地下水の水質や物理化学パラメータなどの地球化学特性は, その起源および岩石・鉱物との相互作用などの影響によって形成される. 本研究では、約9300点の深層地下水データのうち, 非火山地域のデータの抽出および地質による分類を地理情報システム (GIS) 上で行い, 約5200点のデータを4つのタイプの地質 (堆積岩類, 付加コンプレックス, 火山岩類, 深成岩類) を基に分類した後, 各地質における深層地下水の水温, pH, 主要イオン (Na, K, Mg, Ca, Cl, SO
4, HCO
3) 濃度の特徴の比較を行った. その結果, 総陽イオン濃度の平均値は各地質中の地下水間で有意に異なっており, 堆積岩類 (66.7 meq l
-1), 火山岩類 (43.0 meq l
-1), 付加コンプレックス (24.6 meq l
-1), 深成岩類 (11.0 meq l
-1) の順に低い傾向を示した. pHの平均値は地質間で大きな差は見られなかったが, 水温の平均値は火山岩類中の地下水が最も高い値を示した. 主要陽イオン (Na, K, Ca, Mg) 濃度の平均値は4種類すべてにおいて堆積岩類中の地下水が最も高かった. また, 主要陰イオンは Cl, HCO
3, SO
4がそれぞれ, 堆積岩類, 付加コンプレックス, 火山岩類中の地下水に最も多く含まれており, 水質に対する地質の影響の違いを確認することができた. 各陰イオンが優占する地下水の分布から, 火山岩類中の SO
4タイプの地下水は, 新第三紀火山岩 (グリーンタフ) の影響を受けていることが示唆された. 一方, 近畿~四国地方の付加コンプレックス中の HCO
3タイプの地下水は, 表層土壌や炭酸塩鉱物との反応だけでなく, 地下深部からのCO
2ガスの供給により形成されている可能性が考えられた.
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