日本科学教育学会年会論文集
Online ISSN : 2433-2925
Print ISSN : 2186-3628
ISSN-L : 0913-4476
47
選択された号の論文の267件中251~267を表示しています
論文集
  • 板橋 克美
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    諸外国で育成が重要視されているコンピューテショナルシンキング概念(CTC)が,理科で必要な資質・能力である科学的推論力と相関があるか否かについて,大学生へのプログラミング学習を通して検証した.本研究では,中学校理科「雲のでき方」に関して,Scratchを用いたプログラミング学習を実施し,学生の成果物を基に,「コード忍者の里」と呼ばれるコンテンツを用いてCTCを評価した.その結果,CTCと科学的推論力との間には強い正の相関があり,科学的推論力が高い学習者ほど,プログラミング能力が高いことが示唆された.

  • 教材・ICT環境等の整備が不十分な公立小学校の事例
    和田 重雄, 苅谷 直人, 小口 雅雄
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    小学校でのプログラミング教育実施開始にあたり,先進的研究などが行われなかった多くの学校で,児童用の端末やアプリケーションなどの準備が間に合わなかった.そのような環境でも,児童の論理的思考力を育むため,一小学校の全教職員でプログラミング教育の実践研究を行い,独自のプログラミング教育カリキュラムを開発した.その特異性として,完全ビジュアル型のプログラミング言語であるViscuitを1~4年生で大きく取り上げ,プログラミング的思考の基盤をしっかり身につける点が挙げられる.また,教科の単元学習に活用できる多くのアンプラグドの教材を開発した.これは,思考力を育む指導法を改めて確認することにもつながった.

  • 佐々木 弘記
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    小学生の物理レベルの視点転換能力と社会レベルの視点転換能力の関係を調べるためにO県内の2つの小学校の第3,第4学年の児童73人を対象として調査を実施した.物理レベルの視点転換能力の調査については,ピアジェの「3つの山問題」を援用した課題を,社会レベルの視点転換能力の調査については,役割取得能力の発達段階を調べる課題を用いた.調査の結果,前者の正答数と,後者の発達段階の段階数との間に相関関係が見られなかったことから,物理的レベルの視点転換能力と社会レベルの視点転換能力はそれぞれ独立して発達していくことが明らかになった.この結果は5~6歳の幼児を対象に行った先の調査結果と一致した.よって,当初は物理レベルの視点転換ができるようになってから社会レベルの視点転換を促す学習活動を行うという順序を想定していたが,必ずしもその必要がないことが示唆された.

  • ‐初等・中等教育段階でのSTEM分野のジェンダー・ギャップ解消の視点からの分析‐
    宮国 泰史, 東江 あやか, 福本 晃造, 杉尾 幸司
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    琉球大学が小中学生および高校生を対象に実施する科学教育プログラム「琉大ハカセ塾」および「琉大カガク院」における,学年ごとの男女の応募傾向や受講生が取り組む研究テーマの内容について分析を行った.応募者の女子比率は,小学校段階においては3割程度と低いが中学校3年生および高校段階における女子比率が5割以上を示すなど,学年の進行に伴って上昇し,女子が男子よりも科学教育プログラムに対する積極性を示す傾向が明らかなった.また,同プログラムで高校生の取り組む研究テーマについて,工学分野や理学分野のテーマが含まれるなどが確認され,大学等が実施する科学教育プログラムが意欲高い女子生徒の層の受け皿として機能し,理数系のジェンダー・ギャップの解消に寄与しうることが示唆された.

  • 高見 朋美, 井上 徳之
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    Society 5.0の社会を地域から支える人材の育成が求められ,地域との協働が重視されるようになった.本研究では,地域の基幹産業「井原デニム」を探究活動に活用した岡山県立井原高等学校の「デニム学」の取組みについて,地域産業と連携したSTEAM教育の視点から報告する.この地域産業との取組みには,基盤となる科学技術(ST),製造に関わる工学(E),ファッションとしてのアート(A),デザインや製造販売に関わる数学(M)のように,STEAM教育として活用できる特徴がある.総合的な探究の時間に課題研究を実施するため,カリキュラム・指導法の開発,教科間連携,校外とのネットワーク構築などに取り組んだ.普通科と地域生活科の1年生で展開している「デニム学基礎」を中心に報告する.

