原子力バックエンド研究
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4 巻, 1 号
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研究論文
  • 長崎 晋也, 田中 知, 鈴木 篤之
    1997 年 4 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      天然地下水中におけるコロイド粒子は電荷を有し、かつ多分散系である。本研究では、帯電した球形コロイド粒子から構成される2分散系を対象として、Langevin方程式から予測される帯電球形コロイド栓子の拡散係数とStokes-Einsteinの関係式から予測される自由水中での拡散係数との比を評価している。具体的には、2種類のコロイド聞の電荷比、粒径比、数密度比依存性を議論している。その結果、拡散係数比は1よりも小さいことがわかった。このことは、帯電コロイド粒子は静電気的相互作用によって誘起された摩擦力によって拡散速度が減速されることを示している。着目するコロイド粒子の相対数密度比が大きいときには、拡散係数比は電荷や粒径には余り依存しないが、小さいときにはもう一方のコロイド粒子に対する電荷比や粒径比が小さくなるにしたがい拡散係数比は減少することがわかった。
  • 津島 悟, 長崎 晋也, 田中 知, 鈴木 篤之
    1997 年 4 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      銀コロイドおよび酸化銀コロイドに吸着させたU(VI)イオンのラマンスペクトルを、幅広いpH範囲にわたり測定をおこなった。その結果、UO22+の対称伸縮振動によるラマンバンドは、銀コロイドへの吸着にともなって大きく短波数側にシフトすること、またpHの変化によってそのシフト量が変化することが観測された。このことからU(VI)イオンの銀コロイドへの吸着は、部分的な配位子の解放を含みつつも、すべての配位子を解放するものではないことが明らかにされた。
      さらに、銀コロイドへ吸着したU(VI)イオンと酸化銀コロイドへ吸着したU(VI)イオンのラマンスベクトルを比較することにより、U(VI)イオンの両コロイドへの吸着の違いを明らかにした。
  • 姜 政敏, 鈴木 篤之
    1997 年 4 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      DUPIC (Direct Use of spent PWR fuel In CANDU) 核燃料サイクル (以下DUPIC) は、ワンススルー核燃料サイクルの対案として90年代初頭に韓国から提案された新しい核燃料サイクルである。DUPICはPWR使用済燃料からプルトニウムを分離することなく直接再成形加工して、それをCANDU炉で新燃料として再利用する軽水炉・重水炉連係核燃料サイクルである。それによって、所要天然ウラン量を減少させられるばかりではなく、使用済み燃料の量を減らすことができる。本研究では、DUPIC燃料製造工程、2次廃棄物量、物質流量、DUPIC使用済み燃料の線源強度、長期毒性などの崩壊特性、ウラン資源節約および環境への影響の減少などをワンススルーと比較し評価を行った。なお、2030年までの韓国の原子力発電設備容量を予測して、いくつかのシナリオのDUPICサイクルを適用した場合、天然ウラン所要量、使用済み燃料の発生量などのサイクル諸量について、適用しない場合と比較評価を行った。そして、DUPICサイクルの物質バランスの観点から韓国の最適サイクル戦略を提案した。
  • 広永 道彦
    1997 年 4 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      放射性廃棄物におけるセメント系材料の人工バリアとしての核種閉じ込め機能評価手法を確立するために、筆者はその機能を物理的な核種閉じ込め機能としての止水性能と化学的な核種閉じ込め機能としての吸着性能として捕らえた。
      本報告は、このうち止水性能については、筆者が提案した長期止水性能評価手法の紹介と評価結果の一例について記し、吸着性能についてはセメント組織の化学特性の把握の一環として検討した低pHセメントの特徴を試験結果に基づいて纏めたものである。
  • 北村 暁, 山本 忠史, 森山 裕丈, 西川 佐太郎
