神経回路学の目的は脳の基本原理を工学実現し非フォン・ノイマン型コンピュータを創出することである. この為の脳の情報処理の基本原理を解明することが重要である. 脳は学習によって知識情報処理の神経回路を自己形成すると同時に, 価値基準の神経回路を自己形成しその為の記憶を蓄える. 脳の特徴は, 学習によって情報処理の神経回路を自己組織化することと, 外部情報を知識情報と価値情報に分けて分析・判断する為の神経回路を独立にもち, それぞれが互いにその分析・判断を通して影響し合う構造になっていること, にある. 脳は学習によって記憶を形成し, この様にして形成した連想記憶をもとに情報処理を行う. 脳はこの様な膨大な記憶ベースアーキテクチャの非フォン・ノイマン型コンピュータである
1,2). また, 価値情報を情報処理に積極的に用いているという意味で非シャノン型コンピュータである
1,2). さらに, 価値情報によって神経回路の自己組織化が調節されることで, 脳の内部世界が形成され個性が形作られる. ここでは, 脳の情報処理の特徴を概説し, 新しい脳型の知識情報処理システム(コンピュータ)開発を今回と次回の二回にわたって提言する.
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