情報通信学会誌
Online ISSN : 2186-3083
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32 巻, 1 号
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論文
  • 実積 寿也
    2014 年 32 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    インターネット政策声明を執行可能なルールとすることを目指した連邦通信委員会(FCC)の努力は、Comcast事件とその後の控訴審判決での敗訴の経験を経て、2010年12月にオープンインターネット命令として結実した。ブロードバンド事業者が遵守すべき開示義務、公平義務および接続義務を定める本命令は、ビジネスの自由を求めるプロバイダにとっては行動の自由の制約に他ならない。本命令の有効性に関し、2014年1月14日に巡回控訴裁判所が下した結論は、開示義務以外の有効性を否定しており、一見すると、プロバイダ側の主張が全面的に認められFCCの努力が無に帰したかのように見える判決ではある。しかしながら、詳細に評価してみると、ネットワーク中立性問題に対する規制権限を確立し、しかも命令が本来実現しようとしていたはずの効果にはほとんど影響がないという、FCCにとっては実質的な勝訴に他ならず、むしろプロバイダ側にとっては何の問題解決にもならなかった可能性がある。
  • 児玉 晴男
    2014 年 32 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    大学講義をネット公開する流れは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンコースウェア(OCW)から大規模公開オンラインコース(MOOC)へ移行している。そこには、オンライン講義の公開に関する課題がある。第一は、MOOC では明確ではないものの、OCWではクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスによっている点である。第一の課題は、CCライセンスは米国の著作権制度に準拠するものであり、わが国の法的・倫理的な対応とはいえない。第二は、著作物のOCW等は登録商標でもあり、そしてOCW等の公開の仕組みは特許権の関与も想定される点である。第二の課題は、著作権管理のみでなく、総合的な知的財産権管理が求められてくる。それら課題を解決するためには、わが国の社会制度との関係が明らかにされなければならない。それは、「著作権と関連権」の保護と制限、商標権と特許権も含み、倫理の対応へ及ぶものになる。本稿は、オンライン講義の公開に関する「著作権と関連権」とcopyrightとの相互関係ならびに産業財産権および倫理に関する総合的な知的財産権管理について明らかにする。
論説
  • 米国オープンインターネット規則の概観
    海野 敦史
    2014 年 32 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    憲法21条2項後段にいう「通信」の利用の局面において、憲法14条1項にいう「差別」禁止の義務を負う主体については、「通信の秘密」の侵害主体に通信管理主体が含まれると解されることにかんがみ、公権力のみならず通信管理主体もこれに含まれるものと解される。当該局面における平等の保障のあり方に関して、不当な差別の禁止を正面から掲げる米国のオープンインターネット規則(2014年1月の司法判断による一部無効化前のもの)は、その具体的な検討の参考になると思われる。当該規則策定の背景には、ネットワークを支配・管理する回線管理事業者が、それに依存してコンテンツ等を一般利用者に供給する特定のプラットフォーム事業者のトラフィックを差別的に取り扱った事実があるが、このような通信管理主体としての回線管理事業者が負うべきプラットフォーム事業者を「平等」に取り扱う憲法上の義務の具体的内容・範囲については、回線管理事業者自身の財産権や営業の自由とも関係して、一義的に特定することが難しい。オープンインターネット規則の下では、プラットフォーム事業者が回線管理事業者の役務を利用する局面においては、ネットワークの使用量に応じた従量課金や混雑等発生時の帯域制御については不当な差別に該当しないとされる一方で、特定のトラフィックの優先取扱いについてはこれに該当する可能性が高いとされていたことが特徴的である。
寄稿論文
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