日本乳癌検診学会誌
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4 巻, 2 号
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  • 福田 護, 寺田 央
    1995 年 4 巻 2 号 p. 98
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 末喜, 吉田 貢, 泉 喜策
    1995 年 4 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    現在行っている視触診による集団検診がどの程度乳癌死亡の減少に寄与しているかを, 市町村別標準化死亡比 (SMR) を使って, 受診率との関係から検討した。
    高知県の乳癌検診は1973年から開始し, 1993年の受診率は30歳以上の対象者の16.6% (老人保健法では21.6%) である。市町村別に受診率をみると15%以下のところ12市町村, 15%から25%のところ25市町村, 25%以上のところ16町村である。全国平均値を100とした本県の乳癌のSMRは, 検診開始当初の90~95から80弱に低下した。受診率15%以下である12市町村のSMRをみると, 80以下は6市町村 (50.0%) であるが, 受診率15%以上である41市町村では, SMR80以下は31市町村 (75.6%) と増加していた。
    以上の結果から, 視触診による乳癌集団検診で, 受診率を15%以上とすることにより, 充分な乳癌死亡予防効果が得られるものと思われた。
  • 非触知乳癌の発見を中心に
    武部 晃司, 伊達 学, 荻野 哲朗, 山本 洋介, 木下 正司, 安藤 直美
    1995 年 4 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    当科の1次検診の特徴はリアルタイム超音波検査を用いたWhole Breast Scanning (以下, WBSと略) を全員に施行することにある。現在までに23,235名 (初回受診13,753名) の受診者全員にWBSを施行し, さらに8,540名にMMGをオプションとして追加した。その結果, 59名の乳癌が発見されたが, 発見率は総受診者で0.25% (初回受診0.30%, 繰返し受診0.18%) と高率であった。非触知乳癌は29例 (49%) であり, これが発見率の向上に寄与した。非触知乳癌のうち22例はWBSで発見され, 7例はMMGの石灰化像で発見された。WBS発見例は16例が浸潤癌, 6例が乳管内癌 (DCIS) であり, MMG発見例は1例が浸潤癌, 6例がDCISであった。微小な浸潤癌を早期に発見するほうがDCISの発見よりも有意義であり, この点からもWBSの有用性が認められた。非触知乳癌の超音波所見は豹紋型, 染みだし型, 類脂肪型, 類嚢胞型など, 乳癌に特徴的とされる所見を有さないものが多く含まれていた。非触知乳癌の診断には超音波所見のみでは困難であり, 超音波ガイド穿刺吸引細胞診の積極的な活用が必要である。わが国の超音波検査は, 技術的水準や装置の普及度の面からは世界をリードしており, それらを活かして新しい検診システムを構築することも可能と考える。Whole Breast Scanningを用いる検診は大きな可能性があり, MMGを用いる検診以上の効果が期待できると考える。
  • 岡崎 稔, 岡崎 亮, 平田 公一, 成松 英明, 岡崎 裕, 浅石 和昭, 田村 浩一
    1995 年 4 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    北海道は広域で乳腺診療施設も都市に集中していることから, 患者の受診は地理的, 経済的にも容易ではない。この地域特殊性を考慮し, 乳癌集団検診の一次検診の場に二次検診としてマンモグラフィや穿刺吸引細胞診を導入した出張方式による検診を行ってきた。過去15年間の検診の結果, 149例の乳癌を検出した (検出率0.15%) 。初回受診者における乳癌検出率は0.24%, 繰返し受診者のそれは0.10%と高く, 中間期乳癌は8例であった。検出乳癌は外来受診乳癌に比し早期例が多く, 特に自覚症状のない “検診発見乳癌” では77.5%が早期乳癌であった。
    本道の地域特殊性からみた乳癌検診の現状を述べるとともに, 教室の検診成績をもとに問題点を考察した。検診の充実と拡大を推進するために, 一次検診にマンモグラフィなど画像診断法の適切な導入が早急に望まれる。
  • 東 靖宏, 末益 公人, 栗原 照昌, 長沢 雅裕
    1995 年 4 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌検診を目的に通院している患者から, 早期に乳癌を発見するために有効な診断方法と検診間隔を, 過去2年以内に検診受診歴を有する乳癌58名を対象として検討した。
    発見乳癌は早期癌が33名56.9%と高率であるが, これらの症例の診断は難しく, 癌が判明した時点での診断率は触診55.2%, 乳房撮影 (MMG) 67.4%, 超音波検査 (US) 83.3%で最終診断を生検に負うものが多かった。経過観察に有効な診断法を, 前回と同一の検査を行ったもので今回悪性変化を示した割合で比較して検討した。MMGでは1年以内に61.9%が, 2年以内に90.9%が悪性変化を示した。USでは1年以内に50.0%, 2年100%であった。
    定期検診では, 触診以外に年1回のMMGあるいはUSによる検査が必要である。
