日本医療・病院管理学会誌
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58 巻, 4 号
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巻頭言
研究論叢
  • 髙橋 好江, 武村 雪絵, 市川 奈央子
    2021 年 58 巻 4 号 p. 96-104
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル フリー

    看護職の仕事に対するエンゲージメントは離職防止や質の高いケアにつながることから,組織運営上の重要な関心事項である。ワーク・エンゲージメントが広く知られた概念だが,他のエンゲージメント概念も存在する。本研究では,ワーク・エンゲージメントを含む「仕事におけるエンゲージメント」全般について文献検討を行い,概念の研究潮流を概観し,各エンゲージメント概念の定義と焦点を整理した。その結果,(1)仕事上の役割と自己との関係性に着目したパーソナル・エンゲージメント,(2)組織業績向上のための人材資源管理ツールを目的とした従業員エンゲージメント,(3)仕事そのものに対するポジティブな心理状態を捉えたワーク・エンゲージメントの3つに分類された。これらから,組織で働く看護職におけるエンゲージメント研究の課題と今後の研究の方向性を提示した。

研究資料
  • 山内 和志, 森脇 睦子, 河原 和夫
    2021 年 58 巻 4 号 p. 105-118
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル フリー

    目的 新型コロナウイルス感染症への公衆衛生対策に関して,オンライン調査に協力が得られた集団の回答から意識を明らかにし,今後の対策の検討に知見を提供すること。

    方法 東京都1600人,新規感染者の少ない5県400人の医療・福祉関係者以外の成人を対象にオンラインで意識調査を2020年8月7日に実施し,調査データの統計解析を行った。また,感染に関する情報の提供や求められる生活や行動の制限等の対策に協力することに影響を与える因子を明らかにするため,多変量解析を行った。

    結果 感染に関する情報の提供や求められる生活や行動の制限等の対策に,何らかの協力の意思を示す回答の割合は90%以上あった。対策に協力しない場合,「罰則(法律による罰則など)を適用する」,との回答は3割前後あった。対策への協力については,感染に関する情報が「積極的に公開されるべきだ」,と考え,男性より女性,年齢が高い,感染者が知り合い等に存在しない方が全面的に協力する,と回答する傾向があった。協力する理由は,「感染症の流行を防ぐのに役立つ」,「自分や家族を感染症から守りたい」,との回答が多かった。

    結論 本調査の結果,新型コロナウイルス感染症の対策に対する協力の意識は高かった。一方で,協力しない人には罰則を適用すべき,との回答も一定数認められた。男性,比較的若い世代,感染者が身近にいない成人に対策への協力を促す取り組みを検討することが,今後の対策の検討に向けて有効な方向性となると考えられ,その際に情報公開されることが判断する要素と一つ考えられることがわかった。

  • 木田 亮平, 國江 慶子, 佐々木 美奈子, 堀込 由紀, 米倉 佑貴, 武村 雪絵
    2021 年 58 巻 4 号 p. 119-130
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル フリー

    本研究は,全国の病院における病床規模別の看護師募集状況と応募状況,そのバランス,希望する人材と採用活動の実態を把握することを目的とした。

    2019年1~2月にかけ,全国の病院から層化無作為抽出した3,060施設を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,施設属性,看護師の募集・応募状況,採用活動等を尋ねた。

    結果,研究協力に同意した992施設から回答を得た。募集者数と応募者数のバランスは,100~199床の施設で応募者数が募集者数に満たない施設数が多かった。特殊人材の募集状況は,役職者は99床以下,60歳以上の新規採用者は100~199床,認定看護師や専門看護師は200床以上の施設での募集施設数が多かった。採用活動では,99床以下の施設で実施施設数が少なかった。施設間・病床規模間の看護師偏在を是正するため,特に小規模施設への採用活動支援と効果的なマッチングシステムが必要であることが示唆された。

  • 矢坂 泰介, 五十嵐 歩, 二宮 彩子, 髙岡 茉奈美, 姉崎 沙緒里, 山本 則子
    2021 年 58 巻 4 号 p. 131-139
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル フリー

    目的:医療療養病棟において医療区分を規定する根拠となる項目(医療区分根拠項目)の評価結果を用いて患者状態を類型化し,特徴的な患者状態や医療・ケアを可視化する。

    方法:5施設の医療療養病棟入院患者364名を対象に診療録調査を行った。医療区分根拠項目の評価を用いた階層的クラスター分析を行い,患者の基本属性データを用いて類型別の患者状態の特性を比較した。

    結果:対象患者は,静脈栄養群,人工呼吸器管理群,気管切開管理群,広範医療支援群,混合群の5群に分類でき,各群において患者の疾患,状態,医療処置,年齢,入退棟経路,ADL等に特徴が認められた。

    考察:医療区分根拠項目を用いて,医療療養病棟入院患者の特徴的なパターンを可視化できた。一方で本研究の患者類型化は,機縁法による5施設のデータを用いたという点で限界がある。今後はより包括的な患者状態・ケアニーズの評価及び対応するケアを確立するための研究が必要である。

総目次
編集後記
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