日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
Print ISSN : 1340-766X
ISSN-L : 1340-766X
28 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
解説
  • 木村 梨絵
    2021 年 28 巻 3 号 p. 117-126
    発行日: 2021/09/05
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    脳は,入力された知覚情報を処理して行動出力する情報処理システムであり,柔軟性の特徴を有する.脳は,外界からの入力情報や覚醒度などの内部状態が多少変動しても,これまで通りの行動出力をすることができ,また,状況に応じて新たな入力-出力関係を学習することもできる.これらの適応には,神経細胞がシナプスを介して結びつき複雑に組み合わさって多細胞の神経回路となり,この神経回路が多脳領野間で結びついて作り上げられる多次元にわたる脳システムにおいて,柔軟性をもつことが大きく貢献すると考えられる.本稿では,行動に関連した神経活動を多次元で評価し,脳システムにおける情報処理の柔軟性を考察する.

  • 植松 朗
    2021 年 28 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 2021/09/05
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    恐怖記憶の形成やその消去においては扁桃体や前頭前野が重要であることが知られている.これらの神経核においてはアドレナリン受容体やドーパミン受容体が恐怖や消去の記憶に重要であることが示されているものの,脳のノルアドレナリン神経やドーパミン神経がどのようにして恐怖記憶や消去において時空間的に機能しているかは解明されていなかった.そこで,本稿では最近の研究により明らかになってきたノルアドレナリン神経とドーパミン神経が恐怖情動を制御する機構に関する知見を紹介する.

  • 濱口 航介
    2021 年 28 巻 3 号 p. 136-143
    発行日: 2021/09/05
    公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    言語や歌は,音声学習と精密な発声制御を必要とする複雑な知能行動である.キンカチョウやジュウシマツは,同種の個体の歌を手本として歌学習を行い,求愛や縄張り行動に用いるため,音声学習の神経基盤を理解する上で欠かせない実験動物である.歌を学習し,正確にさえずる神経回路の仕組みを調べることで,世代を超えて情報・文化を伝達する脳の仕組みが理解されると期待できる.本解説では,小鳥の歌に関わる基本的な神経回路を概説し,歌のタイミング制御やシークエンス制御が,どのような神経回路同士の相互作用を通じて行われているのか,解説する.その際,細胞内膜電位記録が果たした役割について述べる.一般に用いられる細胞外記録では神経細胞の出力である活動電位を計測するが,細胞内膜電位記録は活動電位に加えて,入力であるシナプス電位を計測できる.特にin vivoで記録されたシナプス電位は,学習によって形成された前シナプス神経細胞集団の活動を反映しており,自然な形で背後にあるネットワーク構造の情報を得ることができる.さらに神経回路網のシミュレーションと実際の神経活動記録の結果を照らし合わせることで,可能なネットワーク構造について,より踏み込んだ考察が可能である.筆者の神経回路網の理論と実験の統合を目指した試みと併せて紹介する.

会報
編集後記
feedback
Top