高レベル放射性廃棄物の地層処分システムにおける人工バリア中の核種移行評価を行うにあたっては、与えられた地下水条件に対して、人工バリア中の間隙水組成をまず明らかにする必要がある。また、核種移行評価の信頼性を向上させるためには、地下水条件に応じて多様な化学形態をとる核種のベントナイト中の移行機構を明らかにする必要がある。そのためには、核種のスペシエーションや固相の表面特性、空隙構造等を考慮した吸着機構や拡散機構に基づく現象解析モデルを作り、核種移行解析に必要なパラメータとしての分配係数や実効拡散係数を与えることが望まれる。本報告では、著者らの最近の研究に基づき、まず圧縮ベントナイト中の間隙水組成を予測するためのバッチ法によるベントナイト-水反応実験結果を紹介し、それに基づく既存イオン交換モデルの適用性について議論する。続いていくつかの元素のベントナイトに対するバッチ法による吸着実験結果、およびそれに基づくイオン交換や表面錯体モデルによる現象理解の現状を紹介し、その問題点について議論する。さらに、拡散現象の固有特性値への分解、いくつかの元素の圧縮ベントナイト中における拡散実験結果および解釈について、その現状を紹介する。最後に、バッチ吸着実験に基づく現象解析モデルの圧縮ベントナイトへの適用性に関して議論する。
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