従来の神経細胞のモデリング研究は電気生理学的アプローチであった.我々は分子生物学的なシグナル伝達のシステムを解析している.本稿では,バイオインフォマティクスやシグナル伝達のモデリング研究の動向について概説する.また,近年発表した海馬の長期増強(Long term potentiation,LTP)のモデル論文を紹介し,モデルで提唱された仮説の実証実験に関する近況を報告する.
Miguel A. Nicolelis博士はブラジルのサンパウロ大学で1984年にMD,1988年にPh.Dを取得し,フィラデルフィア大学でポスドクを行った後, 1994年にデューク大学に移り,現在,神経生物学,心理,脳科学,医用生体工学の教授 (Professor of Neurobiology, Psychological and Brain Sciences, and Biomedical Engineering)の職についている.