シーネ固定を開始した.初診時と外固定後2か月でMRIを撮像し,固定期間を決定.徐々に症状,画像所見ともに改善を認め,完全修復を認めた15か月から荷重のかかる運動を再開し,症状の増悪なく経過した.
【結語】比較的稀なPanner病の一例を経験した.Panner病において,MRIは固定期間や運動開始時期の検討の一助となりうる.
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上原 大志, 儀間 朝太, 田中 光, 堀切 健士
2023 年30 巻2 号 p.
238-242
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
外側壁を含まない進行期OCDに対して鏡視下病巣掻爬ドリリングを行った21例を対象とした.スポーツ種目は野球19例,ハンドボール2例であった.鏡視所見によるICRSOCD分類はstage IIが7肘,IIIが6肘,IVが8肘であった.手術は遊離体の摘出や病巣掻爬に加え,経皮的にドリリングを行った.肘機能スコアの平均は術前52.6点が術後96点と有意に改善し,全例もとのスポーツに平均2.9か月で復帰した.術後単純X線では掻爬した母床部の平坦化を8例,陥凹を6例に認め,修復は7例のみであったが,MRIでは17例で掻爬部に軟骨様組織の被覆によるリモデリングが認められた.外側壁を含まないOCDに対する病巣掻爬ドリリングは,全例除痛が得られ,早期スポーツ復帰に有用であった.術後MRIの多くは掻爬した母床部に軟骨様組織によるリモデリングが認められ,短期では明らかな関節症性変化を生じる症例はなかった.
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井上 美帆, 荻本 晋作, 峯 博子, 鶴田 敏幸
2023 年30 巻2 号 p.
243-250
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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外側壁を含む広範型上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)は時にその治療に難渋する.著者らは膝又は腸骨より骨皮質を含む骨軟骨片を移植し外側壁を再建する方法を行っており,その中期成績を報告する.対象は16例16肘.全員男性で競技は全て野球.平均年齢13.9歳.手術は,病巣部の関節軟骨面が不連続である再建群と連続性を有する温存群に分類し,再建群には大腿骨外側顆から骨皮質を含む骨軟骨片を移植し,温存群は関節軟骨は温存し外側壁を開窓し病巣部の軟骨下骨を掻爬し,腸骨から海綿骨を移植し腸骨壁により外側壁を再建した.再建群は11例,温存群は5例で全例骨癒合は良好で関節症の進行はなかった.肘関節可動域,運動時VAS,JOA-JES scoreは術後統計的に有意に改善し全例競技復帰した.骨皮質を含む移植骨を用い外側壁を再建する本手術の中期成績は良好で,外側壁を含む広範型OCDに対する有効な治療法の一つとなり得る.
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三田地 亮, 高原 政利, 佐藤 力, 宇野 智洋
2023 年30 巻2 号 p.
251-255
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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【目的】肘離断性骨軟骨炎に対して骨軟骨柱移植術(OATS)を行った術後1年以上の主観的評価を調査すること.
【対象と方法】対象は64例であった.主観的評価としてHand20,PREE,DASHスポーツ,DASHスポーツの項目を投球に置き換えたDASHスローイング,KJOC score,野球疼痛スコア,および投球に関する6項目の自己評価(投球スコア)をパーセント表示(0:最良,100:最悪)に変換し,術前後で比較した.
【結果】経過観察期間は平均38か月であった.術前後の平均はHand20:13%から1%,PREE:26%から2%,DASHスポーツ:55%から3%,DASHスローイング:59%から2%,KJOC score:42%から9%,野球疼痛スコア:48%から4%,および投球スコア:53%から6%であり,いずれも術後で有意に良好となった.
【考察】全ての主観的評価が有意に改善した.
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川島 至, 岩堀 裕介
2023 年30 巻2 号 p.
256-261
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【目的】野球選手の橈骨頭離断性骨軟骨炎(橈骨頭OCD)の3例を経験したので報告する.
【症例1】19歳男性,大学2年,硬式野球の投手.投球時の右肘外側部痛を主訴に当科を受診した.橈骨頭OCD分離後期の所見を認め,関節鏡下骨軟骨片切除及びドリリングを施行し,野球に完全復帰した.
【症例2】17歳男性,高校2年硬式野球の三塁手.投球時の右肘外側部痛を主訴に遊離期の橈骨頭OCDを認め,関節鏡下遊離体摘出及びドリリングを施行し,野球に完全復帰した.
