原子力バックエンド研究
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5 巻, 2 号
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資料
  • 生瀬 博之, 橋本 秀爾, 山本 正史, 松村 勝秀
    1999 年 5 巻 2 号 p. 29-35
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物(高βγ廃棄物)は核種濃度が高いことから,やや深い地下領域に処分された後においても,廃棄物と人間との直接接触を避ける必要がある.そこで,直接接触が回避され得ることを示すため,管理期間終了後において,地下利用(人間侵入)が計画された際にも処分施設の存在が検知される可能性について,地下利用にともなう事前調査事項をもとに,処分場発見までのプロセスを勘案し,3つの段階に分けて検討した.
      検討は現状技術を基本として行ったが,検討の結果,第1段階の「記録(記憶)による検知」,第2段階の「地表からの物理探査による検知」,および第3段階の「施工中管理における検知」のいずれかの段階,または2つ以上の段階の組合せで検知され,処分場に侵入するような地下利用が計画された場合でも,結果として廃棄体との直接接触を回避し得ることが導出された.
研究論文
  • 坂本 浩幸, 芳賀 和子, 藤田 英樹, 石崎 寛治郎, 天野 恕, 廣永 道彦, 長崎 晋也, 田中 知
    1999 年 5 巻 2 号 p. 37-42
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      本研究は,低アルカリ性セメントペーストを浸漬した液相のpH測定結果とpH発現メカニズムについて報告している.
      低アルカリ性セメントは,3CaO・3Al2O3・CaSO4を含むクリンカー,セッコウと高炉スラグを混合して作製した.水和したセメントペーストの溶解度に対する高炉スラグの影響を検討した.水和セメントペーストを66週間浸漬した液相のpHは,10.4から12.3であった.水和セメントペーストの水和物組成をセメントの化学組成から評価した.測定した液相のpHは,評価された水和セメントの化学組成とカルシウムシリケート水和物 (C-S-Hゲル) の溶解特性から評価したpHと比較した.測定したpHは,評価したpHの値とよく一致することが確認された.
  • 芳賀 和子, 柴田 真仁, 岡田 能彦, 廣永 道彦, 田中 知, 長崎 晋也
    1999 年 5 巻 2 号 p. 43-50
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      セメント系材料が地下水に溶解し,放射性廃棄物処分施設の環境を高アルカリ性に保つことによって,多くの放射性核種の溶解度を低くすることができる.本研究では,セメント系材料の高アルカリ性環境の保持機能を長期間にわたって評価するために,セメント構成鉱物のひとつであるC3S (C3S:3CaO・SiO2) を合成し,その水和物の溶解に伴う液相と固相の変化を評価した.
      溶解試験は浸漬水のC3Sの水和物に対する比 (液固比) を10~2000(wt/wt) まで変化させる方法で実施した.C3Sの水和物とイオン交換水を容器に入れ密封し,所定期間経過後,固液分離した.分離後,液相のpH,Ca,Si濃度を測定するとともに,固相に対してはXRD,DTA/TG,29Si-NMRによる分析を実施した.
      液相のpHとCa濃度は浸漬時間が長くなると一定値に収束し,その値はGreenbergら[1]のカルシウムシリケート水和物の溶解度データと良く一致した.液相のCa濃度と固相のXRDとDTA/TG測定結果から,液固比10(wt/wt)と100(wt/wt)の試料ではCa(OH)2が溶解していること,液固比500(wt/wt)以上の試料ではCa(OH)2の溶解と共にC-S-Hが溶解していることがわかった.また, NMR測定結果から液固比500(wt/wt)以上の試料ではC-S-Hのシリケートアニオン鎖が長くなっていることがわかった.溶解したC3Sの水和物が再結合したものと考えられるC-S-H構造の変化とこれに伴う比表面積の変化は溶解挙動や核種の吸着に影響を及ぼすことが想定され,本研究は処分施設の長期安全評価の高度化に有効であると考えられる.
  • 古市 光昭, 奥津 一夫, 田中 益弘
    1999 年 5 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高レベル放射性廃棄物の地層処分では立坑・坑道および周辺岩盤の緩み域が核種の卓越移行経路とならないように埋戻し材,プラグおよびグラウトを組み合わせたシステム (以下シーリングシステム) により適切にシールする必要がある.本論文は,シーリングシステムの設計を例示したものである.また,シーリングシステムの成立性を議論する上でコンクリート支保工の埋戻し材性能への影響を評価する必要があるため,これについて実験的に検討した結果もあわせて報告する.
