本研究では,プタの肝臓のホモジネートをアルギン酸のビーズに固定化した.このビーズはアルギン酸と塩化カルシウム溶液を用いて容易に,大量に調製することができた.
ビーズそのものは乳白色であり,ビーズの保存液は4日後でも濁らず,ほとんど着色しない.それゆえ,このビーズを酵素反応による呈色を調べるのに利用できる.ビーズ調製直後のカタラーゼ反応速度を100%として保存方法を比べると,冷暗所(5°C)で3日間保存した場合,0.15mol/l塩化ナトリウム液中での保存では反応速度が84%であった.また,0.lmol/lトリス緩衝液中での保存では75%であった.このように,調製後1~2日以内であるならば実験に使用可能である.
このビーズを使って3つの酵素について研究し,良好な結果を得た.
1.カタラーゼ;本研究で新たに作製した酵素発生量測定装置を用いて反応速度を測定し,温度との関係を示すことができた.
2.アルコール脱水素酵素;INT(フォルマザン色素)をアルコール分解反応に共役させてアルコールデヒドロゲナーゼの働きを検出した.
3.アルギナーゼ:アルギナーゼによって生成された尿素を含む反応液に,ウレアーゼを加えて分解し,ろ紙上でネスラー試薬によるアンモニアの発色を検出した.
従来,肝臓を使った実験では肝臓の小片やすりつぶし液を用いているが,肝臓ホモジネートをアルギン酸で固定化することで高校生物実験に,より有効に活用できることがわかった.
学校プール内の蜻蛉目幼虫の群集構造を明らかにするため,三重県津市にある小中学校等で調査を行った.学校プールではのべ13種の蜻蛉目幼虫を採集した.5月末ないし6月初めのプール掃除直前の各学校プールで採集した蜻蛉目幼虫はおおむね2種で,プールの長辺lmに1頭程度の密度であった.優占した種はショウジョウトンボとシオカラトンボ,ノシメトンボで,丘陵域と平野部のプールで順位は入れ替わった.前者に位置するプール内の蜻蛉目幼虫の群集構造の方が後者のプールよりもやや複雑であるといえた.秋季のプール内から得られた幼虫のほとんどはウスバキトンボであった.冬季のプールからは幼虫がほとんど得られなかった.これらの結果により,プール内に生息する蜻蛉目昆虫の教材化の可能性を論じた.