  • 井上 徳之, 長谷川 浩一, 栗田 昌典
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    STEAM教育として高大連携による「メダカの透明骨格標本」づくりの実験プログラムを開発した。透明骨格標本は、生物の肉を取り除くことなく、薬品で筋肉を透明にし、骨に色をつけた骨格標本である。通常の骨格標本と違い、筋肉はそのまま残っているので、生物が生きていた時の姿で、その骨格を観察することができる。本研究では、課題研究のカリキュラム開発の中で、シリーズ授業(ユニット)としてのプログラムを開発した。実験では、安全に適切な作業を行うために教員用「手引き」や生徒用「実験ノート」を作成するとともに、倫理観を伝える研究者のビデオメッセージなどの教材開発を行い、成果普及が展開できるようにした。

  • 戸田 孝
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    地域の具体的な自然現象を取り扱う場合に理工系博物館(いわゆる科学館)と自然史系博物館の双方の方法論に跨るような活動が必要となる場合があるが,科学館として効果的な手法が対象の自然史現象と乖離してしまう場合がある.この状況への打開策を追究する一環として国内各地で自然史系館と理工系館に跨る活動をしている自然科学系博物館の運営実態を調査した.その結果,双方の併存を志向している館では互いを「異なる館種」として相互連携をしようとする傾向があること,自然史分野も取り扱っている科学館では現場の技術面が障害になっている傾向があることが明らかになった.科学館的説明を必要としている内容を系統的に扱っている自然史系館は少ないが,科学館的説明と自然史現象との親和性が高いことにより巧く運営できていると考えられる事例が見出された.この親和性が確保できる条件を整理したうえ,その条件を満たさない場合に可能な対処を検討した.

  • 山口 忠承, 高見 静香
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    核磁気共鳴法による有機化合物の構造解析は, 有機化合物の構造の分析の手段の1つとして紹介されている. 小型の核磁気共鳴装置(NMR)の利用により化学構造が複雑でない有機化合物の構造が高校の現場で確認できるため, 有機化合物に関連した探究活動に適用できる可能性がある. 本研究では, 高校の教師や学生が核磁気共鳴装置に関心が持てるようなテーマとして糖類に関連した実験教材の開発を行った. サトウキビから抽出した糖や, 市販のラムネ菓子から得た糖がどのような化学構造を持つかについて, 高校で実施可能な分析の手法に加えて, 卓上型の核磁気共鳴装置を用いた分析を行い, これらの糖の化学構造の区別が可能な実験教材を開発した. 実際に, 教職課程の大学院生対象に教材の実践を行い, 教育効果について検討を行った.

  • ―学生が持つ理科と関係する職業の種類のイメージに注目して―
    鈴木 哲也
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    教師を希望する学生持つ理科と関係する職業の種類のイメージに注目し、初等理科教育法の中で実践できる授業を開発し、学生の職業の種類のイメージを、小学校理科教科書から抽出した職業リストをもとに分析した。その結果、理科に関係する職業として、教員や医師は、科学者や研究者よりも多く7割を超えており、また小学校理科教科書の職業リストの中にほぼ含まれていることがわかった。またjob tag活用により、アウトドアインストラクターや理学療法士など、はじめに学生が回答した職業の種類にはほとんど含まれていないものが上位を占め、さまざま職業が理科とつながっていることが指摘されたことは授業開発の成果の一つと言える。

  • 吉澤 樹理, 野中 健一
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    昆虫を嫌う児童や教員が多い中で,その「かたち」に着目して3 3D模型を用いてその要因を調査した結果,以下の3点が明らかになった.1)体の形(丸い,中間,細長い)が「細長い」3 3D模型に対して,より不快という感情を持ったこと,2)脚の長さ(なし,短い,中間,長い)が「長い」3 3D模型に対して,より不快という感情を持ったこと,3)不快と感じた3 3D模型は, 脚があることで虫に見えること,ゴキブリに見えることが明らかになった.