  • 笹 三徳, 森本 忠興, 原田 邦彦, 田中 直臣, 山口 哲央, 相良 安信
    1995 年 4 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ検診を無症状婦人を対象に施設, 出張方式で行った結果, 要精検率 (recall rate) は, それぞれ5.9%, 10.0%, 生検率 (biopsy rate) は1.4%, 2.0%, 乳癌発見率は, 0.19%, 0.84%であった。発見動機となったマンモグラフィ所見は, 腫瘤陰影が約半数で, マンモグラフィ検診においては, 腫瘤陰影の描出が重要であると考えられた。
    年齢別乳癌発見率は, 50歳代では, 施設0.43%, 出張0.79%, 60歳代では1.21%, 1.46%で, 発見率から対象者の至適年齢を検討するとマンモグラフィ検診は, 50歳以上に適していると考えられた。また, マンモグラフィ像の乳腺実質分類から検討すると, マンモグラフィ像の識別に強い影響を与えると思われるDYは, 50歳以上では2.4%と非常に少なく, マンモグラフィ検診は, 50歳以上に適していると思われた。
  • 福田 護, 寺田 央
    1995 年 4 巻 2 号 p. 134-144
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 阿部 力哉, 近藤 誠, 久道 茂
    1995 年 4 巻 2 号 p. 145-157
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    近藤 誠
    慶應義塾大学医学部放射線科
    乳がん検診の意義があるというためには, 次の5つの項目をすべて充たす必要があります。すなわち, (1) 乳がんの性質が検診に適していること (性質上, 早期発見・早期治療による乳がん死亡減が合理的に予想されること), (2) 検診により乳がん死亡が減ること (いわゆる有効性), (3) 他の死因を含めた総死亡数が減少すること, (4) 検診による不利益がないこと, (5) 不利益がある場合には, 上記 (3) の程度との比較衡量, です。しかし, (1) から (5) までの点はいずれも否定されます。詳しくは, 拙書「それでもがん検診うけますか」 (ネスコ/文藝春秋), 大島明氏 (大阪がん予防検診センター) の「癌検診は果して百害あって一利なしか……近藤誠氏の著書を読んで」 (メディカル朝日95年2月号), および私の「癌検診・百害あって一理なし」 (同95年3月号) を読んでください。
    ここではすべての論点に触れるのは不可能ですから, (1) 乳がんの性質が検診に適しているかどうかについて考えてみますが, まず, 乳がんと病理診断される病変のなかには, 放置しても人の命を奪わない「がんもどき」と, 「本物のがん」とがあります!その場合, がんもどきは定義上, どこまでいっても致死性でない病変ですから, 早期発見が無意味なことは当然です。が, 本物のがんに対しても, 検診は理論上無意味なのです!というのも, 本物の乳がんが人の命を奪う原因のほとんどは転移ですから, 検診に意味があるがんは, 早期発見時点ではまだ転移が生じてなくて, そのまま放置すると転移が生じるもの, ということになります。ところが転移が生じる時点は, 数々の証拠からは, 早期発見できる大きさになるはるか以前, と考えられるので, それでは検診は無意味です。
    また, がんの本質からも, 乳がんは検診に適していないといえます。というのも, がんは遺伝子の異常をその本質とするので, 個々のがん細胞は同じ遺伝子異常をそなえており, それゆえ転移に関しても同じ性質をもっているはずだからです。発見されたがんが転移する性質をもっているなら, その性質は1個のがん細胞が発生したときから, 個々の細胞にそなわっていると考えるのが素直です。そしてがん細胞は早期発見できる大きさになるまでに, 二分裂を約30回繰り返しています (細胞数は10億個になる) から, 転移する性質のがんでは, 発見した時点までに, もう転移が成立している, と考えるほうが自然です!他方, 早期発見したがんに転移がない場合, 30回もネズミ算を繰り返すうちにも転移できなかったわけですから, それ以降も, 仮に放置しておいてももう転移しないと考えられるでしょう。このように, 乳がんは (そして他臓器のがんも), その本質からも性質からも, 検診に適している (検診で死亡数を減らせる) とは考え難いわけです。
    久道 茂
    東北大学医学部公衆衛生学
    がん検診は早期発見, 早期治療によって, がん死亡率を減少させることを目的としている。厚生省成人病死亡率低減目標策定検討会がまとめた目標は, 40歳から69歳の壮年層の死亡率を平成元年を基点として2000年までに, 胃がん, 子宮がんの半減, 肺がん, 乳がん, 大腸がんの上昇を下降に転じさせるとした。
    がん検診にはそれを行う条件がある!死亡率, 罹患率の高いこと, 集団的に実施可能な検診方法であること, 精度の高いスクリーニング法であること, 早期発見による治療効果が期待できること, 費用効果・便益のバランスがとれていること, 死亡率の減少効果があること, 一次スクリーニングだけでなく, 精度検査も含めて一連の検診体系で安全であること, などである。
    がん検診に関する研究の方法には手順がある。検診を実施する前に行うスクリーニングテストの精度, 実施可能性, 安全性, 信頼性, 有効性および費用の検討である!その方法として, ケースコントロール研究, 長期のコホート研究, 時系列研究などがある。重要なのは, 実施前から研究計画の手順を踏んでたてておくことである!
