地層処分システムの安全評価は, 我々の経験や歴史をはるかに超えた時間スケールに対する安全性を検討するとともに, 天然の地層が有する不均質な空間領域を取り扱うという特徴がある. 近年の国際的な経験の蓄積により, 地層処分に対する知識や長期的な将来予測に対する信頼性は著しく向上しているものの, 現状は必ずしも知見が十分ではなく, システムの将来予測には, シナリオ, モデルおよびデータに不確実性が内在する. 安全評価の観点からは, これらの不確実性を考慮しても十分な安全裕度が確保されていることを示すことが重要であり, そのためには, 現実的に予想されるシナリオや考慮すべき不確実性を含んだシナリオを明らかにする必要がある. また, 安全性が担保される範囲内で合理的な設計を行うためには, 好ましいシナリオに至るパラメータの範囲を明らかにし, シナリオ分岐に影響を与える因子を把握することが重要となる.
本研究では, ニアフィールド過渡期に生起し得る現象を効率的に解析する手法として, 複数の解析手法 (セルラーオートマタ, 大規模数値解析およびニューラルネットワーク) を組み合わせた複合解析システムを検討した. これらを例題演習に適用し, セルラーオートマタにより生起し得る複数のシナリオを抽出し, 大規模数値解析により代表的なケースでの詳細な解析を実施, さらには詳細解析の結果をもとにニューラルネットワークを用いた包括的な感度解析を行った. これにより, システム全体挙動を効率的に評価でき, シナリオ分岐に関する情報が得られる可能性が確認できた. これらは人工バリア仕様の合理的かつロバストな設計への寄与が期待される.
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