【症例3】12歳男性,小学5年,軟式野球の捕手.投球時の右肘外側部痛を主訴に受診した.橈骨頭OCD分離期の所見を認め,スポーツ活動の休止,集束型体外衝撃波による治療で改善なく外固定を1ヶ月実施したところ,分離部の癒合を認め野球に完全復帰可能した.
【考察】2例は病期が進行しており鏡視下手術を行い経過良好であった.1例は骨端線閉鎖前で外固定を含む保存療法を行い改善した.
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渋谷 眞大, 原田 幹生, 宇野 智洋, 丸山 真博, 佐竹 寛史, 高原 政利, 髙木 理彰
2023 年30 巻2 号 p.
262-266
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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今回,男子ジュニアテニス選手において,テニス検診で検出された離断性骨軟骨炎(OCD)に対し,ギプス固定による保存療法を行い,早期に画像が治癒し,テニス復帰した1例を経験したので報告する.症例は13歳の男子ジュニアテニス選手である. 超音波を用いたテニス検診でOCDが検出され,当科を初診した.X線,CT,およびMRI検査にて無症候性の安定型OCDと診断した.右肘痛がないことと本人の希望のため,テニスを継続した.検診後4か月からテニスを休止し,ギプス固定を5週間行った.その後,サーブなどのテニスを徐々に再開したが,日常生活ではスプリント固定を3か月行った.スプリント後3か月の単純X線像で,OCDはほぼ治癒していたため,完全復帰を許可した.検診後1年7か月で,右肘痛なく,パフォーマンスも良好であった.本症例の結果から,無症候性の安定型OCDにはギプスによる保存治療が有効である可能性がある.
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古屋 貫治, 竹口 英人, 磯崎 雄一, 堀家 陽一, 八木 敏雄, 田村 将希, 阿蘇 卓也, 尾﨑 尚代, 西中 直也
2023 年30 巻2 号 p.
267-271
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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【緒言】上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)に対する治療は術前画像評価と術中のICRS分類によって決定するが,ICRS分類では骨軟骨片の組織強度は考慮にない.今回,CT西中分類と術中empty signを基に骨軟骨片の温存が可能と判断した1例について報告する.
【症例】15歳男児,左肘痛.半年前から左肘痛を認め,単純X線岩瀬分類で遊離期巣内型,CT西中分類でstage3aのため手術の方針とした.術中所見ではICRS分類OCDⅢだったが,empty signは陰性であった.骨軟骨片の温存が可能と判断し,吸収ピンで骨軟骨片を固定した.3週間の外固定を行い,術後3カ月から投球動作を開始した.部活内のトラブルで野球からは離れたが,術後1年9カ月で良好な骨癒合が得られた.
【考察】CT西中分類で軟骨下骨の連続性が残存し,術中のempty signが陰性であれば,組織の温存が可能と考えられる.
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岩堀 裕介, 伊藤 岳史, 川島 至
2023 年30 巻2 号 p.
272-277
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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野球選手の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(小頭OCD)に対する保存療法の治療成績を後ろ向きに調査し,集束型衝撃波療法(FSW)の有無で比較した.対象は骨端線閉鎖前の小頭OCD早期例41例41肘,年齢は平均11.8歳で,FSW照射群(F群)16肘と非照射群(C群)25肘の2群に分けた.投球再開は単純X線像上の外側壁の十分な再構築を確認できたら許可した.FSWの出力は最大平均0.24 mJ/mm
2,照射回数は平均8.4回,照射期間は5.9ヶ月であった.背景因子は全てにおいて2群間で有意差はなかった.最終的修復状態は,良好の比率がF群75%,C群56%とF群で高かったが有意差はなかった.手術率はF群25%,C群36%だったが有意差はなかった.手術例を除く投球再開時期,競技復帰時期はF群が有意に早かった.FSWは小頭OCDの治癒を促進して投球再開時期を早める可能性が示された.
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阿蘇 卓也, 田村 将希, 古屋 貫治, 磯崎 雄一, 西中 直也
2023 年30 巻2 号 p.
278-282
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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目的:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)症例,内側型投球障害肘(内側型)症例および健常野球選手の胸郭運動,肩甲骨上方回旋運動,鎖骨挙上運動を比較し,OCD症例の身体機能の特徴を検討することである.