    がん集検には得失の両面がある。「百害あって一利なし」というキツイ言葉もあるが, がん検診の最大の得 (gain) は早期発見による救命効果である!一方, 失 (loss) は見逃しや偶発症などがある。これらの得失に関してきちんと評価しなければならない。
    評価の方法には事前評価, 平行評価および振り返り評価があるが, 別な視点から, 検診を受けたグループが当該がんの死亡数と率が確かに減少したのかを評価する疫学的評価がある。次に, スクリーニングの精度検討や安全性などの検討を行う技術的評価がある。それから経済的評価, システム評価などがある。国際的にはUICC (国際対癌連合) ががんのスクリーニングの評価に関する定期的な会議を行っている!第6回会議 (1990年) では, 世界各地で行われているがん検診を再評価して1冊の本にまとめている。
  • 飯沼 武, 植野 映, 大内 憲明
    1995 年 4 巻 2 号 p. 159-170
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    植野 映
    筑波大学臨床医学系外科
    乳癌の集団検診は本邦においても奨励されてきたが, どの形式が合理的かは定まっていないことから, 乳癌の検診システムを探る目的で1985年より茨城県メディカルセンターにて乳房検診の受診者全員に視触診, マンモグラフィ, 超音波検査を施行し, 比較検討してきた。
    [対象と方法] 茨城県メディカルセンターにて人間ドックの一環として乳房検診を受けた女性を対象とした。受診者のほぼ全員は乳癌の症状に対しては無自覚である。1日での検診者は約30人とした。一次検診として視触診 (PE), マンモグラフィ (MMG), 超音波検査 (US) を全受診者に対して行った。マンモグラフィ診断装置はセノグラフィ500Tを使用した。40歳以上は隔年撮影とした。撮影は斜位1方向のみである。超音波検査にはメカニカルセクタスキャナ, 周波数7.5MHzと10.0MHzを使用し, 各検診時受診者全員に施行した。また, 超音波検査は臨床検査技師が施行し, 有所見の場合にはインスタント写真に記録し, その後に1人につき40秒間の長さにビデオテープに録画した。その後, 乳癌専門の医師が所属リンパ節の触診と乳房の視診を行い, マンモグラムの読影を行った後に仰臥位にて乳房を触診しつつ録画した超音波画像を読影した。所見があれば, 必要に応じて適宜, マンモグラムの拡大読影, 医師による超音波検査, 細胞診等を追加した。
    各種検査の判定は (1) 異常所見なし, (2) 良性疾患, (3) 悪性を否定できない, (4) 癌または癌の疑い, の4段階に分類して検討した。検出率および感度を計算するには “悪性を否定できない” と “癌または癌の疑い” を癌の検出として求めた。また, 財政的な検討も併せて行った。これは各診断法の患者負担で癌1症例を発見するのに必要な経費を概算した。自己負担費は視触診 : 2,000円, マンモグラフィ : 2,000円, 超音波検査 : 3,000円とした。マンモグラフィは隔年の撮影であるので正確な撮影枚数を計算するには困難を極めるため, 繰返し受診者の半数がマンモグラフィを撮影したとして計算した。
    [結果ならびに考察] 受診者総数は繰返し受診者を含めて9,939名であった。初診者数は5,142名, 繰返し受診者数は4,797名で, その間に確認された乳癌総数は27例であり, 検出乳癌は22例, 検出率0.22%であった。19例は初回に検出され, 3例が繰返し検診の中で検出された。老人保健法における乳癌の検出率は0.06~0.12%で全国平均0.07% (1992年) である。本検診ではその検出率の3倍の成績を記録した。米国の乳癌発生率が本邦の3.7倍であることを考慮するとこの値は米国では0.81%にあたり, BCDDPの検出率0.4%より良好と思われる。施設検診の成績はどの施設も良好であるが, それは乳癌の症状を自覚した受診者が多いためといわれている。