    1997 年 4 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      花崗岩に対するCs+の吸着挙動を調べた。花崗岩に対するCs+の分配係数(Kd)について、pHを2.3から10.9の範囲、イオン強度を10-2および10-1の条件で測定した。花崗岩に対するCs+Kdの値は石英に対する値よりも大きく、またKdの値はpHの増加およびイオン強度の減少に伴って増加することが確認された。得られたデータは電気二重層モデルで解析されて良好なフイッティングの結果が得られ、このときの電気二重層の静電的作用を表すパラメータおよび吸着反応のパラメータが求められた。この解析をもとに鉱物成分へのCs+の選択的吸着挙動を検討し、Cs+は花崗岩中において長石に選択的に吸着されることが示唆された。
  • 小西 正郎, 坂本 義昭, 妹尾 宗明, 森山 昇
    1997 年 4 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      人工バリアにコンクリート系材料を用いる放射性廃棄物の処分施設では、セメントの放射性物質に対するバリア性能を評価する必要がある。特に、セメント系の材料は空気中の炭酸ガスや地下水中の炭酸イオンと反応して中性化が進むため、中性化にともなう放射性核種との相互作用を評価しておくことが重要である。そのため、239Pu(IV)と237Np(V)のセメントに接触した高アルカリ地下水中での挙動および中性化したセメント材料への吸着挙動をバッチ法により調べた。その結果、中性化していないセメント系材料との接触液はpH12以上を示し、そのときのKd値は239Pu(IV)および237Np(V)のいずれに対しても105 ml/g以上と大きな値を示すことが分かった。また、中性化にともない接触水のpHは低下し、239Pu(IV)および237Np(V)のKd値も徐々に低下するが、接触水のpHが10となった場合にも、それぞれのKd値は104 ml/gおよび103 ml/g程度と高い値を保持し、その化学バリア効果が大きいことも分かった。さらに、合成地下水と種々のpHを示すセメント接触液中の237Np(V)について、粒径分布と紫外-可視分光分析測定により存在形態を推定した。その結果、セメント接触液中の方が大きな粒径のコロイドが生じ易いことおよびより低いpH値で吸収ピークの変化が生じることが分かった。
      また、セメント系材料の中性化は長期に及ぶ現象であるが、ニアフィールドの化学的環境の変化に関連するため、人工バリアの適正な評価のためには、中性化の影響の考慮も必要であることが分かった。
技術報告
  • 森谷 渕
    1997 年 4 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      米国ワシントン州にあるHanfordのDOE施設は、第二次大戦中から戦後の米ソ冷戦構造の間、核兵器開発の中心的存在であった。東西対決も終わり、核兵器の廃絶が進められている中で、かつてのPu生産炉や再処理施設の環境回復が大きな問題としてクロースアップされてきている。
      ここでは、Hanford核兵器開発の歴史を振り返り、Pu生産とそれに伴う再処理廃棄物の発生と管理状態、177基に及ぶ廃棄物タンクの現況とクリーンアップの計画などについて、その概要と問題点について紹介する。
      1996年9月以降DOEは、Project Hanford管理契約(PHMC)とタンク廃棄物回復システム(TWRS)により、Hanford Tank Waste Cleanupを民間請負化することで、その進捗を計ろうとしている。
  • 五十嵐 敏文, 木方 建造
    1997 年 4 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      1995年より操業期にはいったスウェーデンエスポ地下研究施設では、地層処分の性能評価に関連する試験として、TRUEと呼ばれる単一割れ目を対象とした地下水流動・トレーサ移行試験、REXと呼ばれる詳細スケールの酸化還元反応試験、RNRと呼ばれる大型プロープによる核種の移行・溶解に関する原位置カラム試験が実施されている。また、処分施設の操業・閉鎖に関連する試験として、埋め戻し・プラグ試験、緩衝材の長期性能試験、プロトタイプ処分施設の建設に関する試験が計画あるいは一部実施されている。本報では、それら試験の概要について述べるとともに、国際共同研究の1参加機関としての電力中央研究所の研究内容について紹介する。
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