生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
63 巻, 3 号
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研究論文
  • ―循環器の学習における心臓モデルの活用―
    齊藤 亮平, 内潟 雅仁, 寺前 洋生
    2022 年 63 巻 3 号 p. 130-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    中学校第2学年の生命領域「動物の体のつくりと働き」で使用できる教材開発を行った.この分野は,ヒトの体内についての学習であり,直接観察することはできない.しかし,現行の教科書にはイカの解剖しか取り上げられておらず,ヒトと比較しながら学習することは難しい.そこで,生徒が実体験を伴った学習を可能にする教材として,弁のはたらきや血液循環の仕組みが体験できる「二心房二心室血液循環型心臓モデル」,動脈血と静脈血の違いをガス交換の観点から学習できる「二心房二心室ガス交換観察モデル」,二心房二心室の心臓と二心房一心室の心臓における血液の循環効率の違いを比較するための「二心房一心室血液循環型心臓モデル」の3つのモデルを開発した.本教材は容易に入手可能な安価な材料を用いて作製することができた.授業実践では,複数人が同時にモデルを操作することが可能であり,試行錯誤しながら探究的な学習が可能である.生徒は,実際に心臓モデルを操作することで,心臓の構造や動く仕組みについて具体的な見方ができるようになった.また,授業実践後のアンケートから心臓モデルを活用することは学習の手助けになると肯定的な回答をした生徒が全体の97%と大半の生徒がモデルの有効性を実感していた.本研究により,心臓モデルを活用することで,生徒は知識を受動的に与えられるのではなく,自ら発見し,体験することで効果的に学習することができることが示唆された.

研究資料
  • 西川 洋史
    2022 年 63 巻 3 号 p. 139-145
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    透明骨格標本は製作過程で微細な骨を紛失することはなく,立体構造も本来の状態で保存されるため骨格の観察をするのに適している.しかし,その製作には法律上毒物や劇物の指定を受けている薬品を必要とする.また脱脂で使うキシレンや組織固定用の酢酸は臭気が強く,生徒が気分を悪くすることも多いため,換気を十分に行わなければならない.このような安心安全に関する配慮や手間は透明骨格標本の作製を現場で実施する上で障壁となる.そこで本研究では劇物・毒物を使用せずに,透明骨格標本を作製する方法を検討した.その結果,70%アルコール固定後のキンギョを30°Cの洗濯洗剤に10日間浸漬し,30 μg/mLアリザリンレッドS水溶液で2時間染色後,グリセリンに移し替えるだけで脊椎骨や肋骨をはじめとする内部の細かな硬骨を観察できる標本ができることが分かった.授業実践ではキンギョ以外の十数種類の魚の標本を生徒に作らせることができ,多くの魚種で本手法が適用できることが示された.アリザリンレッドS以外に必要となる洗濯洗剤とグリセリンは,市販品であることから容易に入手することができる.本研究の成果は,授業や探究活動での透明骨格標本の導入を加速するだろう.

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