総合病院精神医学
Online ISSN : 2186-4810
Print ISSN : 0915-5872
ISSN-L : 0915-5872
36 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:ECT増強療法-エキスパートコンセンサスに向けて
総説
  • 稲田 健
    原稿種別: 総説
    2024 年36 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    日本医療機能評価機構EBM医療情報部:Mindsは診療ガイドラインを「健康に関する重要な課題について,医療利用者と提供者の意思決定を支援するために,システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し,益と害のバランスを勘案して,最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義し,臨床疑問の設定から系統的レビュー,エビデンス総体の統合,益と害の評価,推奨文の作成という一連のガイドライン作成方法を提示している。系統的レビューにより質の高いエビデンスが得られる臨床疑問に対しては,極めて有用な方法であるが,質の高いエビデンスを得ることが難しい臨床疑問に対しては適用しにくい面もある。代替となる方法としては,エキスパートコンセンサスもしくはコンセンサスステイトメントをまとめる方法,ナラティブなレビューを記載する方法などがある。いずれの手法を用いるにしても,ガイドラインの作成においては作成の目的,作成メンバー,作成方法,公表方法などを定めておく必要がある。

総説
  • 安田 和幸, 川島 啓嗣
    原稿種別: 総説
    2024 年36 巻1 号 p. 7-11
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(ECT)における発作誘発困難症例を解決する対策について,治療器の刺激パラメータ調整を中心にエビデンスを整理する。右片側性ECTの電極配置は従来の両側性ECTに比べて発作は起こりやすく,認知機能障害を低減する点からも最も推奨される工夫であるといえる。さらにパルス幅を短縮した超短パルス波による右片側性ECTやパルス幅を延長したECTも発作誘発困難の解決につながる可能性が高い。電極配置やパルス幅調整に比べるとエビデンスレベルは劣るものの,周波数を低めに設定することで発作誘発困難を解決する報告もみられる。発作誘発についてのエビデンス集積は不十分であり,現時点では既存の研究結果を基に症例ごとに様々な工夫について検討しなければならない。

総説
  • 嶽北 佳輝
    原稿種別: 総説
    2024 年36 巻1 号 p. 12-19
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(electroconvulsive therapy,ECT)の有効性に影響を与えるファクターのうち,最も大切なものとして広く認知されているのは全般性けいれん発作を出現させることである。しかし,臨床においてはECT機器が与え得る電気量の上限に達しても全般化されたけいれん発作が誘発されない状態に至る患者,いわゆる発作誘発困難例が存在する。本稿ではこのような症例において,麻酔関連の視点から対処を紹介したい。主な対応としては,導入麻酔薬等の工夫と麻酔手技による対応に分けられる。前者としてはpropofol,barbiturate系麻酔薬,ketamine,sevoflurane,remifentanilやdexmedetomidineの併用,flumazenilの使用といった各麻酔関連薬に関する対応の情報,後者としては通電タイミングの調整や過換気の施行について紹介したい。

総説
  • 諏訪 太朗, 安田 和幸, 飯田 仁志, 内沼 虹衣菜, 青木 宣篤, 川島 啓嗣, 嶽北 佳輝
    原稿種別: 総説
    2024 年36 巻1 号 p. 20-25
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    電気けいれん療法(ECT)において,本邦の治療器における最大刺激(504mC)を行っても治療的な発作が誘発できない例への対応法について様々な技法が提案されているが,各技法の選択基準や序列についての指針は存在しない。日本総合病院精神医学会ではECT委員会のメンバーを中心として発作誘発困難例への対応指針の作成を進めており,本稿ではその予備的検討として各対応法の文献レビューを行った。各対応法を1)薬剤の調整に関するもの,2)麻酔薬に関連するもの,3)その他の技法の3つに分け,有用性と具体的な方法について論じる。

一般投稿
原著
  • 小武 和正, 細川 智成, 髙橋 真由美, 大原 秋子, 桑木 健志, 池田 房雄, 北村 直也
    原稿種別: 原著
    2024 年36 巻1 号 p. 26-34
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    ナルメフェンはアルコール使用障害患者の飲酒量低減を目的として使用される。本研究ではアルコール専門外来特有の体制を有さず,総合病院肝臓内科における多職種介入を行った条件での服用状況に応じたナルメフェンの有効性および安全性を評価した。解析対象は17例であり,処方後中断群が4例,頓服服用群が9例および定時服用群が4例であった。有効性はナルメフェンの投与前後におけるAlcohol Use Disorders Identification Test(AUDIT)および1週間あたりの飲酒日数にて評価した。その結果,AUDITおよび1週間あたりの飲酒日数はいずれの群でも一部の患者で減少する傾向にあった。副作用は3例に認められ,中断に至る副作用はわずか1例であった。本研究は総合病院肝臓内科におけるナルメフェンの使用状況を検討したものである。今後さらなる研究の実施により,ナルメフェンの有効性および安全性が明らかになることが期待される。

症例
  • 横山 仁史, 吉野 敦雄
    原稿種別: 症例
    2024 年36 巻1 号 p. 35-42
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    長期の疼痛経験は患者の生活の質(quality of life:QOL)を低下させるため,心理社会的支援が必要である。今回,痛みの改善に固執した生活行動の蔓延により充足感が低下した症例に対し,痛みへの対処行動による悪循環を見直し,目標志向行動へと代替していった認知行動療法の事例を報告する。症例は面接前半で自身の疼痛対処行動が将来の目標を阻害し,抑うつ気分を増大させていることに気づき,後半で徐々に痛みにとらわれない行動を計画的に実施した。引っ越しにより十分な再発予防が実施できておらず長期的効果は不明であるものの,快感情や達成感を得る機会が治療期間内に増加し,抑うつ症状やQOLの改善が確認された。疼痛は多相的に体験・理解されるため,各科によって治療標的が異なる場合がある。本症例は痛みではなく疼痛行動の減少に焦点を当てたアプローチの一例であり,集学的理解の促進が期待される。

  • 佐藤 謙伍, 塩田 勝利, 岡田 剛史, 安田 学, 須田 史朗
    原稿種別: 症例
    2024 年36 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2024/01/15
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル フリー

    近年様々な器質的疾患,特に自己免疫性疾患において強迫性障害(obsessive compulsive disorder:OCD)が二次的に生じることが報告されている。今回,われわれは視神経炎と中枢神経炎を呈し,抗AQP4抗体が陽性で自己免疫性疾患である視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)と診断され,NMO再燃時にOCD症状が出現した症例を経験した。NMOが軽快してもOCD症状は持続したが,SSRIを使用したところOCD症状は軽快した。症例は以後NMOの増悪改善に関係なくOCD症状が出現,持続した。これらの結果からNMOに伴うOCDには,NMOの病勢と関係のない経過を呈し,SSRIなどの薬物療法が有効である症例が存在することが示唆された。器質的疾患,特にNMOを含む自己免疫性疾患にはOCDが合併する可能性があること,またその経過は自律的に経過する可能性があることがある。

feedback
Top