原子力バックエンド研究
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ISSN-L : 1343-4446
16 巻 , 1 号
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研究論文
  • 増田 遊介, 大江 俊昭, 吉田 拓真, 野下 健司, 加藤 和之, 長崎 晋也, 天野 健治, 二口 克人, 金子 岳夫
    2009 年 16 巻 1 号 p. 3-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     ボーリング孔壁に微小な流路を押し当ててその中にトレーサを通液し, 流路出口のトレーサ濃度変化から実効拡散係数と分配係数を同時に, しかも1週間以内に計測可能な革新的な調査手法であるマイクロ流路法の適用性を確認することを目的に, 花崗岩盤の実ボーリング孔を利用して, 非収着性 (重水, ウラニン) と収着性 (カリウム) のトレーサを用いた拡散試験を実施し, 実効拡散係数と分配係数を原位置にて取得することに成功した. 試験は, 健岩部と微小亀裂部2箇所で行い, 健岩部では室内実験から得られた既存の報告値と同等の実効拡散係数 (重水, ウラニン) と分配係数 (カリウム) が得られることを確認した. また, 開口幅0.5 mm以下の微小な亀裂が存在する部位をピンポイントで計測したところ, 拡散係数が1桁程度過大評価されることが判った. 地層処分の安全評価では, 拡散係数や分配係数等の核種移行に係るパラメータが不可欠であるが, マイクロ流路法ではこれらを原位置で迅速かつ同時に取得できることが示された.
  • 和田 隆太郎, 田中 知, 長崎 晋也
    2009 年 16 巻 1 号 p. 17-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     身近になく高度で巨大な科学技術は, その恐ろしさや未知性から社会的に受容され難いと言われており, 高レベル放射性廃棄物処分地の立地問題はその代表例の1つである. 本研究では既報で述べた技術本質による演繹的なアプローチにおける科学技術の社会的受容から見た高レベル放射性廃棄物の地層処分研究のあり方を検討した.
     放射性廃棄物処分分野は高い安全性を求めるが余り, 費用との相関を議論されていない. そのために経済原則が働かず, 際限なく安全性だけを求める動きとなっていた. 本研究では社会的受容性から端を発した検討として, リスク・ベネフィットの原則に則った意思決定が可能となるために費用の情報と共に安全性を示すことを試みた. その結果, この原則に則った安全性と費用の相関図により, 日本の既存のデフォルト案 (第2次取りまとめ) と海外事例との相関をわかりやすく整理でき, 日本の処分概念とその相対的な位置付けを他分野の専門家もまじえて議論することができる.
  • 土井 玲祐, 油井 三和
    2009 年 16 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では, Se以外の化学種による影響がない溶液系で実験が可能なサイクリックボルタンメトリーを用いてSe (IV) /Se (VI) の酸化還元反応の標準電極電位を求めた. 室温条件下でNaClO4を用いてイオン強度を調整した系 (I (mol·kg-1) =0.500, 1.00, 1.50, 2.00) で式量電位を測定し, 式量電位から特異イオン相互作用モデル (SIT) により標準電極電位を導出した. さらに, サイクリックボルタンメトリーにより得られるピーク電位のSe濃度依存性から, 次の反応の標準電極電位が得られた.
                HSeO3- + H2O = SeO42- + 3H+ + 2e-, E0 = 0.821±0.167 V vs. SHE
     本研究により決定したこの標準電極電位は, OECD/NEAの選定値より卑な値であり, OECD/NEAの選定値では矛盾していたSe (VI) の存在を確認した既往の実験研究を裏付けるものである.
  • 鈴木 英明, 藤﨑 淳, 藤田 朝雄
    2009 年 16 巻 1 号 p. 43-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分における人工バリア定置後のニアフィールドの挙動は, 廃棄体からの放熱, 人工バリア内への地下水の浸潤, 緩衝材の膨潤, 間隙水組成の変化など, 熱的, 水理学的, 力学的および地球化学的プロセスが相互に影響を及ぼし合う連成現象が生じることが予想される. このようなニアフィールド環境の理解と予測を目的に, ニアフィールドの連成現象を表現する熱-水-応力-化学連成挙動解析モデルの開発を行っている.
     本研究では, 人工バリア内で生じる連成現象を定量的に把握することを目的に, 工学規模の人工バリア試験を実施した. さらに, 開発中の連成解析モデルによる解析評価を通じて, 解析モデルの現状レベルを確認し今後の課題を抽出した.
     工学規模での人工バリア試験は, 廃棄体の発熱を模擬した温度勾配条件下において, コンクリート支保を想定したモルタルから高アルカリ性間隙水が不飽和状態の緩衝材へ浸潤する条件で実施した. そして, 埋設した計測センサーにより温度や含水比の変化を把握した. また, 緩衝材のサンプリング試料を対象とした鉱物分析によって, モルタルとの接触界面近傍でシリカを主成分とする非晶質物質の生成を示唆する結果が得られた.
     さらに, 開発中の連成解析モデルにより緩衝材中への高アルカリ性間隙水の浸潤にともなう地球化学プロセスに着目した熱-水-化学連成解析を実施した. そして, 緩衝材中の温度変化や再冠水挙動を試験結果と比較し, 解析モデルの妥当性を確認した. また, ポルトランダイドが溶解して高いCa濃度のモルタル間隙水が不飽和緩衝材中へ浸潤し, 一方, 緩衝材中ではカルセドニが溶解することから, モルタルとの接触界面近傍での析出物がC-S-Hゲルである可能性を示し, 試験結果と整合する結果が得られた.
     本研究を通じて, 開発中の連成解析モデルが, 緩衝材とコンクリート支保の地球化学プロセスの相互作用を考慮した連成現象の評価に適用できる可能性を示した. さらに, 緩衝材中での水蒸気移動による間隙水の濃縮や, 不飽和状態におけるモンモリロナイトの保水形態を考慮した地球化学反応の取扱いの必要性など, より現実的な連成解析モデルを構築するための課題を抽出することができた.
技術報告
  • 岩佐 健吾, 石井 卓, 張 至鎬, 沖原 光信, 斉藤 亮, 鈴木 啓三
    2009 年 16 巻 1 号 p. 57-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物地層処分においては, 何らかの理由により, ベントナイト緩衝材を撤去して定置した廃棄体を回収する場合があると考えられる. 塩水によって緩衝材を分解してスラリー状にして除去する方法に着目し, その適用の可能性と基礎的な特性を調べるために, 塩水 (NaCl水溶液) と小型の模擬緩衝材を用いた要素実験を行った. ベントナイトおよびケイ砂で構成されている模擬緩衝材は, 濃度3~4wt%の塩水に浸漬することで容易に粘着性を失って分解すること, 分解した材料と塩水のスラリーは短時間で沈殿すること, を確認した. また, 小型の模擬緩衝材に塩水を噴射する実験を行った結果, 塩水を噴射する方法は緩衝材を効率よく除去する上で効果的であることが判った.
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