原子力バックエンド研究
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ISSN-L : 1343-4446
8 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
研究論文
  • 長野 浩司
    2002 年 8 巻 2 号 p. 135-143
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      わが国の原子力発電規模想定の下に,2050年までの使用済燃料管理のあり方を展望した.当面,再処理からのプルトニウム利用としては,軽水炉でのプルサーマル利用が中心となる.その際,軽水炉使用済燃料管理の観点から,以下の点が重要である.
    (1) 今後, 2010~2020 年程度の中期的には,使用済燃料再処理を上回る使用済燃料を貯蔵措置により収容せざるを得ない.その対処必要量は,相当程度の確度をもった想定が可能である.
    (2) 2050年までの長期的展望においては,原子力発電や再処理の実績次第で,貯蔵対処が不要になっていく場合から貯蔵対処必要量が単調に増大する場合まで,大きな不確実性が存在する.
    (3) プルサーマル実施により,MOX使用済燃料が発生するが,これは第二民間再処理工場が実現するまでは貯蔵により対処せざるを得ない.このように,今後の使用済燃料管理においては,単なる量的考慮だけでなく,低燃焼度のものから高燃焼度のもの,MOX燃料と質的に多様なものが存在する状況になっていくので,より綿密な計画が必要になる.
    (4) 一般に,貯蔵には最適な期間および最適な規模の選択が存在する可能性がある.今後の事業展開にあたっては,最適条件からの大幅な逸脱を生じないよう,計画全体の吟味を繰り返しながら進めていくことが望まれる.
  • -スタック方式施設の除熱試験-
    竹田 浩文, 古賀 智成, 亘 真澄, 坂本 和昭
    2002 年 8 巻 2 号 p. 145-153
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      使用済燃料を貯蔵するためのキャスク貯蔵施設に関しては,高い天井の中央に排気口を設けたキャスク貯蔵施設が使用されてきた.近年,新たにコストの低減と工期の短縮のため,施設の天井高さを低くし,側壁の吸気口と反対側に排気スタックを設けたキャスク貯蔵施設が提案されている.この方式では,冷却空気が吸気口から導入され,貯蔵部を横切った後,スタックから排気されることから,キャスクに対して直交流成分が強くなると予想される.よって,浮力上昇流が支配的な従来方式の施設と流れのパターンが異なることから,新たに除熱評価を行った.本研究では,実規模施設の1/5縮尺模型試験を用いた試験を行い,適用相似則を確認するとともに,施設の基本形状(天井高さおよびスタック高さ)が熱流動現象に及ぼす影響を評価し,以下の結果を得た.
    1)天井高さは,キャスクの除熱特性には大きく影響しないが,天井温度への影響が大きい.
    2)スタック高さは,キャスクの除熱特性に大きく影響する.除熱計算上で整合するスタック高さを検討した.
    3)キャスク近傍には,自然対流による垂直流に加え,貯蔵部内を横切る水平流が存在する.この影響により,キャスクの熱伝達率は,垂直平板自然対流熱伝達率よりも大きい値となった.
  • 小﨑 明郎, 安島 辰郎, 猪原 康人, 大江 耕一郎
    2002 年 8 巻 2 号 p. 155-164
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高性能の中性子吸収効果を期待できると考えられるボロンあるいは濃縮ボロンを高濃度に添加した 1) ボロン含有ステンレス鋼, 2) ボロン含有3層クラッド材(B-Stainless Steel/Cu/B-Stainless Steel),ならびに, 3) ボロン含有アルミニウム合金,を対象にバスケット用中性子吸収構造材料としての適用性を検討するとともに,種々の材料試験を行い,基準化等に必要なデータを取得し使用上配慮すべき点についてまとめた.この結果,これらの材料をバスケット材に適用することで未臨界性と除熱性能の向上が図られ,将来発生する高燃焼度・MOX使用済燃料も金属キャスクにより安全に貯蔵可能であることが示された.
