脳は情報処理の仕方(アルゴリズム)を自動獲得するだけでなく, その為の情報も自動選択するシステムである. 脳が情報を選択し, その情報の処理のアルゴリズムを獲得する為のアルゴリズム(脳の情報選択とその情報処理アルゴリズムの獲得の為のアルゴリズム)を明らかにすることは, 脳が自分の脳を自身で創ることを明らかにすることである. このことは, われわれが成長する為の要因を解明することでもあるので,「人とは何か」の理解に直結する. さらに, このことは, 脳と同じ原理で働く情報処理システム(ブレインウェイ・コンピュータ)の工学実現を可能にする. すなわち, ブレインウェイ・コンピュータ(脳型コンピュータ)は, 自身で情報を選択し, 選択した情報を処理する為のアルゴリズムを自身で獲得する. ブレインウェイ・コンピュータの工学実現は, 逆に脳の原理を検証することでもあり, またブレインウェイ・コンピュータは従来のプログラム稼働型コンピュータと極めて相補的である.
本稿は10回に亘るシリーズとして,「脳を創る」という立場から脳科学研究とこの科学研究によって得られた脳の原理に基づく人工脳としてのブレインウェイ・コンピュータの研究開発について総説する. 第1回は「脳とはどんなコンピュータか」について考える.
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