日本医療・病院管理学会誌
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59 巻, 4 号
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巻頭言
研究論文
  • 荒井 耕, 古井 健太郎
    2022 年 59 巻 4 号 p. 130-138
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    各「主たる診療科」が有床診療所の各種財務面に有意な影響を与えているかを,各種要因間の影響を統制しつつ検証した。また相対的に強い影響力を持っている診療科およびそれ以上に強い影響力を有する要因についても明らかにした。採算性は整形外科などでは悪く眼科などでは良い一方,眼科などでは資産効率性は悪いなど,各診療科及び各財務面によりその影響状況は異なることが判明した。そのため各財務面を一括した評価は困難であるものの,内科と比べて眼科や耳鼻咽喉科,次いで小児科は,総合的に財務状況が良い一方,産婦人科や整形外科は総合的に悪い状況であった。また診療科の中では眼科であることの財務的影響が全般に強いこと,しかし全要因の中ではそれ以上に経済規模(事業収益及び総資産額)が特に影響力が強いことも判明した。ただし本回帰モデルの決定係数は十分に大きくはなく,影響要因が他にも多く存在する点には留意が必要である。

研究資料
  • 佐瀬 雄治
    2022 年 59 巻 4 号 p. 139-146
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    近年我が国でも,家庭医療の専門性が認識されつつあるが,家庭医療専門医はその広告が認められておらず,診療所の名称にもその規制が及び,地域住民や患者に診療所名だけではその専門性が伝わりにくいという問題がある。そこで本研究では,家庭医療専門医の勤務施設として登録されている診療所162施設を対象とし,診療所の名称を要素に分解し使われる用語,特に専門性に関するものについて検討を行い,診療所名へ反映されているかどうかを検討した。分析の結果,延475語,使用用語は86語確認され,複数回確認された用語は23語であった。家庭医療の専門性に関する用語である「ファミリー」「家庭医療」「ホーム」は全体の24.7%で使用されており,近年3用語の使用も有意に増加していた。一方で,残りの施設においては家庭医療の専門性に関する用語を名称に用いておらず,どの程度住民や患者に家庭医療専門医の存在を認知できているかの検証も必要であると示唆された。

  • 福田 幾夫, 池内 淳子
    2022 年 59 巻 4 号 p. 147-156
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    【目的】災害被災を前提とした病院の事業継続計画(BCP)準備状況のうち患者搬送,医療品備蓄を評価する。【対象と方法】2,537病院にアンケート調査用紙を郵送し,回答があった495病院の回答から搬送・備蓄・BCP整備状況に関して解析。【結果】エレベーター停止時の搬送方法としては担架393病院(79.4%),ついでおんぶ,シーツに包んで,非常用車椅子の順であった。患者用非常食の備蓄は倉庫での一括備蓄が最も多く,ついで厨房,病棟の順であった。職員の交通手段は自家用車,公共交通機関,徒歩の順であり,職員用の食料備蓄は66.1%で確保しており,3日分が最多。災害時医薬品備蓄は2~3日分が66.3%,備蓄なし11.5%であった。病院被災を前提とした災害対策マニュアルは66.5%で整備済み,25.9%で作成中であった。病院被災を想定した災害訓練の実施は44.8%であった。【結論】病院被災時のBCPに基づく災害対策マニュアルは多くの病院で作成されているが,災害を想定した訓練の実施は少ない。

  • 高山 真, 有田 龍太郎, 小野 理恵, 只野 恭教, 菊地 章子, 稲葉 洋平, 中村 直毅, 阿部 倫明, 石井 正
    2022 年 59 巻 4 号 p. 157-167
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    【目的】COVID-19軽症者等宿泊療養施設で行った情報共有・往診システム構築とその貢献度の検証を目的とする。

    【方法】2020年4月~翌年10月31日の期間,宮城県新型コロナ調整室の記録と診療録をもとに,東北大学病院が医療支援した療養施設における課題対応を後方視的に抽出し,その貢献度を死亡者数などから検討した。

    【結果】調査施設入所者は期間中4057名であった。課題としては管理番号が部署毎に異なる,情報が紙運用,伝達方法やフォーマットの不統一,などが挙げられた。課題解決のため管理情報を電子化し,広域ITシステムを活用して複数の部署間の情報共有を図った。さらに東北大学病院からの往診を円滑に行うための遠隔カルテの導入と施設内で行う検査と治療のシステムを整備した。以上の対応により調査期間中の施設内死亡者は0例であった。

    【結論】医療機能付き療養施設と呼ばれるに至ったシステム構築と貢献について報告した。

  • 長井 聡子, 大河原 知嘉子, 湯本 淑江, 緒方 泰子
    2022 年 59 巻 4 号 p. 168-176
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

    スタッフ看護師が“いきいきと働く”経験に影響した要因(個人の要因と仕事の要因)を明らかにすることを目的とした。

    関東圏の看護師10名を対象とした半構造的インタビューにより看護師として“いきいきと働く”経験にどのようなことが影響していたのかを尋ねBerelson. Bの内容分析の手法により分析した。

    分析の結果,【努力が良い結果につながる】,【安心して働ける環境】,【先の見通し】,【仕事に対して当事者意識を持って取り組む】の4つのコアカテゴリーと12のカテゴリーが抽出された。スタッフ看護師が“いきいきと働く”経験には多彩な要因が影響しており,自身の看護実践が良い結果を生む経験から自己効力感が高められる個人の観点や,安心して働ける職場環境があることで自身の看護ケアを遠慮せず安心して行えると感じる仕事の観点があった。特に【先の見通し】は仕事の意味や仕事に対する準備状況を表す内容を含む要因が重要であると考えられた。

総目次
編集後記 
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