  • Zhang Zefu, He Jianyu, Zhu Zhaowu, Ye Guoan, Zhao Zhiqiang
    2002 年 8 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      A new alternative method for separation of Np in the first eo-decontamination step is proposed. It comprises two steps, namely, preconditioning of Np valence state in the dissolved solution of spent fuel by NO gas bubbling in HNO3 medium to produce HNO2, which is considered as salt-free process to convert Np(VI) to Np(V) and stabilization of Np(V) with urea, finally, the demonstrative counter current cascade extraction of Np(IV) and Np(V) in a miniature mixer-settler was carried out. The batch experiments show that Np(V) produced after conditioning may be slowly oxidized again to Np(VI) during standing time. Addition of urea in the HNO3 solution might enhance the stability of Np(V). On the other hand, the solvent extraction by 30% TBP/kerosene could greatly accelerate the oxidation rate of Np(V). The chemical flow sheet study at 25°C shows that, more than 98% of Np could be routed into HLLW if urea is added in the HNO3 solution. The operating temperature has great influence on the kinetics of Np(V) oxidation. If operation temperature races to 36°C and urea is not added, about 38% of Np will go along with U and Pu into organic phase. The behavior of Np(IV) during extraction shows great accumulation in the middle stages of battery.
  • 鹿園 直建, 瀧野 晶嗣
    2002 年 8 巻 2 号 p. 171-178
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      富士山起源の黒ぼく土の化学組成,鉱物組成,物理的性質についての研究を行った.主な一次構成物質は,火山ガラスであり,二次鉱物はアロフェン,ハロイサイトである.この風化の順序は,火山ガラス→アロフェン→ハロイサイトである,相対的元素の移動度は, Na,Ca>K>Mg>P>Si>Ti,Fe>Al>Mnである.溶解・沈殿カイネティックス-流動モデルにもとづき,土壌水のシリカ濃度の深さに対する変化を求めた.この計算を行うために,降水量,火山灰,堆積速度,火山ガラスのサイズ,玄武岩ガラスの溶解度,土壌の空隙率,比重のデータ値を与えた.この計算結果と分析値とを比較することで,玄武岩ガラスの溶解速度が10-9.4~10-9.2 (mole Si m-2 s-1) と求められた.この推定値と従来の実験値は一致している.
技術報告
  • 廣野 哲朗, 高橋 学, 林 為人
    2002 年 8 巻 2 号 p. 179-189
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      核種の地下水による移流・拡散を想定した地下水シナリオの予測精度の向上のため,透水係数等の移行速度の評価に加え,岩石・岩盤中の移行経路の解析が必要である.この経路の解析において,従来,光学顕微鏡レベルでの可視化・観察が行われてきたが,近年では新しい可視化手法の開発および画像処理技術の向上により,面的はもとより3次元的に,より高い分解能で間隙構造を把握することが出来るようになってきた.そこで本論では,岩石の内部微小構造のデータベース化を意識した各種可視化手法のクロスチェックのために,X線CT装置による内部構造の非破壊観察,着色樹脂を間隙部分に浸透させる方法,共焦点レーザー顕微鏡による間隙可視化,走査型電子顕微鏡による間隙の観察,水銀圧入法による間隙径分布の測定,原子間力顕微鏡による間隙可視化を行った.さらに可視化した間隙の幾何学的情報をもとに,等価管路モデルによる透水係数の推定を行った.各手法のそれぞれの長所・短所の比較の結果,間隙の3次元像を得るためにはマイクロフォーカスX線CTと共焦点レーザー顕微鏡が,透水係数の推定には水銀圧入ポロシメーターとAFMが効果的な装置と言える.
総説
  • 黒澤 進, 上田 真三, 久野 義夫, 油井 三和, 長崎 晋也
    2002 年 8 巻 2 号 p. 195-203
    発行日: 2002/03/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      放射性廃棄物地層処分の安全性評価のためには,地層処分環境下での核種移行に及ぼすコロイドの影響を評価することが必要である.本稿では,放射性廃棄物処分系におけるコロイドの生成,核種移行に及ぼすコロイドの影響,移行モデルに関して近年の研究をまとめた.核種コロイドは放射性廃棄物の溶出液に含有されるが,ベントナイト系緩衝材で移行を抑制することができる,核種移行に及ぼすフミン,微生物のコロイドの影響についても評価が必要であり,有機物,微生物および核種の相互作用に関する研究が課題である.ベントナイトおよびセメントからのコロイドの生成についても検討されたが,核種移行において議論するためにはデータが不十分である.コロイドが共存する場合の核種移行を予測するためには,核種-コロイド-岩盤の3相間の平衡に関するモデル化が重要である.
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