方法:対象はOCD群6名,内側型群11名,健常野球選手10名(コントロール群)とした.上肢下垂位と最大外転位での単純X線両肩正面像から上位胸郭運動量,肩甲骨上方回旋運動量,鎖骨挙上運動量を算出し,3群間で比較した.
結果:OCD群と内側型群の上位胸郭運動量はコントロール群より低値であった.OCD群の肩甲骨上方回旋運動量は内側型群とコントロール群より低値であった.
考察:OCD症例は上位胸郭運動量低下と肩甲骨上方回旋運動量低下を有している可能性があった.
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川鍋 慧人, 古島 弘三, 貝沼 雄太, 佐久間 健太郎, 綿貫 大佑, 鈴木 雅人, 吾妻 大河, 船越 忠直, 高橋 啓, 堀内 行雄, ...
2023 年30 巻2 号 p.
283-288
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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【目的】UCL近位部は高密度の血液供給がある.PRP療法前後でのUCL近位部の血流速度が変化する可能性がある.UCL実質内の血流速度の経時的変化と靭帯修復,競技復帰の関連を調査した.
【方法】対象はPRP療法を施行した野球選手20名20肘とし,靭帯内のPSVをPRP前,施行後1,3,6週に評価した.また,靭帯修復有無と復帰有無を調査し,PSVを比較した.
【結果】PSVは施行前4.1 ± 5.0cm/s,1週10.9 ± 4.7cm/s,3週9.4 ± 3.8cm/s,6週7.0 ± 5.8cm/sであり,施行前と比較し施行後1週と3週で有意に血流速度の増加を認めた.また,靭帯修復有無,復帰有無の比較では,ともに3週時点でのPSVが靭帯修復無群,復帰不可群と比較し有意に増加していた.
【考察】PRP療法により靭帯内のPSVが増加することが分かった.3週時点での血流速度が靭帯修復や復帰に関連している可能性がある.
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吾妻 大河, 古島 弘三, 貝沼 雄太, 川鍋 慧人, 佐久間 健太郎, 高橋 啓, 船越 忠直, 堀内 行雄, 伊藤 惠康
2023 年30 巻2 号 p.
289-292
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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目的:尺側側副靱帯前斜走線維(AOL)直上の浅指屈筋機能を超音波画像診断装置で評価し,その有用性について検討すること.
方法:対象は肘関節に愁訴が無い野球経験5年以上の成人男性7名14肘(24 ± 1.5歳)とした. 超音波画像診断装置を用いてPIP関節屈曲時におけるAOL直上の長軸および短軸の筋厚を測定した.その後,安静時筋厚を基準とした筋厚増加率を算出し比較検討した.
結果:筋厚増加率はII指,V指では長軸と短軸ともにIII指,IV指より有意に高値であった(P < 0.05).またII-V指,II-III指の複合運動では長軸と短軸ともにIII-IV指,III-IV指で有意に高値であった(P <0.05).
結論:II指,V指のPIP関節屈曲時の筋厚増加率は,III指,IV指の筋厚増加率と比較して有意に高値を示した.AOL直上の筋厚測定はFDS機能の動的評価の有用性があることが示唆された.
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三輪 智輝, 笹川 郁, 小林 弘幸, 我妻 浩二, 岩本 航
2023 年30 巻2 号 p.
293-297
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【目的】手指屈曲時の浅指屈筋(FDS)の収縮方向と移動量を超音波画像診断装置で評価すること.
【方法】対象は,健常成人4名8肘とした.前腕近位1/3でFDSを短軸描出した.尺骨を0と定義しX/Y座標を設けた.2・3・4・5指で,安静時とPIP関節を最大屈曲した際の中心点の移動量を比較した.統計解析はFriedman検定を用い,事後検定はBonferroni法を実施した.
【結果】X軸の移動量は第2指で10.5 ± 2.7mm,第3指で-10.2 ± 3.9mm,第4指で10.3 ± 8.1mm,第5指で1.4 ± 3.0mm移動した.2,4指と3指のX成分の間に有意な差を認めた(p<0.05).
【考察】3指の収縮動態が異なったのは,半数以上が単独の筋腹であることが影響していると考察している.第3指のみ収縮動態が異なっているため,第3指と他の筋腹で機能の違いがあると推察する.
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樋口 一斗, 光井 康博, 原 光司, 坂井 周一郎, 吉田 禄彦, 宮本 梓
2023 年30 巻2 号 p.