本検診は人間ドックの一環として施行されており, 施設検診での検出率を高める有症状者はいない。また, 早期乳癌の比率は81.8%であった。老健法では早期乳癌の比率は40~50%であり, 本検診は現在まで施行されたいかなる検診よりも早期乳癌の占める割合は高く, 精度が非常に高いと考えられる。したがって, 本検診は将来の乳癌検診ならびに集団検診のシステムを考察するには十分な成績と考えられた。感度は視触診33.3%, マンモグラフィ51.9%, 超音波55.6%であった。非触知乳癌ではマンモグラフィの感度が高い。しかしながら, 浸潤癌の成績は不良であった。超音波検査は浸潤癌を検出するのを得意とし, 78.6%の浸潤癌は超音波にてとらえた。
    すべてを網羅する検査法はなく, それぞれの検査単独にて検出される乳癌がある。それらの相互関係をみると3種ともに異常を認めたのは14.8%のみである。視触診のみが検出したのは異常乳頭分泌を示す1例であり, 超音波のみは4例14.8%, マンモグラフィは6例22.2%であった。超音波検査は視触診をほぼ網羅した。マンモグラフィはそれとは対照的に視触診にて検出されない非触知乳癌を数多く検出した。それらの症例はすべて微細石灰化巣にて描出される極めて早期の乳癌であった。超音波検査とマンモグラフィで検出される乳癌の重なりは少なく, 両検査にてともに所見の得られたのは7例25.9%であった。3種の検査の併用では81.5%の感度であるが, MMG+USでも77.8%と高率であった。これは3種併用により検出される乳癌の91.4%にあたる。その他, PE+MMG66.7%, PE+US59.3%であった。
    経済的な側面からも検討を行った。乳癌検診初診者数は5,142人, 繰返し受診者数は4,797人であり, 総費用は64,776,000円である。検出乳癌は22人であるので, 1人の乳癌を検出する費用は2,944,367円となった。同様にして, 各組合せにおける癌1症例を検出するに必要な経費を算出するとマンモグラフィ単独では乳癌1例を検出するに116万円と最も経済的効率が良い。次に効率の高いのはPE+MMGの194万円, 超音波検査単独の199万円である。
  • 触診および超音波診断の評価と自己検診法の普及度からみて
    小池 綏男, 寺井 直樹, 若林 透
    1995 年 4 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    長野県では, 視・触診に超音波検査を併用した検診と自己検診法の教育を2不柱とした乳癌集検を昭和55年度から開始した。集検開始後は毎年, 県下の4地区で超音波画像読影研修会を開催して検診医の診断能の向上に努めてきた。一方, 長野県がん検診センターは癌の精検施設として昭和58年10月に開所した。
    今回は過去10年3ヵ月間に本センターの乳腺外来を訪れた乳癌集検要精検1,441例を前期・後期の2群に分けて, 検診医の視・触診と超音波診断の診断能を比較し, さらに, 著者の診断能と対比した。また, 受診者に対する乳房自己検診法の普及程度についても調査し, 以下の結果を得た。
    1) 前期の受診者655例中では乳癌は30例, 4.6%であり, 後期786例中では31例, 3.9%であった。
    2) 検診医の視・触診および超音波診断の診断能は, 後期は前期と比べて著しく高かった。
    3) 著者の視・触診と超音波診断の診断能は前期と後期の間に著しい差はみられなかった。
    4) 検診医の視・触診と超音波診断の診断能の向上がみられたことから乳癌集検の波及効果の一端がうかがわれた。
    5) 集検受診者が乳房自己検診法を理解している割合は受診回数が増すにつれて増加していたが, 実行している割合は60%程度で, 横ばい状況であった。
    6) 乳房自己検診法の教育は集検を受診しない人にも広く普及させる対策が必要である。
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