Generative Adversarial Network(GAN)は,ミニマックス最適化問題に基づき,生成器と識別器を交互に最適化することで,目標とする確率分布を学習する.本論文では,そのような最適化によって得られる識別器が,生成器が実現する確率分布を目標分布に近づけることができるのかという根本的な問題に取り組む.GANの定式化をSliced Wasserstein距離と関連付けることで,識別器が分布間の距離を適切に評価するための十分条件であるmetrizable条件を導出する.さらに,この理論的結果を基に,新しいGANの学習手法であるSlicing Adversarial Network(SAN)を提案する.識別器に簡単な変更を加えるだけで,既存のGANをSANに変換できるため,非常に汎用性の高い手法である.トイデータを用いた実験では,理論的結果の妥当性を確認し,また,画像生成タスクへの適用を通じて,GANに対するSANの優位性を確認する.本稿は,著者らの論文(Takida et al. (2024): SAN: Inducing metrizability of GAN with discriminative normalized linear layer, International Conference on Learning Representation (ICLR))を和訳し,わかりやすく解説したものである.
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