日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
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26 巻, 1-2 号
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巻頭言
解説
  • 柴田 和久
    2019 年 26 巻 1-2 号 p. 3-9
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    経験にもとづいた柔軟な学習を可能にするために,脳は十分な可塑性を持ちつつ,過去に獲得した重要な情報処理を忘却から守るための安定性も担保しなければならない.われわれの研究グループは,この可塑性と安定性の制御に関わる脳基盤の解明を目指し,知覚学習の安定性と脳の興奮・抑制比率の関係に着目した研究を行ってきた.本稿では,これまでの一連の研究から得られた知見について概説する.

  • 古屋 晋一
    2019 年 26 巻 1-2 号 p. 10-14
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    音楽演奏に見られる巧緻な運動は,幼少期からの訓練によって獲得される技能である.しかし,膨大な訓練を経てもなお,演奏技能の個人差は大きく,さらには訓練の過程で局所性ジストニア等の脳神経疾患を発症し,技能を喪失することも少なくない.そのため,熟達支援と故障予防の両方の観点から,訓練の量よりも質,すなわち適切な訓練とその機序の理解が求められる.本稿は,脳神経系が筋骨格系の持つ多数の自由度(筋や関節)を協調して制御する仕組みに着眼を置き,このような身体運動の協調構造が演奏技能の洗練や喪失に伴い,どのように変化するのか,さらには協調構造の変容が演奏技能とどのように関わっているかについて,神経生理学実験と数理手法を組み合わせた近年の研究成果を中心に概説する.

  • 赤石 れい
    2019 年 26 巻 1-2 号 p. 15-24
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    人間らしい情報処理とは何であろうか.昨今の機械学習やAI技術の発展によりこのような問いはその重要性を増している.人間にしかできず人工の知性にはまだ手が届きそうに無い計算の原理というものはあるのであろうか.このような重要な問いに対して簡単な答えは無さそうには見える.このような問いに答えうる分野として脳科学がある.たしかに神経システムの研究においても機械学習のアイデアが非常に大きな影響を与えてきた歴史がある.しかし最近の脳科学の研究ではこのような人工的なシステムからの枠組みから乖離するような報告が相次いでなされるようになって来ている.この論文では筆者自身が関わって来た意思決定におけるそのような乖離について説明したい.これらの現象は知覚意思決定の経路・経験依存的な意思決定のバイアスや採餌理論(foraging theory)を元にした意思決定の課題中に現れる.これらの研究の特徴は「1試行」のような時間的に単一の単位が計算の基準にはならず,複数の試行や時間にまたがる行動や情報処理の構造が見られることである.今回の総論ではこのような研究をまとめ,脳の情報処理の仕組みがマルチスケール的な情報処理の原理を持っていることについて議論したい.このような視点は人間の知性の本質に迫るものであり,また新たな人工的なシステムの開発に寄与することが期待される.

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