  • 村上 由記, 長沼 毅, 岩月 輝希
    1999 年 5 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      地球上のliving carbonの半分以上は地下に存在するという可能性が指摘されている.近年,地下の微生物に関する知見が世界各地で報告されており,地下生物圏の存在はかなり確実視されている.今回,我々は岐車県東濃地域において,深度840mまでの地下水中の微生物の調査をおこなった.その結果,花崗岩および堆積岩における地下水中の微生物密度は,海洋表層と同レベルの105~106cells/mlにも達することを確認した.また,特有のpH,Ehを示す深度において,鉄酸化/還元細菌が103~105/mlという高密度で存在していることも明らかとなった.さらに,これらのバクテリアが存在する深度のpH-酸化還元電位は,Fe2+/Fe(OH)3もしくはFeS2/Fe2+,FeS2/FeCO3の酸化還元境界と一致していた.これらの地下微生物は,深部地質環境における沈澱,溶解,硫黄・鉄などの循環といった地球化学的プロセスと深く関係しているものと考えられる.
技術報告
  • 総論
    駒田 広也, 北山 一美, 森田 正紀, 片山 薫
    1999 年 5 巻 2 号 p. 67-69
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      処分の実施主体が行う処分サイト選定,地質・地下水特性調査,施設設計,安全評価,施設建設,廃棄体埋設,施設閉鎖など,一連の処分事業を模擬的に机上で検討した本特集「高レベル放射性廃棄物処分の事業化技術」の構成と特徴,ならびに主要な成果を記述した.
  • -その2 処分事業の実施手順-
    河西 基, 駒田 広也, 土野 進, 塩﨑 功, 北山 一美, 赤坂 秀成, 稲垣 祐亮, 河村 秀紀
    1999 年 5 巻 2 号 p. 71-91
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高レベル放射性廃棄物処分の事業化は2000年頃に予定されている実施主体設立後にいよいよ本格化することになるが,その実施主体により進められることになる「処分地の選定」,「処分場の建設・操業」,「処分場の解体・閉鎖」,「閉鎖後管理」などの一連の処分事業に関して,それぞれの段階に沿って考慮すべき処分事業の実施手順を技術的な観点から詳細に検討し,マスタースケジュール案を作成したまた,それらの当面のサイト選定などの処分事業化を円滑に進める上で重要となる地層処分の概念や安全確保の基本的考え,サイト選定にあたっての要件,さらには処分技術への信頼性を得るための実証の考え方についても取りまとめるとともに,本事業化検討全体の基本条件となる地質環境条件の設定を行った.
  • -その3 サイト選定のための調査・評価手法-
    田中 和広, 木方 建造, 土 宏之, 出口 朗, 齋藤 茂幸
    1999 年 5 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      処分場のサイト選定において実施される調査・評価手法について,地層処分のマスタースケジュールに従い,調査の各段階毎に要求される性能評価要件や施設設計要件等を考慮し調査の考え方,項目,量,精度等に関して検討を行った.さらに, (その2) において設定された地質環境条件を対象として,具体的な調査の項目や手順について事例検討を行った.
  • -その4 人工バリアの設計と製作-
    緒方 信英, 小﨑 明郎, 植田 浩義, 朝野 英一, 高尾 肇
    1999 年 5 巻 2 号 p. 103-121
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高レベル放射性廃棄物の地層処分における人工バリアは,長期間にわたって健全であることが必要である.ここでは,人工バリアとしてオーバーパックと緩衝材をとりあげ,その設計の考え方や設計例を示すとともに,製作と品質管理及び検査についての概要を述べた.オーバーパックとしては,強度部材に炭素鋼を選定し,処分深度が1,000mの結晶質岩の検討結果を用いて,その設計仕様を定めた.また緩衝材は,主に透水係数と緩衝材の施工に伴なう隙間の自己シール性から,ベントナイト80%,砂20%で混合され,密度が2.0g/cm3に締め固められた材料を選定し,仕様を定めた.さらに,製作については,オーバーパックの蓋および複合オーバーパックの場合の耐食層の接合方法を,緩衝材については,ブロック型と一体型緩衝材の製作について検討した.