298-302
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【はじめに】浅指屈筋 (FDS)・尺側手根屈筋 (FCU)の同時収縮が肘関節内側裂隙幅(JS)に及ぼす影響について検討を行った.
【対象と方法】 対象はオーバーヘッドスポーツを経験した男性20例20肘とした. 測定肢位は被験者を仰臥位で肩関節外転90°外旋位,肘関節屈曲90°,前腕・手関節は 中間位とし,超音波診断装置 (US)を用いてJSを計測した.測定条件は自重負荷,2kg負荷,2kg負荷下でのPIP屈曲 (示・中指,示・小指,中・環指),尺屈,尺屈+PIP屈曲 (示・中指,示・小指,中・環指)とし,各条件間でのJSを比較した.
【結果】 尺屈+示・中指屈曲,尺屈+示・小指屈曲,尺屈+中環指屈曲において,2kg負荷およびPIP屈曲より有意にJSが減少した(P < 0.01).
【考察】 肘関節の動的安定化機構として,FDSとFCUを同時に機能させることが重要であることが示唆された.
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松澤 寛大, 松井 知之, 東 善一, 平本 真知子, 宮﨑 哲哉, 森原 徹
2023 年30 巻2 号 p.
303-305
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
投球障害肘の危険因子に球速の増加があり,球速の増加に伴って肘関節外反ストレス(外反ストレス)は増加する.外反ストレスの制動に浅指屈筋(FDS)は重要であるが,健常投手におけるFDS機能や球速との関係は不明である.本研究の目的は,健常投手における各指のFDS筋力の特徴を明らかにし,球速との関係を検討することとした.対象は肩肘痛のない中学・高校野球投手26名とした.FDS筋力は示指,中指,環指で計測した.球速は5m間で全力投球させ計測した.FDS筋力の比較には一元配置分散分析とBonferroni法を用い,球速との関係をピアソンの相関係数を用いて検討した.示指と中指のFDS筋力は環指よりも有意に高値であり,球速と有意な正の相関関係を認めた(示指r = .59,中指r = .48).健常投手では,球速とともに外反ストレスが増大するため,示指と中指のFDSの役割は重要であると考える.
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松井 知之, 瀬尾 和弥, 東 善一, 宮﨑 哲哉, 松澤 寛大, 森原 徹
2023 年30 巻2 号 p.
306-309
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【はじめに】投球障害選手の投球フォームの特徴を示した報告は少ない.今回われわれは,投球障害肘選手と健常選手との違いを検討したので報告する.
【対象・方法】投球時に肘関節痛を有する高校生投手16例(障害選手)および健常選手15例とした.三次元動作解析装置を用いて全力投球を計測し,肩関節・下肢・体幹関節角度を対応のないt検定を用いて比較した.
【結果】障害選手では,投球開始時において軸脚股・膝関節屈曲,足関節背屈角度が高値であった.並進運動では,軸脚股関節の外転,投球側肩関節外転角度が有意低値,肘関節屈曲角度が有意に高値であった.肩関節最大外旋からボールリリースでは,胸郭の投球方向への回旋が有意に低値を示した.
【考察】障害選手では,肩関節外転が有意に低下し,その結果肘関節痛を生じていると考えた.また投球動作前半から異なった下肢・体幹角度を呈し,重要な評価ポイントと考えた.
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石井 毅, 米川 正悟, 渡邊 幹彦
2023 年30 巻2 号 p.
310-313
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
【目的】投球時肘痛を有する野球選手の初診時Kerlan-Jobe Orthopedic Clinic shoulderand elbow score (以下,KJOC)が治療選択に有効か調査した.
【方法】2020年4月~2022年3月末までに当院を初診した高校生以上の投球時肘痛を有する野球選手194名を対象とし,主観的な投球状況についてKJOCを用いた問診票調査を行った.有効な解答が得られた175名(19.2 ± 3.3歳)を解析対象とし,ポジション別および診断別の比較,保存療法群と手術群の2群に分けて比較検討した.
【結果】ポジション別,診断別で各群のKJOCに有意差は認めなかった.保存療法群は60.9 ± 14.6点,手術群は43.2 ± 23.5点で,2群間に有意差を認めた(p=0.004).
【考察】初診時KJOC が低値の場合は投球支障度が高いことを示し,初診時KJOCは治療選択に有用と考えられた.
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宮﨑 哲哉, 松井 知之, 東 善一, 瀬尾 和弥, 平本 真知子, 松澤 寛大, 森原 徹
2023 年30 巻2 号 p.
