原子力バックエンド研究
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ISSN-L : 1343-4446
15 巻, 2 号
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研究論文
  • 飯田 芳久, 木村 祐一郎, 山口 徹治, 上田 正人, 田中 忠夫, 中山 真一
    2009 年 15 巻 2 号 p. 57-67
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     放射性廃棄物の地層処分の安全評価において, 放射性核種の岩石への収着は重要な評価因子である. 深地層の還元的な環境におけるセレン (Se) の砂質泥岩への収着分配係数 (Kd) に対する, 硝酸塩 (NaNO3) および塩水 (NaCl) の影響をバッチ式収着試験で調べた. 試験は, 日本原子力学会が定めた, 「深地層処分のバリア材を対象とした測定の基本手順」に準じて行った. 深度 129-156 mから極力空気に触れさせないように工夫をして採取した砂質泥岩試料および地下水試料を用い, Seを還元的な溶液条件で安定な化学形 (HSe-) に調製したうえで試験液に添加し, 添加後も還元的な溶液条件 (Eh, pH) を維持した. 得られた log Kd (m3 kg-1) は, 塩濃度範囲 0.1~1.1 mol dm-3において -1.84~-1.44であり, Csと同程度であった.
  • 長尾 誠也, 関 陽児, 渡部 芳夫
    2009 年 15 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     ウラン鉱徴地の新第三紀堆積岩及び下位の花崗岩を対象としたボーリング孔において, マルチパッカー方式により地表から深さ45m間の11層から地下水を採取し, 分離・濃縮等の前処理なしに溶存有機物の蛍光特性を三次元蛍光分光光度法により調べた. その結果, フルボ酸に相当する蛍光ピークが検出され, 花崗岩地下水では相対蛍光強度が浅層部堆積岩地下水に比べて約2倍高い値であった. しかし, 堆積岩地下水フルボ酸様有機物の蛍光ピークの位置は, 励起波長で花崗岩地下水フルボ酸様有機物に比べて約10nm高波長側に検出された. このことは, 堆積岩地下水とは異なる起源の地下水フルボ酸様有機物が花崗岩地下水へ移行してきたか, あるいは移行中に有機物の構造等が変化した可能性が考えられる. また, 蛍光特性から得られたフルボ酸様有機物の濃度とウラン濃度とに正の相関関係が存在し, フルボ酸様有機物とウランとの錯形成の可能性に関する知見が示唆された.
  • 長尾 誠也, 岩月 輝希, 濱 克宏
    2009 年 15 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     地下環境における放射性核種の移行挙動に及ぼす腐植物質の影響を評価するためには, 地下水中の腐植物質の特性を把握する必要がある. 本研究では, 岐阜県東濃地域の堆積岩層 (地表から深さ約 160 m) の地下水 3,000 lおよび花崗岩層 (深さ約 180 m) の地下水 24,500 lからDEAE-セルロース樹脂を用いて分離精製した腐植物質の特性を調べた. 東濃地域の地下水フミン酸は窒素含量が約 8 %と比較的高く, 分子サイズ 10,000 Da以上の割合が 75 %, E4/E6比が 6.1~7.5 と腐植化が進行していることを示している. また, 堆積岩中の地下水フミン酸の方が花崗岩中の地下水フミン酸に比べて分子サイズ 100,000 Da以上の割合が 20 %ほど高く, より高分子の有機物で構成されていた. この結果は, 東濃地域においては, 堆積岩層から花崗岩層への地下水の移行の間に腐植物質の高分子画分が堆積岩に吸着し, 地下水腐植物質の違いとして反映された可能性が考えられる. 一方, 堆積岩および花崗岩中の地下水フルボ酸は, 主に分子サイズ 5,000 Da以下の有機物 (60 %~68 %) により構成され, 互いにほぼ同様な特徴を示した. これは, 両岩層地下水フルボ酸は同じ起源であり, 移行経路における吸着等の影響が小さいためだと考えられる.
