日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
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25 巻, 2 号
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巻頭言
解説
  • 安部 健太郎
    2018 年 25 巻 2 号 p. 16-22
    発行日: 2018/06/05
    公開日: 2019/02/07
    ジャーナル フリー

    無限のバリエーションをもつ音声シグナルを用いて他個体とコミュニケーションする「ことば」の能力は,しばしばヒトが特異的に保持する能力と言われる.一方で,「ことば」を操るのがヒトのみであるならば,脳が特定のシーケンスの音声を生成,認識する細胞レベルでの神経メカニズムを明らかにすることは,実験手段の制約から困難なものとならざるを得ない.鳥類の一群,鳴禽類は,「さえずり」と呼ばれる音声シーケンスを用いて他個体とコミュニケーションをとるが,その特性や獲得過程,神経機構には,ヒトの「ことば」のそれと類似した部分が多い.ヒトも鳴禽類も,脳内の情報処理のユニットである神経細胞自体には大差はないので,鳴禽類の「さえずり」はヒトの「ことば」に関わる神経機構を解析する動物モデルとして着目されている.本稿では,鳴禽類のコミュニケーションシグナルである「さえずり」を生成・認識する神経機構について,最近の知見の紹介とともに解説する.

  • 鮫島 和行
    2018 年 25 巻 2 号 p. 23-37
    発行日: 2018/06/05
    公開日: 2019/02/07
    ジャーナル フリー

    2018年5月8日.山岸俊男先生が逝去された.3年前の2015年,山岸先生に無理を言って,神経科学の理論と実験の統合を目指す若手研究者のために講義をして欲しいと,当時玉川大学の先生のお部屋でお願いをした.山岸先生にはASCONE最終日に3時間以上にわたって講義をしていただいた.この解説記事は,先生のご研究やお考えを少しでも広く,長く伝えるために,私が書き起こしたASCONE講義録である.全て話し言葉でされた講義のため,一部勝手ながら私の解釈で要約した部分があり,不正確なところも見受けられるかもしれないが,ご容赦いただきたい.下記は山岸先生からASCONEの講義概要としていただいた要約である.

    『社会科学では古くから,社会秩序の説明に2つの原理が用いられてきた.ひとつは制度による説明であり,もうひとつは規範の内面化による説明である.ヒトの向社会性の説明原理を向社会的選好の進化基盤に求める現在の行動経済学の理論展開は,規範の内面化のアイディアを,内面化を促進する心的メカニズムの進化によって補強する動きとして捉えることができる.こうした近年の研究の中で軽視されてきたのは,社会科学の根本問題である制度構築の観点であり,社会的選好と制度との共進化(社会的ニッチ構築)の観点である.本講義では,(規範の内面化が完璧になされている)イワンの馬鹿を基盤とする社会秩序から,合理的なホモエコノミカスを基盤とする社会秩序への移行が可能かどうかを考えるために,私たちは何を研究すべきかについて,出席者の皆さんと一緒に議論したい.』

報告
会報
編集後記
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