ナルメフェンはアルコール使用障害患者の飲酒量低減を目的として使用される。本研究ではアルコール専門外来特有の体制を有さず,総合病院肝臓内科における多職種介入を行った条件での服用状況に応じたナルメフェンの有効性および安全性を評価した。解析対象は17例であり,処方後中断群が4例,頓服服用群が9例および定時服用群が4例であった。有効性はナルメフェンの投与前後におけるAlcohol Use Disorders Identification Test(AUDIT)および1週間あたりの飲酒日数にて評価した。その結果,AUDITおよび1週間あたりの飲酒日数はいずれの群でも一部の患者で減少する傾向にあった。副作用は3例に認められ,中断に至る副作用はわずか1例であった。本研究は総合病院肝臓内科におけるナルメフェンの使用状況を検討したものである。今後さらなる研究の実施により,ナルメフェンの有効性および安全性が明らかになることが期待される。
長期の疼痛経験は患者の生活の質(quality of life:QOL)を低下させるため,心理社会的支援が必要である。今回,痛みの改善に固執した生活行動の蔓延により充足感が低下した症例に対し,痛みへの対処行動による悪循環を見直し,目標志向行動へと代替していった認知行動療法の事例を報告する。症例は面接前半で自身の疼痛対処行動が将来の目標を阻害し,抑うつ気分を増大させていることに気づき,後半で徐々に痛みにとらわれない行動を計画的に実施した。引っ越しにより十分な再発予防が実施できておらず長期的効果は不明であるものの,快感情や達成感を得る機会が治療期間内に増加し,抑うつ症状やQOLの改善が確認された。疼痛は多相的に体験・理解されるため,各科によって治療標的が異なる場合がある。本症例は痛みではなく疼痛行動の減少に焦点を当てたアプローチの一例であり,集学的理解の促進が期待される。