  • -その5 地上施設の設計-
    土野 進, 駒田 広也, 植田 浩義, 川上 進, 高尾 肇
    1999 年 5 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      人工バリアの製作および地下施設の操業・建設において付随的に必要な地上施設とその機能条件を抽出し,地上施設の設計条件を示した.地上施設で行われる,廃棄体受け入れ・封入・検査工程を検討し,工程ブロックフロー,ガラス固化体のオーバーパックへの封入ライン概念および,廃棄体受け入れ・封入・検査施設の全体概念図を示した.また,緩衝材の製作・検査工程を検討し,一体型緩衝材の製作・検査工程ブロックフロー図を示した.さらに,付随する,埋戻し材の製作・検査施設,中央管理棟,地上換気設備,地上排水設備,廃棄物処理施設,ユーティリティー施設,保安施設,ズリ置場,コンクリートバッチャープラントについてもその概要を示した.最後に地上施設全体のレイアウトまとめレイアウト図を示すと共に,全体施設景観鳥瞰図を示した.
  • -その6 地下施設の設計・建設-
    金川 忠, 野崎 隆司, 出口 朗, 高橋 美昭, 石井 卓, 河村 秀紀
    1999 年 5 巻 2 号 p. 129-152
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高レベル放射性廃棄物の地層処分において,わが国では地下数100mから1000m程度までの地下深部を対象に種々の検討がなされている.本稿は,37,800本の廃棄体を埋設処分する地下施設について,処分予定地の建設可能性を概略的に確認する基本設計の考え方,建設深度や施設規模の検討基本的な施設配置例の概要を示し,つぎに,処分地における具体的な詳細設計として空洞形状やその大きさ,支保形式やその材料,坑道の離間距離や廃棄体の埋設密度,地下施設内の換気や排水について検討し,詳細な施設配置計画を例示した.さらに,地下施設の施工として坑道の掘削方法やそのずりの搬出方法と設備,坑道周辺岩盤のグラウトの方法とその材料,換気・冷房・排水の設備などについて示し,掘削時の施工管理についても現状技術との対応で概要を示したものである.
  • -その7 廃棄体の埋設と処分施設の埋戻し-
    塩﨑 功, 緒方 信英, 金川 忠, 出口 朗, 高橋 美昭, 高尾 肇, 阿波野 俊彦, 河村 秀紀
    1999 年 5 巻 2 号 p. 153-168
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      放射線防護の考え方に基づき,地下施設における廃棄体 (ガラス固化体を収納したオーバーパック) ,緩衝材のハンドリング方法について検討し,縦置き定置方式,横置き定置方式について,廃棄体および緩衝材のハンドリング工程,ハンドリング設備の概念を示した.さらに,廃棄体および緩衝材の定置・埋設の方法と設備について検討し,それぞれの設備寸法を明記した概念図を示した.また,埋戻しおよびプラグの方法・材料について検討し,現状技術のうち最適な技術・材料を提案した.支保工に関しては,主に撤去の可能性に着目した検討を行った.最後に,処分場の閉鎖前後における現時点でのモニタリングの考え方を整理した.
  • -その8 処分施設のバリア性能評価手法と安全評価-
    五十嵐 敏文, 塚本 政樹, 藤原 啓, 植田 浩義, 池田 孝夫, 齋藤 茂幸
    1999 年 5 巻 2 号 p. 169-197
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高レベル放射性廃棄物の地層処分に際する性能評価・安全評価のためには,放射性核種がガラス固化体から溶出し,人間が被ばくするまでの経路において,想定される種々のシナリオを網羅し,それぞれに対して被ばく線量を計算する必要がある.FEP,PIDを用いて地下水シナリオを中心として検討した結果,地下水シナリオは基本シナリオと変動シナリオに大別され,さらに変動シナリオは隆起・侵食シナリオ,沈降シナリオ,間氷期継続シナリオ,氷期継続シナリオ,地温勾配大シナリオに分類された.それぞれのシナリオに基づき,堆積岩地域と花崗岩地域を対象として性能評価・安全評価を行った結果,堆積岩地域の方が間隙率が大きく,また分配係数も大きな値であったため,相対的に堆積岩地域で被ばく線量値が小さくなること,変動シナリオの中で隆起・侵食シナリオが最も高い線量値を示すことが明らかになった.
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