314-318
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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本研究の目的はボールリリース(BR)後の上肢および体幹のキネマティクスと肘関節最大内反トルク(肘最大内反トルク)の関係を検討することである.
対象は女子プロ野球選手11名とし,投球動作を三次元動作解析装置および床反力計を用いて計測した.BR後の肘最大内反トルクと骨盤回旋角度に有意な正の相関関係(r=0.62, P=0.04),肩関節外転角度と有意な負の相関関係を認めた(r=-0.63,P=0.03).一方,その他の上肢および体幹角度との間には有意な相関関係を認めなかった.BR後において,骨盤の投球方向への回旋角度の増加と肩関節外転角度の減少が肘最大内反トルクの増大と関連があった.
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田村 将希, 阿蘇 卓也, 古屋 貫治, 磯崎 雄一, 西中 直也
2023 年30 巻2 号 p.
319-322
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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目的:投球側の違いにより,肩関節・肘関節・前腕可動域に差があるかどうかを検討することである.
方法:プロ野球選手37名のメディカルチェックデータから,肩関節可動域(外転位内外旋,屈曲位内外旋,水平内外転,total arc)と肘関節可動域(屈曲,伸展)および前腕可動域(回内,回外,回内外total arc)を調査した.右投げ選手(R群)と左投げ選手(L群)に群分けを行い,肩関節可動域,肘関節可動域および前腕可動域を2群間で比較した.有意水準は5%未満とした.
結果:R群25名,L群12名に群分けされた.R群で外転位外旋(p=0.03)と屈曲位外旋(p=0.04)が高値を示し,外転位内旋(p=0.02),水平内転(p=0.003),回内外total arc(p=0.02)で低値を示した.
考察:投球側により肩関節および前腕の可動域に違いがある可能性が示唆された.
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Ⅴ. 上顆炎・腱付着部炎
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伊勢 昇平, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 稲垣 健太, 平岡 祐, 服部 史弥
2023 年30 巻2 号 p.
323-326
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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【はじめに】難治性外側上顆炎(LE)の心因性要素と臨床スコア・疼痛の関係を検討した
【方法】難治性LE82名95肘に対して評価を行った.平均年齢は50.1歳,男性47人54肘女性35人41肘,平均罹病期間19.8ヶ月.Pain catastrophizing scale(PCS)とQuick-DASH score,VAS,握力患健側比の相関を評価した
【結果】平均PCSは 25.7,PCS30以上は35肘,平均値はQ-DASH 36.9,VASは夜間痛20.8,安静時痛15.4,動作時痛50.3,圧痛52.7,Thomsen test 50.9,握力患健側比0.75でPCSとQ-DASH,動作時痛,圧痛,Thomsen testの間に中等度の相関を認めた
【考察】難治性LEにおいてADL低下が強い,動作時痛,圧痛・Thomsen testの痛みが強い例では心因性要素が関連している可能性がある.
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彌富 雅信, 鶴田 敏幸, 小松 智, 峯 博子, 井上 美帆
2023 年30 巻2 号 p.
327-329
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
フリー
上腕骨外側上顆炎における集束型体外衝撃波療法(以下ESWT)には一定の治療効果が報告されているが,その適応範囲は未だ不明な点が多い.本研究では治療効果に影響する因子を調査し,適応の有無を明らかにすることとした.対象は,ESWTを施行した144例165肘とした.方法は,治療結果から成績良好群と不良群に分け,患者背景である年齢,性別,利き手罹患率,初診時・最終時Numerical Rating Scale(以下NRS),罹病期間,ESWT照射回数 ,職業,趣味由来について比較検討した.結果は,約7割に疼痛軽減が得られ,年齢 ,職業,初診時NRSで有意差がみられた.また,職業では事務系職は効果が高い可能性が示唆された.一方肉体労働系の効果は様々だった.ESWTの効果に影響する患者背景として,職業場面での負荷量や繰り返される動作の特徴の違いが示唆され,それらを考慮して施行を検討する必要がある.
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坂井 周一郎, 光井 康博, 原 光司, 樋口 一斗, 吉田 禄彦, 宮本 梓
2023 年30 巻2 号 p.
