日本医療・病院管理学会誌
Online ISSN : 2185-422X
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59 巻, 1 号
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巻頭言
研究論叢
  • 柴原 秀俊, 井上 幸恵, 小林 美亜
    2022 年 59 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    [背景]わが国の費用対効果評価制度では,基本分析は「公的医療の立場」で行い,公的介護費は含めないこととされている。一方,英国NICEの技術評価では公的介護費も含めることが認められている。今回は英国の意思決定における公的介護費の扱いについて調査し,日本への示唆を得ることを目的とした。[方法]2021年3月10日時点で公表されている技術評価ガイダンスのうち,神経系疾患を対象に,費用対効果の評価に含まれている費用の詳細をレビューし,公的介護費の扱いを調査した。[結果]30件のうちの13件において,介護施設への入所費用,訪問介護,居宅介護支援等,日本の公的介護サービスに相当する公的介護費を含めた費用対効果評価が実施され,意思決定に用いられていた。[結語]医療技術評価(HTA)を取り巻く世界の動向からも,わが国における費用対効果評価制度における公的介護費の取り扱いについて今後さらなる検討が必要と考えられる。

研究資料
  • 宇城 令
    2022 年 59 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    目的 医師の診療提供状況に影響を及ぼす勤務状況,ストレス反応,職務満足等との構造を明らかにする。

    方法 対象は関東地方を中心に,200床前後以上の病院を便宜的に96病院を選出し,協力が得られた41病院の医師614名に自記式質問紙調査を行った。目的変数は「診療提供状況」,説明変数は「ストレス反応」「職務満足」等とし,構造方程式モデリングを用いて分析した。

    結果 「診療提供状況」に最も影響を与えていたのは「職務満足」であり,次いで「キャリアを高められる環境」が「職務満足」を介して間接的にも影響を及ぼしていた。他方,「勤務状況」の負担感は「身体的自覚症状」を高め「職務満足」を低下させていた。

    結論 「診療提供状況」の向上には,医師の「職務満足」に注目し「キャリアを高められる環境」を整えることが重要である。そして,「職務満足」を低下させる「身体的な自覚症状」を軽減するためには「勤務状況」のあり方を検討する必要性がある。

  • 大儀 律子, 齋藤 信也
    2022 年 59 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    療養病床の看護管理者には,看護職と介護職の協働関係構築という,一般病棟とは異なる取組みが要求される。この観点から,本研究は,「看護職と介護職の協働関係構築のための看護管理者の能力測定尺度試作版(介護職評価用)」を用いて,看護職と介護職の協働関係構築に対する看護管理者の取組みについて,介護職の評価に影響を及ぼす要因を中心に分析を行った。対象は,42病院の療養病床で働く介護職834名であった。尺度全体の平均得点及び5つのカテゴリー別得点を目的変数,介護職の属性及び職場環境を説明変数として,重回帰分析を行った。その結果,介護職の職場環境が看護管理者の取組みの全体的な評価に影響することが明らかとなったが,個人属性の影響は確認されなかった。

    本尺度を用いた介護職が評価する療養病床の看護管理者の能力の測定は,看護管理上に有用である可能性が示唆された。

  • 伊藤 弘人, 有賀 徹, 佐原 あきほ, 山崎 清
    2022 年 59 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    【目的】国公立・公的医療機関は,診療報酬と患者の自己負担に加えて,税金や運営費交付金に基づく医療機能を有する。本研究の目的は,労災病院の立地する二次医療圏をモデル的に取り上げ,地域経済循環構造分析を用いて,地域経済循環における間接的波及効果を明らかにすることである。【対象と方法】対象は,32の労災病院が立地する29の二次医療圏である。環境省が提供している「地域経済循環分析自動作成ツール」を用いて,域内総生産および域内総生産に占める消費,投資,その他の経常収支(以下「経常収支」とする)の割合を算出し,各二次医療圏における域内総生産に占める域外からの財政移転の割合と,雇用者所得に占める保健衛生等の割合を基準に二次医療圏を分類した。両割合が平均値以上である二次医療圏を,操作的に財政移転・保健衛生雇用依存地域と定義し,この地域の経済循環構造パターンの特徴を,他の二次医療圏のパターンとの比較から抽出した。【結果】財政移転・保健衛生雇用依存地域は,南空知,釧路,八戸,大舘・鹿角,鳥取西部,北九州,飯塚,佐世保北,八代の9つの二次医療圏であった。この地域のすべての二次医療圏では,消費は流入する一方,投資と経常収支は流出し,総合的な収支も流出しているという独特な地域経済循環構造パターンを示していた。他の20地域でこのパターンが認められたのは,新潟県上越二次医療圏,富山県新川二次医療圏,岡山県南東部医療圏および香川県西部二次医療圏であった。財政移転・保健衛生雇用依存地域のすべての二次医療圏において,地域の雇用者所得に占める割合が最も高い産業は保健衛生等であった。【考察】財政移転・保健衛生雇用依存地域では,住民を支える最大の産業は保健医療領域であり,医療機関は診療報酬等の財政移転の受け皿となり,地域の雇用を維持し,地域の消費を支えていることを,本結果は示唆していた。サービスの生産と消費が同時に行われるという医療の特徴を踏まえ,医療は財政移転・保健衛生雇用依存地域の生産・消費拠点として,地域経済の域内循環の促進および地域企業・人材の育成に寄与できると考えられる。【結論】地域経済循環構造の観点から,医療の間接的波及効果には,医療サービスの対価として公費を受け取り,地域での雇用を支え,地域の消費を喚起する側面がある。

編集後記
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