現行の高等学校学習指導要領では,遺伝分野の扱いが,それまでのメンデル遺伝を中心とした学習内容から,遺伝子とその働きを中心とした学習内容となった.しかしながら,生物の多様性などを理解するためには,遺伝子の「独立」「連鎖」「組換え」とメンデル遺伝とを関連付けて考える,メンデル遺伝についての体系的な理解が不可欠である.そこで,減数分裂,受精,染色体等について学ぶ,高校「生物」の生殖に関する項目で,キイロショウジョウバエの遺伝学で用いられている研究手法と遺伝子型の表記法を取り上げながら,3時間の授業で,「メンデル遺伝の体系的な理解」と「独立・連鎖・組換えの学習の定着」につなげる教材を開発し,その授業実践をおこなった.授業を実践した結果,実際の実験を想定させながら,課題解決型の課題について考えさせたことにより,生徒に興味関心をもってとりくませることができた.また,遺伝学の表記法を用いることで,変異についての理解を深める効果があることもわかった.
学習指導要領の改訂により,理科では観察・実験や自然体験,科学的な体験を一層充実させ,実感を伴った理解を図ることが重視されている.中学校では,第3学年「自然と人間」の単元において食物連鎖が扱われている.しかし,食物連鎖に関する学習においては,直接体験できる観察・実験などが少なく,教科書での取り扱いでも写真や模式図などで学習することが中心となっている.動物園のフクロウのペリットは,教材としての欠点はあるものの,解剖を通して捕食された小動物の骨格や毛などを取り出すことができ,また複数の動物の骨を採取することが可能である.そこで,本研究では動物園のペリットの利点を生かし,中学校第3学年「自然と人間」において学習する「生物の数量的な関係」の学習と関連させて授業を行い,教材の有効性について検討した.授業実践の結果から,ペリットの解剖を通して「食う食われるの関係」だけでなく,「生物の数量的な関係」についても体験を伴って理解できることが分かった.また,ペリットは生徒が実際にフクロウの食べていたものを調べることができるため,生徒にとって興味深い活動であり,25分あれば骨の同定・配置まで行うことができるために1時限の授業の中で十分に活用できる.さらに,動物園のペリットはフクロウのエサの実態が把握できるため,フクロウの「食性」を特定することに時間をかけることなく,生物の数量的な関係について考える時間を授業の中で設けることが可能であり,教師による解剖中の支援も行いやすくなると思われる.このような,動物園の提供物を学校で活用した本実践は,動物園との教育連携を進める新たな方法としても提案できる.