  • 鈴木 俊一, 青木 広臣, 川上 博人, 畑 明仁, 本島 貴之
    2009 年 15 巻 2 号 p. 87-98
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿では, 多重バリアシステムを有する放射性廃棄物処分施設の安全性能評価手法について提案する. 本稿で提案する手法は, 我が国において既存の放射性廃棄物処分施設に対しておこなわれた安全評価で用いられている移行率モデルの概念に基づいている. 提案する安全評価手法の有利な点は, 複雑な数値シミュレーションを多用することなく, 廃棄体からの溶出率を考慮した人工バリアシステム (EBS) からの放出フラックスを算定でき, さらに, 人工バリアが有する遅延性能, 低透水性能, 及び低拡散性能の3つの性能指標からなる移行率を提案・採用している点である. また, 本稿で提案する安全性能評価手法を用いて, 人工バリアからの放射性核種の放出フラックスに対して感度解析を行い, 廃棄体からの溶出率, 移行率, 及び人工バリアからの放射性核種の最大放出率による相図を作成し各パラメータの影響度を整理した.
  • 江橋 健, 小尾 繁, 大井 貴夫
    2009 年 15 巻 2 号 p. 99-115
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの頑健性を提示するための重要な対策のひとつとしては, 設計において予め適切に安全裕度を見込んだパラメータの設定を行うことが考えられる. このため, このような安全裕度の評価においては, 「それぞれのシナリオに対する適切な条件設定に基づいて, 保守的な値を考慮した解析結果や感度解析結果から, 線量目安値を満足するパラメータの値あるいは範囲, すなわち, 裕度を見積もること」が求められる. 本論文においては, 包括的感度解析手法を高レベル放射性廃棄物の性能評価に適用し, 性能評価パラメータの安全裕度を評価するための考え方について提案する. 提案に際しては, 工学的な対策により性能の高度化を見込める可能性があるパラメータ (ガラス固化体溶出率, オーバーパックの破損時期, 緩衝材の厚さ) に着目し, 天然バリアをきわめて保守的に設定した条件下における性能評価パラメータの安全裕度の評価を例示した. このような考え方に基づいて抽出される情報は, 頑健なバリアの構築やシナリオ解析に資するものと考える.
技術報告
  • 久野 義夫, 諸岡 幸一, 笹本 広, 油井 三和
    2009 年 15 巻 2 号 p. 117-129
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     放射性廃棄物の地層処分における性能評価では, 核種移行における遅延効果は一般に分配係数 (Kd) によって評価される. しかしながら, 液相にコロイドが存在する場合, コロイドは核種を収着する可能性があるため, Kdの値に影響を及ぼすことが考えられる. 本研究では, 核種の収着挙動に及ぼすコロイドの影響を調べるために, Cs-137, ベントナイトコロイドおよび石英砂を用いたバッチ法による収着試験を実施した. Cs-137の石英砂への Kd (Kd1) およびベントナイトコロイドへの Kd (Kd2) は, 固相中, コロイド中および液相中のCs-137の存在量から求め, 試験溶液を分離するフィルタの孔径により, これらの核種の存在量の区分を行った. その結果, 本試験条件のもとでは, 固相とコロイドが別々に存在する状態で取得された分配係数から, 両者が共存する状態での核種の分配挙動を見積もることができた. このように, ろ過において適切なフィルタ孔径を選定することは, 核種の固相への収着挙動に及ぼすコロイドの影響を見積もる上で有用と考えられる.
資料
  • 増田 良一, 雨宮 清, トラン デュク フィ オアン , 小峯 秀雄
    2009 年 15 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物地層処分では, 廃棄物の周辺に緩衝材と呼ばれるベントナイト系材料による人工的な障壁 (人工バリア) が構築される. 緩衝材は廃棄物の発熱により高温に曝されるため, 熱変質による性能低下が懸念されており, 所定の温度を超えないように施設設計/評価が行われる. 適切な設計/評価を行うためには, 高温下での緩衝材の挙動の把握が必要である. 本研究では, ベントナイト系材料を圧縮したブロックを対象に, 緩衝材の仕様 (ベントナイトとケイ砂の混合割合, 乾燥密度, 含水比) と乾燥させる温度をパラメータとした乾燥収縮試験を実施し, これらと乾燥に伴う含水比変化, 乾燥収縮の関係, および熱影響評価における留意点を整理した.
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