土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 8 号
通常号(8月公開)
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 佐藤 顕彦, 西崎 到, 落合 盛人, 北根 安雄, 中島 和俊, 五島 孝行, 冨山 禎仁, 杉浦 邦征
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 24-00247
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では輪荷重による局所的な応答に着目し,歩道橋用FRP床版に補強敷板を設置することで軽量車両の通行を可能とする補強方法を検討した.まず,FRP角パイプからなる床版材の上にGFRP補強敷板を設置した試験体を用いて静的載荷実験を行った.実験の結果,補強により局所荷重に対する耐力は4倍以上に向上することを明らかにした.さらに実験時の観察から補強後の試験体においては床版材角部分のき裂が生じて最大荷重を迎えることがわかった.続いて,FEMを用いた再現解析を行い,補強後の床版材では角部分とウェブの境界で最大応力を生じること,この部分の応力が引張強度に到達すると角部分のひずみが非線形性を示すことを明らかにした.最後に,再現解析結果をもとに,補強した床版材に生じる曲げ応力の簡易的な理論計算方法を示した.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 久保 英二朗, 天川 啓紀, 勝原 亮介, 銭 潮潮, 船橋 昇治, 田中 耕司, 中安 正晃, 朝堀 泰明, 小山 直紀, 池内 幸司, ...
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 25-00012
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     外水氾濫による広域的な浸水は甚大な被害をもたらすため,氾濫発生後から迅速かつ正確な氾濫に関する情報を提供する必要がある.このような背景の下,本研究では,Dynamic-Mode-Decomposition(DMD)を応用した氾濫解析の高速化と浸水センサの観測データを用いた補正手法を組み合わせ,高速かつ精度の高い氾濫予測を行うための手法を提案した.本手法に基づく氾濫予測システムを開発し,その精度を2015年の鬼怒川の氾濫実績で検証を行った.その結果,1)浸水センサのデータに基づき補正手法の実装により,氾濫予測精度を向上させることができ,2)氾濫解析の高速化により迅速な予測が可能であることが確認できた.ただし,3)過剰適合が発生しないDMDモード数の設定が計算の安定性に重要であることを示した.

  • 瀬木 俊輔
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 25-00026
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,国土地理院が公開する数値標高モデル(DEM)を用いて,氾濫解析に必要な河道縦横断データを自動的に抽出する手法を提案する.提案手法は,国土数値情報の河川データに基づいて河道中心線を設定し,左岸端・右岸端の位置を推定するヒューリスティックにより,河道範囲を自動的に決定する.処理の過程では,複数のパラメータ調整が必要となるが,手作業は最小限に抑えられており,個人レベルでも運用可能である.また,水面下の標高がDEMでは得られないという制約に対しては,不等流計算を用いた横断面形の推定により対応している.北海道・石狩川下流部への適用結果から,本手法が実用性を備えたものであり,抽出された縦横断データが既存の横断測量結果と整合的であることが確認された.

  • 間瀬 肇, 渡辺 健, 渡辺 啓生, 佐藤 兼太, 井口 真生子, 原 知聡, 武田 将英, 金 洙列
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 25-00084
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,波浪予報値の誤差を考慮して,翌日の海上作業の可否を判断するための許容波高予報値を求める方法を示した.著者らの以前の研究は,安全率を乗じた予報値,誤差のRMSを加えた予報値が作業限界波高以下であれば作業可能と判断し,その安全裕度を算定するものであった.本研究では予報誤差の90パーセンタイルおよび95パーセンタイルを取り入れて,翌日の海上作業が可能である許容波高予報値を全国的に算定した.予報誤差分布は,多くの場合,正規分布が仮定されるが,実際に正規分布に従う地点は少なく,多くは尖った,前傾した,後傾した三角形分布であった.こうした誤差分布を考慮して,全国60地点の許容波高予報値を一覧できるように表と図を作成した.

