日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
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27 巻, 2 号
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巻頭言
解説
  • 田中 康代, 田中 康裕, 松崎 政紀
    2020 年 27 巻 2 号 p. 35-43
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,2光子イメージングを用いた運動学習における脳活動のダイナミクス研究について述べる.運動学習の際,大脳皮質運動野や大脳基底核,小脳など多くの脳領域で様々な神経活動の変化が起こることが知られている.近年,2光子顕微鏡技術の発展により細胞体だけではなく軸索のカルシウムイメージングが可能となり,離れた脳領域からの入力を動物が課題を行っている最中に捉えられるようになった.最近筆者らのグループは運動学習で形成される視床から大脳皮質へのシグナルについてそのダイナミクスを明らかにした.さらに,そのダイナミクス形成には大脳基底核や小脳の活動が必須であることも明らかにした.近年のこの分野の発展と合わせて運動学習の新しい研究アプローチについて考察する.

  • 丸岡 久人
    2020 年 27 巻 2 号 p. 44-54
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    大脳皮質の神経回路構造は未だ不明な点が多い.近年,著者らは大脳皮質出力層である第5層の神経回路が,少数のニューロンで形成される機能単位回路の精密な繰り返し構造に組織化されていることを示唆する知見を報告した.本稿では,まず大脳皮質における機能単位回路探索の歴史を概説する.次に4次元in vivoカルシウムイメージング法などを用いて初めて明らかになった大脳皮質の普遍的な機能単位回路について著者らの最近の研究成果を解説する.

  • 太田 桂輔, 大出 孝博, 村山 正宜
    2020 年 27 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    現在の神経科学において2光子励起顕微鏡によるカルシウムイメージングは,生きた動物,特にマウスの大脳皮質の神経活動を記録する標準的な手法の1つとなっている.これは電気生理学的記録手法にはない複数の利点をカルシウムイメージングが持つためである.これまでの2光子励起顕微鏡の視野は0.5mm × 0.5mm程度であり,マウスのような小さい脳においても離れた脳領域の神経活動を同時に記録されていなかった.脳は複数の領域が協働して情報を処理するシステムであることを考えれば,数mm以上の広視野観察が求められるであろう.近年,この問題を解決すべく,特注の巨大な対物レンズを実装した広視野2光子励起顕微鏡が報告されている.本稿では,まずカルシウムイメージングと2光子励起顕微鏡について簡単に説明した後に,広視野2光子励起顕微鏡について説明する.具体的に,1. 単一神経細胞解像度をもつ広視野2光子励起顕微鏡の実現における巨大な対物レンズの必要性,2. 光学的不変量に基づいた広視野2光子励起顕微鏡の設計,3. 近年に発表された広視野2光子励起顕微鏡の特徴について述べる.

  • 酒井 誠一郎
    2020 年 27 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    広域カルシウムイメージング法は,経頭蓋で大脳新皮質広域の神経活動をイメージングする実験手法であり,運動や感覚入力に関連した大脳新皮質の神経活動計測や皮質領野間の活動連関の研究などに有用である.広域カルシウムイメージングのためのマウス手術は簡単であり,電極挿入や二光子イメージング法と比較して侵襲性が低いので,数か月に亘る安定した慢性イメージングを容易に行うことができる.本稿では,大脳新皮質の広域カルシウムイメージングに使用する遺伝子組換えマウスと実験機器,手術とイメージングの方法について解説する.

  • 大川 宜昭, 竹川 高志, 野本 真順, 井ノ口 馨
    2020 年 27 巻 2 号 p. 74-86
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    これまで,海馬やその他の脳深部からの多数の細胞の活動様式の観察は,複数の電極を用いたマルチニューロン記録法による電気生理学的な検出が主であった.しかし近年,蛍光タンパク質の改変や光学技術の進歩によって神経活動の蛍光イメージング法が開発されたことで,筆者のように生理学に縁遠かった分子・細胞生物学をベースとした研究者も神経細胞活動を対象とした研究に着手することができるようになってきた.本稿では,脳深部の神経細胞活動を観察するin vivo Ca2+イメージング法のための,動物の手術,イメージングで得た画像データの処理,そして,そこからの細胞の同定とその活動の数値データの取得までを解説したいと思う.

会報
編集後記
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