原子力バックエンド研究
Online ISSN : 2186-7135
Print ISSN : 1884-7579
ISSN-L : 1343-4446
14 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
研究論文
  • 須山 泰宏, 柳澤 孝一, 戸井田 克
    2007 年 14 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物地層処分場の閉鎖時には, 定置した廃棄体中の核種を地上から隔離するため, 坑道の埋め戻しを行うと共に, 坑道掘削により生じるゆるみ域 (坑道近傍において掘削損傷や応力開放などにより物性値が変化する領域) や周辺岩盤と埋め戻し材との境界部が連続した核種移行経路とならないように, また, 核種移行経路となり得るゆるみ域と断層破砕帯などとの連続性を遮断できるように止水プラグの設置が検討されている. 止水プラグについては, カナダ原子力公社とサイクル機構が共同で実施したトンネルシーリング試験により止水プラグ自体の実現可能性の確認が行われているが, 処分場全体における止水プラグの具体的な役割を踏まえた設計方法については, 検討途上であり, 不均質な地質環境における止水プラグの有効性や具体的に期待する性能などが明らかになっていない.
     そこで, 本論では予察的解析を行い上記した止水プラグの設計に関わる課題を明確にし, 不均質な地質環境において適用すべき地層処分場の止水プラグ設計方法を提案する. 本止水プラグ設計方法は, 先ず, 廃棄体定置のために必要な緩衝領域 (十分な核種移行遅延が可能な領域) を定義し, そして廃棄体定置のための坑道掘削により損傷した緩衝領域の機能を補うことが止水プラグの役割であるとした上で, 処分場全体として止水プラグの設置数を減らすように, 坑道掘削時の情報を用いて処分坑道のレイアウトを最適化する手法である.
  • 藤田 朝雄, 杉田 裕, 升元 一彦, 風間 秀彦
    2007 年 14 巻 1 号 p. 13-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分場における閉鎖技術に関して, 国内外における閉鎖概念の考え方を整理した上で,その考え方に基づいた閉鎖性能の発揮において確認しなければならない課題として閉鎖要素自身の施工が可能であることと, 期待される性能が発揮できることと設定した. 本研究では, この課題を解決すべくAECLとの共同研究としてカナダの地下研究施設において実施したTSXの施工概要および連続計測で取得されたデータを示すとともに, 施工した粘土プラグの止水性能を確認するために実施した加圧注水試験結果とトレーサー試験およびその試験結果に基づく解析結果を示した. 今回の試験により, 現状技術を組み合わせることによって施工した粘土プラグは, 周辺部を含めて低透水性能を発揮できることを確認した. また, トレーサー試験の解析評価を行うことにより, 粘土プラグ周辺の物質移行特性を把握することができた.
総説
  • -地下研究施設における微生物影響研究の考え方-
    吉田 英一, 大貫 敏彦, 長沼 毅
    2007 年 14 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     地層処分において遭遇する地下環境は, 微生物をも含む岩石と地下水との反応による複合環境の世界と言える. そして, そこでの微生物の分布や生息の様子は, 堆積岩系や結晶質岩系といった岩体の形成プロセスに深く関与したものであることが示されつつある. 地層処分システムは, このような地下環境との共存システムとして構築される必要がある. しかしながら, 微生物の影響や安全評価に対する考え方については, 欧米をはじめ様々な観点から議論されてきているものの, 処分場建設から閉鎖後に至る処分環境の時系列的変化に伴う微生物活動の予測や, バリアシステムへの影響という観点からはほとんど論じられていない. 地下に存在する微生物 (群集) は, 処分場建設~操業~閉鎖に至る化学的および物理的な地下環境の変化に伴って, 大きくその様相を変化させる可能性がある. これらは, 地下水‐鉱物 (材料) ‐微生物の経時的複合反応によってもたらされるものである. したがって地下研究施設においては, 我が国の地質環境下での微生物が活動する「場 (地下空洞掘削によってもたらされる時系列変化と複合環境) 」を意識した微生物影響に関する研究を進めることが不可欠と考えられる.
feedback
Top