330-333
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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上腕骨外側上顆炎(LE)に関し,MRIを用いたCommon extensor tendon(CET)起始部の腱損傷と身体所見の関連性には一定の見解が得られていない.そこで今回,集束型体外衝撃波治療(FSW)前におけるMRI評価がFSWの疼痛改善に及ぼす影響について調査した.FSWを行った難治性LE 68例68肘を対象とした.FSWは合計9回行った.治療前MRI画像によりCET腱損傷を3段階に分類した.更にCET表層の輝度変化の有無にも着目した.疼痛改善率はFSW開始前後の動作時痛と圧痛から算出し,重回帰分析を用いてMRI所見との関連性を検討した.重回帰分析の結果はCET 表層の輝度変化のみが抽出され,CET 表層の輝度変化を認める症例は有意に疼痛改善率が低下していた.CET腱損傷との関連性は認めなかった.難治性LEにおける疼痛誘発部位は,CET表層の輝度変化が関与している可能性が示唆された.
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髙島 健一, 齋藤 憲, 花香 恵, 尼子 雅敏, 射場 浩介
2023 年30 巻2 号 p.
334-337
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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自衛官の難治性上腕骨外側上顆炎について特徴を調査し,改善群と比較検討した.また術前後の治療成績についても検討した.2015年4月~2022年3月までに上腕骨外側上顆炎と診断された自衛官372例403肘を対象とした.男性382肘,女性21肘,初診時平均年齢は45.5歳であった.6か月以上の保存療法に抵抗し,手術加療を要した症例を手術群,それ以外を非手術群とした.手術群は403肘中23肘(5 %)であった.難治群の特徴として,女性の割合が高く,重作業の従事する割合が高かった.また,ステロイド注射回数や受診回数が多く,装具治療を行った割合が高かった.手術群23肘全例に鏡視下手術を行いVAS,DASH score,JOA-JES scoreは術後1年で有意に改善した.難治例は女性,重作業従事者に多く,鏡視下手術は有用であると考えられるが,早期の職場復帰を念頭に手術時期について検討が必要と思われた.
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織田 崇, 近藤 弘基, 山中 佑香, 白戸 力弥, 和田 卓郎
2023 年30 巻2 号 p.
338-340
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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上腕骨内側上顆炎に対して鏡視下手術を施行した7例8肘を対象として,筋内中隔に付着する屈曲回内筋群の筋性起始部の病変による術後成績への影響を調査した.MRI STIR像で7肘に屈曲回内筋群起始部の内側上顆付着部に,4肘に筋内中隔付着部に高信号を認めた.全8肘の平均安静時痛,平均運動時痛,平均DASHスコアはいずれも術後に有意に改善した.MRIで筋内中隔付着部の高信号変化の有無で分けた2群の比較では,術前および術後の平均安静時痛,動作時痛,DASHスコアに差はなく,両群ともに平均動作時痛が有意に改善した.内側上顆炎に対する鏡視下手術により疼痛やADL障害は改善し,筋性起始部の病変による治療成績への明らかな影響はなかった.
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銭谷 俊毅, 射場 浩介, 齋藤 憲, 高島 健一, 山下 敏彦
2023 年30 巻2 号 p.
341-347
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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【はじめに】上腕骨内側,外側上顆炎に対するステロイド局所注射は有用な治療法である.本研究の目的は,ステロイド局所注射後の筋腱付着部断裂に対して手術を行った上腕骨内側,外側上顆炎3例の病態と術後成績を検討することである.
【対象と方法】上腕骨内側,外側上顆炎に対するステロイド局所注射後の筋腱付着部断裂に対して手術を行った3例を対象とした.検討項目は,ステロイド局所注射の回数,術前症状,画像所見,術中所見,術後成績とした.
【結果】ステロイド局所注射は平均3回,疼痛は全例に認めた.手術は1例で筋腱を直接縫合,2例で直接縫合不能であったためアンカーを用いて縫着した.疼痛は全例で改善した.
【考察】上腕骨内側,外側上顆炎に対するステロイド局所注射は筋腱付着部断裂の危険性が上昇するとされている.自験例でも同様の原因が考えられた.ステロイド局所注射の使用法についてさらなる検討が必要と考えられた.
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日高 典昭, 鈴木 啓介, 細見 僚
2023 年30 巻2 号 p.
