人工バリアにコンクリート系材料を用いる放射性廃棄物の処分施設では、セメントの放射性物質に対するバリア性能を評価する必要がある。特に、セメント系の材料は空気中の炭酸ガスや地下水中の炭酸イオンと反応して中性化が進むため、中性化にともなう放射性核種との相互作用を評価しておくことが重要である。そのため、
239Pu(IV)と
237Np(V)のセメントに接触した高アルカリ地下水中での挙動および中性化したセメント材料への吸着挙動をバッチ法により調べた。その結果、中性化していないセメント系材料との接触液はpH12以上を示し、そのときの
Kd値は
239Pu(IV)および
237Np(V)のいずれに対しても10
5 ml/g以上と大きな値を示すことが分かった。また、中性化にともない接触水のpHは低下し、
239Pu(IV)および
237Np(V)の
Kd値も徐々に低下するが、接触水のpHが10となった場合にも、それぞれの
Kd値は10
4 ml/gおよび10
3 ml/g程度と高い値を保持し、その化学バリア効果が大きいことも分かった。さらに、合成地下水と種々のpHを示すセメント接触液中の
237Np(V)について、粒径分布と紫外-可視分光分析測定により存在形態を推定した。その結果、セメント接触液中の方が大きな粒径のコロイドが生じ易いことおよびより低いpH値で吸収ピークの変化が生じることが分かった。
また、セメント系材料の中性化は長期に及ぶ現象であるが、ニアフィールドの化学的環境の変化に関連するため、人工バリアの適正な評価のためには、中性化の影響の考慮も必要であることが分かった。
抄録全体を表示