本稿では,コンピュータビジョンの業界において既にデファクトスタンダードとなりつつあるディープコンボリューションネット(Deep Convolutional Neural Network:DCNN)の基本的な構造と学習様式を解説し,医療応用への一例を述べる.DCNNは,ネットワークアーキテクチャをFukushimaのネオコグニトロン(Fukushima, K., Biological Cybernetics, Vol.36, No.4, pp.193-202, 1980)として,学習手法を誤差逆伝搬(Error Back Propagation:BP)法を適用した手法であり,比較的な古典的なアーキテクチャと学習手法で構築されている.これらの手法は1980年代から存在するが,もっとも変革が大きい部分は,学習データセットの質と量の変化である.DCNNに代表されるディープラーニングにおいて重要なのは,システムの内部表現の自由度と学習サンプルとの兼ね合いであり,ビッグデータ時代に突入した現在において単純な写真等のデータを確保するのは比較的楽にできるようになってきている.その一方で,医療分野などの計測にコストが掛かるような領域では,学習サンプルを如何に確保するかは重要な問題になると考えられる.我々は,このような少数データセットへの学習方式として転移型の学習様式を用いて,DCNNを構築することを提案し,一定の成果を上げることに成功した.
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