  • 大村 結以, 粂井 梨那, 中村 美緒, 沼田 李々花, 小川 玲奈
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    近年,月経(生理)を始めとする女性の健康課題を技術的手段により解決する「フェムテック・フェムケア」市場が急成長している.一方で生理に関わる問題は,個人が技術的手段(製品・サービス)で解決すればよいという問題ではなく,社会全体での理解や法制度の見直し等も進めて行かなければならない「科学技術と社会」の問題である.しかしながら,生理などの話題は公で議論することがタブー視される風潮があり,社会における生理に対する知識及び理解は十分であるとは言えない.そこで本研究では,「科学技術と社会」をめぐる対話実践で注目されているシリアスゲーム活用に注目し,生理の問題を多面的にとらえながら,性別を問わず生理に対する知識および理解を深められる対話実践のためのシリアスゲームの開発に着手した.本稿では,現在開発中のボードゲーム『ペリー来航の7日間』の概要を報告する.

  • 20世紀の数学教育の病理
    浜名 伸二
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    高校数学に対する生徒の学習意欲・思考力の低下は,教育課程における数学の「諸科学との乖離」「大学教育への従属」に原因がある.現行の高校数学の内容の多くを大学教育へ移すと同時に,大学教育の物理・化学・薬学・工学・経済等の一部を高校教育へ移すという大胆な教育改革をする必要がある.

  • ―2022年と2023年の結果の比較―
    小林 久美, 鈴木 哲也, 中和 渚, 齋藤 和可子, 中島 康希, 森田 大輔, 高阪 将人
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,小林他(2022)で提案した「人生すごろく」の実践を,数学科の内容をより多くした形で修正した授業実践の概要や生徒の反応類型を報告する.そして,2022年に行った実践における生徒の反応と比較することで,生徒の反応にどのような変化がみられたかを明らかにすることを本稿の目的とする.人生すごろくで使用するチャンスカードに数学的な要素を多く取り入れるとともに,そのカードを作成するために数学の授業を1時間取り入れたことで,数字を取り扱う内容である「家」「貯蓄・貯金」は増加し,導入した効果がみられた.一方で,生徒の考える人の一生で起こりうる出来事(キーワード数)の減少にも繋がり,家庭科の視点からさらなる改善の可能性が見出された.

  • 小学校第6学年「植物の養分と水の通り道」を題材とした予備的検討
    村津 啓太, 高橋 脩
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,理科におけるデジタルセンサーの有用性に関する小学生の理解を促進するために,小学校第6学年理科「植物の養分と通り道」を題材として,湿度,酸素,二酸化炭素などの植物に関する科学情報をリアルタイムで測定する活動を含めた理科授業デザインを報告する。さらに,デザインした理科授業の実施に向け,植物の蒸散のはたらきを事例として,葉から放出される湿度をデジタルセンサーで計測した予備実験の結果を報告する。本研究では,教育用デジタルセンサーとして市販されている「AkaDako探究ツール(TFabWorks社)」の利用を想定した上で,その有用性として(1)操作の容易性,(2)情報の即時性,(2)視認性の良さ,(4)検索のしやすさという4点を設定し,それらの有用性に関する小学生の理解を促進する理科授業をデザインすることができた。

  • 野口 悦, 川上 雅弘
    セッションID: 1
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/22
    会議録・要旨集 フリー

    厚生労働省による「免疫アレルギー疾患研究10カ年戦略」をうけ,国内でアレルギー疾患対策が総合的に推進されはじめており,その中で,学校は地域の中核的な役割が求められるようになった.本研究では,教員の免疫アレルギー疾患への認識向上や児童の免疫アレルギー疾患の認識向上に資することを目的に,免疫のしくみを題材にした絵本を小学校の教職員に配布し,教室内などでの活用や絵本を利用したアレルギーに関する知識の伝え方に関する調査を行った.小学校内の様々な職種において,免疫に関する知識の必要性は全ての回答者が感じており,免疫のしくみを知る方法として,絵本の有用性を示す回答が得られた.教室・保健室・図書室での子供たちの閲覧に加え,読み聞かせや授業の教材,教員間の参考資料としてなど,小学校現場でのアレルギー・感染症に関わる様々な場面で,専門的な内容を扱った科学絵本が理解促進に寄与できる可能性が示唆された.

奥付・裏表紙
feedback
Top