生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
60 巻, 1 号
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研究資料
  • 向 平和, 大久保 聖也, 中村 依子, 日詰 雅博, 坂本 定生
    2018 年 60 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー

    小学校第5学年理科「動物の誕生」において,教科書では,観察材料としてヒメダカ(Oryzias latipes)を提示している.メダカの初期発生は孵化までの時間が9日ほどかかるため,学習内容を満たす補助教材として,初期発生の時間が短く,飼育も容易であるアカヒレ(Tanichthys albonubes)に着目し,飼育条件,産卵条件,採卵方法を探索し,採卵した卵から初期胚の発生過程を観察して,各発生段階への経過時間を調べた.また,愛媛大学附属小学校において,採卵用水槽を用いて,児童と協力して飼育を行い,アカヒレが産卵した後,採卵した卵の観察授業や,発生の過程を確認する授業実践を行った.アカヒレは胚が透明で,メダカと比べてshield期以降の発生が速く進行した.飼育の間や授業での児童の様子から,アカヒレは生徒の興味を引きやすいようであった.アカヒレは,飼育が容易な点,短期間で様々な発生段階を観察できる点,児童の興味を引きやすい点から発生観察の補助教材として有用ではないかと考えられる.

特別寄稿
  • 渥美 茂明, 笠原 恵, 市石 博, 伊藤 政夫, 片山 豪, 木村 進, 繁戸 克彦, 庄島 圭介, 白石 直樹, 武村 政春, 西野 秀 ...
    2018 年 60 巻 1 号 p. 8-22
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/11
    ジャーナル フリー

    平成21年3月に改訂された高等学校学習指導要領で設けられた科目「生物基礎」と「生物」では,科目の大枠を単元構成で,取り上げるべき内容は最低限の例示で示された(文部科学省 2009).その結果,教科書間にページ数や内容の差が生じ,教育現場に混乱をもたらした.日本生物教育学会が設置した生物教育用語検討委員会を引き継ぎ,2015年4月に日本学術振興会の科学研究費による「新学習指導要領に対応した生物教育用語の選定と標準化に関する研究」が組織され,本研究を行った.

    各社の教科書から,太字で表示された語句,索引語,見出し語,および明らかに生物の用語と見なせる語を用語として抽出した.教科書の単元ごとに用語が出現する代表的な1文,ないし1文節とともに出現ページと出現場所(本文か囲み記事か脚注かなど)の別をデータベースに記録した.用語の使用状況をデータベースにもとづいて分析するとともに,単元ごとの「用語」一覧にもとづいて「用語」の重要度を評価した.

    生物基礎では1226語(延べ1360語)を収集した.「生物」では1957語(延べ2643語)の「用語」を収集した.「生物基礎」でも「生物」でも1つの単元にしか出現しない「用語」が大半を占めていた.1つの単元で1社の教科書にのみ出現する「用語」も存在し,特に第一学習社の「生物基礎」(初版)では827語中144語が同じ単元で他社の教科書に出現しない「用語」であった.「用語」の重要度は,評価者の属性による差違が際立った.「生物基礎」と「生物」のいずれにおいても,大学教員が多くの「用語」に高校教員よりも高い評価を与える傾向が見られた.特に,「生物」の5つの単元(窒素代謝,バイオテクノロジー,減数分裂と受精,遺伝子と染色体,動物の発生)では大学教員が高校教員よりも高い評価を与える用語が存在した一方,その逆となった「用語」が存在しなかった.これは生物教育用語を選定しようとするとき,選定者の属性によって結果が異なることを示している.さらに,「用語」の表記に多くのゆらぎが見つかった.それらは漢字制限に起因するゆらぎ,略語や同義語,あるいは,視点の違いを反映した表記のゆらぎであった.表記のゆらぎを解消するための「用語」の一覧を作成し提案した.

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