日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
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28 巻, 4 号
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巻頭言
解説
  • 池内 与志穂
    2021 年 28 巻 4 号 p. 151-161
    発行日: 2021/12/05
    公開日: 2022/01/05
    ジャーナル フリー

    脳を作るという夢に向かって,長年にわたって神経の培養技術が開発されてきた.初代培養に始まり,幹細胞分化などによって二次元上で神経回路を構築する技術が発展した.三次元技術の発展に加え,三次元幹細胞培養から自発的に生み出される脳の様な構造を持った組織(脳オルガノイド)の登場により,三次元神経回路を構築する研究が飛躍的に発展した.生物学と工学が交わって神経回路構築研究が発展している様子を紹介し,神経回路の機能獲得に向けた今後の研究の展望について議論する.

  • 光野 秀文, 祐川 侑司, 櫻井 健志, 神崎 亮平
    2021 年 28 巻 4 号 p. 162-171
    発行日: 2021/12/05
    公開日: 2022/01/05
    ジャーナル フリー

    昆虫は環境中の多種多様な化学情報(匂い情報)を,触角の嗅覚受容体を使って検出し,脳内で情報処理することで環境適応行動を示す.およそ20年前に初めてキイロショウジョウバエの嗅覚受容体が発見されて以降,現在までにさまざまな昆虫種で嗅覚受容体が同定され嗅覚機能の解明が進み,匂いに対する応答特性から,応答特性の情報処理機構,環境適応行動の発現に至るしくみが明らかにされつつある.また,所望の昆虫種での遺伝子組換え,異生物種培養細胞での嗅覚受容体機能の再構築など,対象遺伝子を人工的に操作する遺伝子工学技術が進展してきた.現在では,昆虫の嗅覚機能の知見と遺伝子工学技術を活用して昆虫の嗅覚のしくみを部分的に再現することにより,嗅覚受容神経の嗅覚受容体の遺伝子を組換えることで対象の匂い物質(対象臭)を探索し定位できる「センサ昆虫」,対象臭を蛍光変化として検知できる「センサ細胞」の開発が可能となってきた.さらに,複数種類のセンサ細胞をアレイ化することで,生物のように応答パターンで匂い混合物の識別や濃度を定量できる「匂いセンサ技術」の開発も可能となってきた.このように,匂いセンシング技術の一つとして昆虫の嗅覚の有用性が実証され,一部の技術では社会実装に向けた研究も活発に進められている状況にある.

  • 五十嵐 潤
    2021 年 28 巻 4 号 p. 172-182
    発行日: 2021/12/05
    公開日: 2022/01/05
    ジャーナル フリー

    脳シミュレーションで「脳を創れるのか」の検討を行う.はじめに,脳シミュレーションの再現性の限界,記述レベル,並列計算の性質を確認し,計算機と脳計測の動向から,全脳シミュレーションの予測を行う.

  • 上村 卓也
    2021 年 28 巻 4 号 p. 183-191
    発行日: 2021/12/05
    公開日: 2022/01/05
    ジャーナル フリー

    脳を創れるかどうかを考える前に,まずは身近な例としてケーキを創れるかどうかを考えてみる.創るべきケーキの要素を考え,それらをケーキの「構造」と「機能」の大きく2つに分類してみる.すると,ケーキを創るための方法も,ケーキの構造を再現してから機能を評価する方法と,ケーキの機能を再現してから構造を評価する方法の,大きく2つに分類できることがわかる.次に,本題である脳を創ることについて考える.ケーキを創るときと同じ議論を適用し,脳の構造を再現してから機能を評価する方法と,脳の機能を再現してから構造を評価する方法の,2通りの方法を考える.脳を計算機上に創るための具体的な方法を紹介し,最後に,脳の機能を再現してから構造を評価する方法の意義や妥当性などについて述べる.レストラン級のケーキを家で創ることが簡単ではないが可能であるように,脳を創ることも簡単ではないが,本稿で紹介した2通りの方法がお互いにうまく補完しあっていけば,いずれは可能になるだろう.

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