報告
  • 池田 直太, 野本 啓介, 西村 拓, 権藤 宗高, 原 信彦, 平井 俊之, 林 洋介, 小泉 勝彦
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 25-00011
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     高知港では,2017年から港湾整備事業と海岸事業の 2 つの枠組みを用いた(所謂)「三重防護」と呼ばれる地震・津波対策を実施している.この「三重防護」プロジェクトの決定過程においては,(1)海岸事業による海岸堤防の強化,(2)可動式防波堤による浦戸湾口の閉鎖,(3)港湾整備事業による防波堤の粘り強い化と海岸事業を一体的に企画した三重防護の3案を比較検討した.三重防護の採用に至る過程の中では,可動式防波堤の構造形式の選定や「粘り強い化」された防波堤の存在を考慮した整備計画の比較など,巨大地震津波に対する対策を行う上で参考となりうる事項がいくつか検討されている.本報告では,三重防護に至る検討経緯を時間軸に沿って概観することで高知港における三重防護プロジェクトの新規性と得られた知見を明らかにする.

土木計画学
論文
  • 渥美 龍哉, 青木 俊明
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 24-00299
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     公共事業では,事業に対する人々の理解を深め,円滑な事業進捗を目指して住民参加が導入されてきた.しかし,住民協議が難航する事業は少なくなく,難航化すれば,様々な社会的損失が生じる.このような事態を回避するためには,協議の難航化要因と難航化への推移過程を明らかにすることが有用となる.そこで本研究では,国土交通省の出先機関と地方自治体を対象に質問紙調査を行い,難航化事例を挙げてもらった上で,その難航化要因と協議の推移過程を検討した.その結果,一見すると協議が容易に進むと思われる事業であっても難航化する可能性があり,その原因は事業によって異なること,行政に対する信頼感が協議の推移過程の分岐要因になりうること,難航化を避けるには,情報開示をはじめとする手続き的公正要因が重要であることなどが示された.

土木技術とマネジメント
論文
  • 小宮 涼, 中村 健二, 塚田 義典, 梅原 喜政, 新名 恭仁, 今井 龍一
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 25-00002
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     我が国では,都市空間のデジタルツインの構築を推進しているが,屋内空間の本格的な整備は進んでいない.近年,可搬型端末に搭載されたLiDARを活用することで,屋内空間の3次元形状を点群データ(以下,点群)として容易に計測できる.市民協働によって可搬型端末から点群を大量に計測・収集・合成ができれば,都市空間のデジタルツインの屋内空間を補間できる可能性がある.しかし,多様な点群のノイズや欠損等の特性の差異により,可搬型端末で計測した点群を正確に重畳することは難しい.そこで本研究では,特性の差異に対して堅牢な点群の補間手法を考案した.既存手法と比較した結果,本手法は可搬型端末で計測した点群を正確に重畳できることが確認され,デジタルツインの補間に可搬型端末で計測した点群を活用できる可能性が明らかになった.

報告
環境と資源
論文
  • 陳 凱杰, 田中 仁志, 武田 文彦, 蛯江 美孝, 山崎 宏史
    2025 年81 巻8 号 論文ID: 24-00238
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     現在,生物応答を用いた排水の生態影響評価手法が事業者の自主管理方法として利用されている.筆者らの既往研究において,合併・単独処理浄化槽放流水および生活雑排水が藻類生長に及ぼす生態影響を明らかにしたものの,毒性原因物質群までは特定できていなかった.そこで本研究では,藻類生長阻害があった合併浄化槽放流水8件,単独浄化槽放流水13件,生活雑排水12件を対象に,毒性同定試験を実施し,原因物質群を調査した.その結果,対象となった合併浄化槽放流水では酸化剤,無極性有機物が,単独浄化槽放流水ではPO4-P,NH3-N,無極性有機物が,それぞれ,藻類への生長阻害影響を与えていると推定された.生活雑排水に関しては各家庭で使われた洗剤の成分や管路の金属成分が原因と考えられた.

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