生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
55 巻, 3-4 号
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研究論文
  • 木村 朱音, 大鹿 聖公
    2015 年 55 巻 3-4 号 p. 140-148
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    小学校理科では,見通しをもって観察,実験を行い,実感をともなった理解をはかることがうたわれている.また,理科B区分では生物の飼育・栽培の活動が奨励されている.小学校第5学年「植物の受粉・結実」の単元では,季節的,時間的な問題から児童が直接体験できる観察実験活動が少なく,実感を伴って理解することが困難である.そこで,植物教材であるファストフランツを用いて授業実践を行い,児童の受粉・結実に関する理解の向上ならびに植物に対する興味・関心をはかれるかどうか検討した.授業①では樞物の種子ができるためにはどのようなことが必要かを考えさせ,ファストフランツを用いて受粉処理を行わせ,その後の予想を行わせた.授業②では,受粉させた1週間後のめしべの様子の観察から受粉と結実との関係について確認させ,身のまわりの植物がどのようにして受粉や結実を行っているかについて理解させた.授業実践を行った結果,花のつくりや種子のでき方についての児童の正答率が向上した.また,種子ができる条件としで枯れると自然にできる”と考えていた児童が授業前に4割程度いたが,受粉処理の体験とその後の観察により,ほぼ全員が“花粉がめしべにつぐという正答になった.実際に植物に触れて体験的な活動を行ったことで,児童の植物に対する興味・関心が喚起されるなど,さまざまな効果が得られることがわかった.

研究資料
  • 武村 政春
    2015 年 55 巻 3-4 号 p. 149-159
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    真核生物の誕生は,進化史上最も重要な出来事の一つである.しかしながら,高校生物の教科書におけるその記述は,共生説の紹介,原核生物と真核生物の単純な比較などにとどまり,真核生物の誕生がその後の生物進化に与えた影響など,重要な点が欠如しているなどの問題があると考えられる.そこで本研究では,旧課程「生物I」「生物Ⅱ」ならびに現行課程「生物基礎」「生物」の教科書に掲載された「真核生物の誕生」の内容,ならびにその「3ドメイン説」との関連付けに関する調査を行い,上記問題への解決法を見出すことを目的とした.旧課程の高校生物教科書では,「生物I」→「生物Ⅱ」の順で詳細な内容が扱われ,そのすべてにおいてミトコンドリアと葉緑体の起源に関する共生説が扱われていたが,核の起源に関しては「細胞膜の陥入」程度の記述しか見られなかった.現行課程の高校生物の教科書では,そのすべてにおいて共生説が扱われており,とりわけ旧課程「生物I」ではコラム的に取り扱われていたのに対し,現行課程「生物基礎」では本文において詳細に扱われていた.また現行課程では,教科書により「生物基礎」と「生物」のどちらで「真核生物の誕生」を詳細に扱うかが異なっていることがわかった.現行課程の「生物」では3ドメイン説が詳しく扱われるようになったが,3ドメイン説と密接に関係するはずの「真核生物の誕生」とは別の章で取り扱われており,大部分の教科書で両者は完全に切り離されていた.これらのことから,次の学習指導要領の改訂では,3ドメイン説との関係も見直した上で,教科書記述を再検討することが望ましい.また「真核生物の誕生」に関する教材研究は国内外を通してもほとんど行われておらず,新たな視点での教材開発が期待される.

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