日本医療・病院管理学会誌
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48 巻, 3 号
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巻頭言
研究論文
  • —国立病院機構の黒字病院と赤字病院とのグループ間比較—
    下村 欣也, 久保 亮一
    2011 年 48 巻 3 号 p. 129-136
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/16
    ジャーナル フリー
    本論文は,独立行政法人国立病院機構の財務諸表データを用いながら,黒字病院グループ(N=57)と赤字病院グループ(N=44)におけるコスト構造に差があるのかどうかを定量的に分析した。その結果,(1)保険査定・(2)給与費・(3)材料費・(4)診療材料費・(8)設備関係費・(9)減価償却費・(10)経費・(11)支払利息の項目で2グループ間に差があることが明らかになった。
    本論文の示唆として以下の点を上げることができる。第1に,定量的な分析手段を用いて,病院経営におけるコスト効率の重要性を検証していることである。第2に,黒字病院と赤字病院の境界線を分かつ可能性のある費用項目を具体的に明示したことである。第3に,病院経営においてコスト集中戦略が有効である可能性をデータ分析により示したことである。
研究資料
  • 尾形 倫明, 濃沼 信夫, 伊藤 道哉, 金子 さゆり
    2011 年 48 巻 3 号 p. 137-145
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,訪問看護ステーション利用者を自宅で介護する家族を対象に,家族介護への現金給付の賛否と賛否の要因を明らかにし,家族介護にとっての介護サービスと現金給付のあり方を検討することを目的とする。介護者850名に質問紙調査を実施した結果,350名から回答を得た。現金給付への反対33.3%,賛成37.4%,どちらともいえない29.3%であった。現金給付の賛成要因は,経済的に利用できないサービスの存在,費用の負担感が高いことで,反対要因は,問題行動,地域にサービスがないことであった。
    現金給付に対する賛否は分かれ,今後国民的な議論が求められる。介護保険のあり方として,低所得世帯への費用軽減,サービス不足の地域には整備を図り,その上で現金給付を家族介護の評価として考慮する仕組みが望まれる。現金給付に際しては,家族介護の質を担保する仕組み,特に第三者によるモニタリングなど環境整備が求められる。
  • —深夜勤務中の活動量,眠気,疲労感および生理学的指標の変化—
    折山 早苗, 宮腰 由紀子, 小林 敏生
    2011 年 48 巻 3 号 p. 147-156
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/16
    ジャーナル フリー
    目的は,深夜勤務時の看護師の活動量,眠気,疲労感および生理学的指標の変化より,深夜勤務労働が看護師に及ぼす影響を明らかにすることである。
    深夜勤務の看護師7人(以下,「臨床」群)と,大学生15人(以下,「コントロール」群)を対象として,両群ともに1時間毎の舌下温,疲労感(Visual Analog Scale:VAS),眠気(VAS)を測定し,さらに看護師には心電図,活動計も装着した。
    結果,両群ともに,疲労感と眠気,疲労感と時刻に正の相関関係を認め,時間の経過とともに疲労感が増加し,眠気も疲労感と同様に変化することが明らかとなった。しかし,「臨床」群は午前6時に活動量が増加したことで,「コントロール」群より体温の上昇,眠気の軽減,疲労感の減少を有意に認めたものの,周波数成分の変化からは午前6時以降に疲労の増加が示された。朝方の活動量の増加,緊張感が眠気を抑制し,疲労感が隠蔽されている可能性が示唆された。
  • 江上 廣一, 廣瀬 昌博, 竹村 匡正, 岡本 和也, 津田 佳彦, 大濱 京子, 本田 順一, 島 弘志, 今中 雄一, 吉原 博幸
    2011 年 48 巻 3 号 p. 157-169
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/16
    ジャーナル フリー
    入院患者の転倒・転落に起因する検査や治療は,原疾患の診療とは異なり,本来不要で,その追加的医療費は保険者である行政や病院管理者等にとっては看過できず,医療経済学上,正確な把握が必要である。本院における2007年∼2009年度の3年間のインシデントレポート7,717件について,転倒・転落件数は影響度レベル別にレベル2が824件,レベル3aが298件およびレベル3bが46件であった。そのうち,あらたな医療費(追加的医療費)が確認できた件数(費用判明率)および1件あたりの平均追加的医療費は,レベル2が205件(24.9%)および10,070±7,934円,レベル3aが186件(62.4%)および12,859±15,772円,レベル3bが34件(73.9%)および226,723±281,065円で,レベル2・3a間(p=0.027),3a・3b間(p<0.001)でも有意差を認めた。この結果から,年間あたりの追加的医療費を推計すると,各レベル別にレベル2が2,744千円,レベル3aが1,281千円およびレベル3bが3,476千円で,総額約7,000千円と推計された。したがって,医療安全管理の立場から,効率的な転倒・転落防止策として,3b事例を防止することが重要であることが示唆された。
  • 濱田 啓義, 関本 美穂, 今中 雄一
    2011 年 48 巻 3 号 p. 171-179
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/16
    ジャーナル フリー
    昨今,社会問題となっている産婦人科診療における業務量を評価するためにDPCデータを併用するタイムスタディを新規に開発し,実施した。
    協力が得られた4病院,34名の産婦人科医師を対象に1週間の自己記入式タイムスタディを実施。その後,調査期間のDPCデータから産婦人科患者に実施した診療行為を集計。タイムスタディとDPCデータを突合し,どのような診療行為が業務時間の原因となるかを把握した。
    その結果,医師1人1日あたりの合計業務時間は558分,内訳は外来122分,病棟306分,手術87分,その他の業務42分であった。DPCデータとの突合より,病棟における業務は主に手術件数,経腟分娩件数,ICU患者数により説明されることが判明した。さらにこれらの結果から各医療機関における業務量と必要な産婦人科医数の推定が可能であった。今後,これらを踏まえて医療提供体制構築の方策を検討していく必要がある。
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