日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
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30 巻, 4 号
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巻頭言
解説
  • 関野 正樹
    2023 年 30 巻 4 号 p. 159-167
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    本稿では,生体磁気計測のための次世代型量子センサとして期待されているダイヤモンド窒素—空孔中心について,計測技術の現状と今後の応用可能性について述べる.心臓の電気活動に由来する微弱な磁場のマッピングから心臓内の電流分布を推定して機能的評価を行う心磁図や,同様に脳の機能的評価を行う脳磁図は,基礎研究から臨床の検査まで幅広い応用を有している.これらを中心とする超高感度の生体磁気計測には,超伝導量子干渉計が長く用いられてきたが,冷媒が必要なため普及に課題があった.近年,冷媒を必要としない超高感度磁気センサが急速に発達しており,中でもダイヤモンド窒素—空孔中心は,究極的には原子レベルの高分解能を有し,固体であることから集積化に向いており,ダイナミックレンジが高くリアルワールドでの応用に適するなどの特徴から,注目を集めている.生体計測の具体的事例として,動物の心磁図の計測や,リンパ節へ取り込まれた微量の磁性ナノ粒子の検出などが報告されている.機器のコンパクト性を活かして,今後は自動車のドライバーの脳機能計測や遠隔医療など,応用の開拓が期待されている.

  • 湯川 博
    2023 年 30 巻 4 号 p. 168-178
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    バイオイメージング技術は,これまで基礎生物学研究から臨床応用まで広く用いられてきた.とりわけ,2023年度のノーベル化学賞の対象となった量子ドット(Quantum Dots: QDs),及び窒素—空孔中心(Nitrogen-Vacancy Center: NVC)を有する蛍光性ナノダイヤモンド(Fluorescent Nanodiamonds: FNDs)などの「ナノ量子センサー」は,高い安定性とナノメートル単位の微小サイズを特徴とし,生体内での輸送や長期観察など基礎生物学から臨床応用まで幅広い応用が期待される.本稿では,ナノ量子センサーによるイメージング技術と医学応用の将来展望について,最新の研究成果を交えて解説する.

  • 高草木 洋一
    2023 年 30 巻 4 号 p. 179-188
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    本稿では,核磁気共鳴(NMR/MRI)の感度の低さを克服するための技術として注目されている動的核偏極法について概説し,これによって近年盛んになりつつある超高感度代謝イメージングとその応用例について紹介する.MRIは主に生体の水分子の水素核スピンを対象として断層画像を取得可能とする現代医療では不可欠な医用画像診断技術であるが,根本的な弱点として「感度の低さ」が挙げられる.高感度化信号を長く保つことのできる部位を他核種で標識した分子プローブを創製し,磁場環境下における動的核偏極によって「超偏極」状態にすると,1万倍以上に増大された超高感度NMR信号を足がかりとして,生体内へ投与された分子プローブの代謝反応を直接画像上へ描出することが可能となる.電子スピンや核スピンの制御によって実現する超高感度代謝イメージングやその生物医学応用について触れながら,本技術によって拓かれる最先端の生命科学や生物医学研究と将来展望について述べる.

  • 坂本 雅行
    2023 年 30 巻 4 号 p. 189-196
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    高次脳機能の仕組みはとても複雑かつ難解であり,解明が期待される現代科学の究極の課題の1つである.高次脳機能はニューロンが構成する複雑なネットワークの上に成り立っているため,その働きを明らかにするためには,基本素子となる個々のニューロンの活動や情報処理機構について理解することが重要である.近年,ニューロンの電気的活動を光学シグナルに変換する活動イメージング技術が急速な発展を遂げている.活動イメージングのための高感度な蛍光プローブの開発により,生体脳(in vivo)においても1細胞レベルの解像度を保ったまま数百~数万個のニューロンの電気的活動を同時に記録することが可能となった.さらには,樹状突起スパインなどのニューロンの微小構造においてもその電気的活動のイメージングが生体脳においても可能である.本稿では,神経活動を可視化するための蛍光プローブ(カルシウムセンサーならびに膜電位センサー)の特徴について紹介する.

  • 島添 健次, 上ノ町 水紀
    2023 年 30 巻 4 号 p. 197-206
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

    核医学イメージング手法であるPET(Positron Emission Tomography)とSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)は2022年度で各々年間70万件以上の撮像が行われ,日常の診療における悪性腫瘍,アルツハイマー病等の疾患の診断において重要な役割を果たしている.しかしその撮像原理は長らく変わっていない.本稿では現在急速に研究が進んでいる最近の核医学イメージング技術の進展,著者らが研究を行ってきた量子もつれを利用した量子もつれPET(Quantum Entanglement PET, QEPET),もつれ光子対を用いたイメージング,複数分子の同時撮像技術などの原理と可能性について概観し,今後の核医学の果たしうる役割について議論を行う.

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