348-350
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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上腕骨外側上顆炎(LE)に対する関節鏡視下手術に発生した異所性骨化(HO)について報告する.症例は大工に従事する45歳の男性で,半年前から右肘の痛みが出現し,保存療法では軽快しなかった.身体所見では外側上顆に圧痛があり,誘発テストは陽性であった.MRIでは短橈側手根伸筋の起始部にT2強調像で高信号がみられ,PREEは52.3点であった.関節鏡視下手術(ASD)を施行し,術後10日目から可動域訓練を開始したが疼痛が継続した.術後6週で屈曲70度まで低下したため単純X線を撮影したところ,上腕骨遠位橈側にHOがみられた.ASD後8か月でHO切除手術を施行し,最終観察時に伸展0度,屈曲130度,PREEは0点となった.
肘関節手術においてHOを生ずることはしばしば報告されているが,軟部組織操作のみの関節鏡手術での発生はほとんど報告がない.しかし,術後合併症の一つとして念頭に置いておく必要がある.
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Ⅵ. 神経疾患
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澁谷 純一郎, 高原 政利, 佐竹 寛史, 高木 理彰
2023 年30 巻2 号 p.
351-356
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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肘部管症候群に対して尺骨神経皮下前方移動術のみを行い,3か月以上経過観察し得た10代の野球選手16例を対象とした.16例中12例が臨床所見から肘関節内側側副靭帯(以下MCL)損傷の併発と診断した.全例に尺骨神経皮下前方移動術を行った.投球は術後約1か月で開始し15例(94%)は野球に復帰した.13例(81%)は術後平均4(2-6)か月で完全に復帰した.MCL損傷を認めた12例のうち9例(75%)と,MCL損傷を認めなかった4例全例が,いずれも術後平均4か月で野球に完全復帰した.復帰不能の1例と不完全復帰の1例は,それぞれ術後3か月と10か月にMCL再建を行った.野球少年の肘部管症候群に対する尺骨神経皮下前方移動術は,症状改善や野球復帰において有用であり,軽度のMCL損傷があっても尺骨神経に対する手術のみでおよそ3/4の症例で完全復帰が期待できるが,靭帯再建を必要とする例も散見される.
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木村 洋朗, 松尾 知樹, 鈴木 拓, 佐藤 和毅, 岩本 卓士
2023 年30 巻2 号 p.
357-360
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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肘部管症候群手術症例を対象に,臨床的特徴や電気生理学的所見,術後成績に及ぼす因子について検討を行った.対象は71肘で,平均年齢59歳,男性44肘,女性27肘,利き手44肘,非利き手27肘,平均BMI 25kg/m2,平均罹病期間13か月,糖尿病合併11肘,頚椎疾患合併19肘,変形性肘関節症18肘,McGowan分類はI度 9肘,II度 23肘,III度 39肘,術者5名,術式は単純除圧16肘,King変法5肘,前方移動術50肘であった.術後2年時点におけるMessina評価基準は優7肘,良28肘,可30肘,不可6肘であり,統計学的に有意な相関を認めたのは術前McGowan分類のみであった.また,電気生理学的検査では7例がインチング法のみで伝導異常を認めた.術前重症度が手術成績に影響することが示され,また,肘上下の伝導速度や振幅に異常を認めない場合にはインチング法が有用であると考えられた.
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辻 華子, 西田 淳, 市川 裕一, 畠中 孝則, 永井 太朗, 山本 謙吾
2023 年30 巻2 号 p.
361-364
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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肘部管症候群に対し当院にて皮下前方神経移動術を施行した32例32肘に対し,指腹ピンチ力の経時的変化について調査した.男性24例,女性8例であり,年齢は15歳~87歳(平均58.6 ± 16.9歳)であった.評価項目は,母指-示指指腹ピンチ力(TI),母指-中指指腹ピンチ力(TM),母指-環指指腹ピンチ力(TR),母指-小指指腹ピンチ力(TL)とし,術前,術後3か月,術後6か月,術後12か月にそれぞれ測定を行った.TR,TLは術後6か月の時点で有意に改善し,深指屈筋(Ⅳ・Ⅴ)の筋力回復が大きく関与していると考えられ,また第3・4虫様筋,第2・3掌側骨間筋の筋力回復も影響している可能性がある.これに対して,TIおよびTMの回復には術後12か月以上を要することが示唆され,短母指屈筋(深頭),母指内転筋,第1・2背側骨間筋筋力の回復遅延が関与していると推察された.
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吉田 史郎, 松浦 充洋, 高田 寛史, 西村 大幹, 平岡 弘二
2023 年30 巻2 号 p.
365-368
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
ジャーナル
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重度肘部管症候群に対して皮下前方移動術に加え前骨間神経移行術を行ったのでその成績を報告する.2019年から2022年までに当院で治療し12か月以上経過観察できた著明な骨間筋萎縮を認める赤堀病期分類4期以上,McGowan grade 3の5例を対象とした.手術時平均年齢は64歳(32~81歳),男性5例で観察期間は平均22か月であった.握力は術前平均健側比62%から術後94%に改善,Quick DASHは術前平均51点から術後5点に改善した.Froment徴候は5例中4例に改善傾向がみられ,鉤爪変形は5例中3例に認め,術後に2例がmodified Brand criteriaでexcellent,1例がgoodであった.重度肘部管症候群に対し前骨間神経移行術は合併症もなく,良好な成績が得られ肘部管での除圧手術では回復困難とされている筋萎縮に対しても回復が期待できる術式と考えられる.
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山田 弘樹, 道信 龍平, 井汲 彰, 原 友紀, 吉井 雄一, 小川 健, 池田 和大, 照屋 翔太郎, 柘植 弘光, 山崎 正志
2023 年30 巻2 号 p.
439-443
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/23
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本研究の目的は,若年スポーツ選手の特発性肘部管症候群手術例における特徴を検討し,神経伝導速度検査の有用性を検証することである.対象は30歳未満のスポーツ選手20例21肘.術前にinching法が実施された症例では,術中に術者が判断し,手術記録に記載された原因部位を調査し,伝導遅延部位と比較した.競技種目は野球が13例と最多で,臨床症状は21肘中18肘に肘内側部痛,16肘に環小指の痺れを認めた.inching法を行った10肘中9肘で伝導遅延が検出され,9肘中4肘で手術記録に記載された原因部位と一致した.若年スポーツ選手の特発性肘部管症候群手術例における特徴として野球症例,肘内側部痛と環小指に痺れのある症例,上腕三頭筋内側頭の関与が疑われる症例が挙げられた.また,通常の神経伝導速度検査にinching法を追加することで,診断の精度を高め,術前の原因部位同定の一助となる可能性がある.
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池田 全良, 小林 由香, 齋藤 育雄, 中島 大輔, 石井 崇之
2023 年30 巻2 号 p.
369-372
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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ガングリオンに起因する肘部管症候群とその再発は比較的稀である.変形性肘関節症と肘部管症候群に対する手術後に症状が軽快し,ガングリオンによって急性増悪した尺骨神経麻痺の1例を経験した.症例は77歳,男性.剣道指導者.70歳時に左側の肘部管症候群の診断にて他院でKing法を施行された.その後1年半を経過して尺骨神経麻痺と変形性肘関節症による可動域制限と運動痛が持続するため当科を受診した.Debridement arthroplastyと尺骨神経皮下前方移行術を施行し神経および関節の症状は改善していた.術後5年8か月(77歳時)で尺骨神経領域の激烈な疼痛を有するしびれが出現した.MRIおよび超音波検査の結果で,肘部管より遠位に発生したガングリオンを認め,切除術によって神経由来の疼痛は消失した.
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西村 大幹, 吉田 史郎, 高田 寛史, 松浦 充洋, 平岡 弘二
2023 年30 巻2 号 p.
373-375
発行日: 2023年
公開日: 2024/01/30
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小児上腕骨骨折に合併した橈骨神経麻痺に対して超音波下ハイドロリリースを行った1例を報告する.神経麻痺の伴わない上腕骨顆上骨折を受傷した7歳男児に対してピンニングをしたが,術後3日頃より橈骨神経麻痺を認め,術後1週に橈骨神経の支配筋肉の筋力はMMT1になった.受傷後12週経過しても麻痺の改善なかった.エコー検査にて橈骨神経確認したところ骨折部直上で橈骨神経の走行異常を認め,超音波下ハイドロリリース施行したところ,翌日より感覚の改善を認め,ECU優位に筋力の改善を認めた.9回の処置により,術後半年でMMT5に回復を認めた.骨折に合併する橈骨神経麻痺は自然に回復することが多いが早期剥離を行う報告も散見される.3ヶ月の保存療法に抵抗性であった橈骨神経麻痺に対して超音波下ハイドロリリースを行ったところ,施行後より徐々に筋力の改善を認めた.低侵襲であり骨折に伴う神経麻痺に対する選択肢の一つとなりうる.
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Ⅶ. 炎症・感染
Ⅷ. 変性疾患
Ⅸ. 腫瘍・類似疾患
Ⅹ. 治療法