日本科学教育学会年会論文集
Online ISSN : 2433-2925
Print ISSN : 2186-3628
ISSN-L : 0913-4476
45
選択された号の論文の217件中1~50を表示しています
表紙・目次
論文集
  • 北澤 武, 藤谷 哲
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では北澤ほか(2019)をもとに,教員養成系大学の理科教育法で,受講生全員がICTを活用した模擬授業を行い,教員のICT活用指導力に着目した分析結果について報告する.研究1では,教員役のICT活用を必須とした模擬授業と,教員役と児童役のICT活用を必須とした模擬授業の両実践を比較分析した.結果,後者の方が「児童のICT活用を指導する能力」などへの受講生の意識が高まった.研究2では,研究1のICTを活用した模擬授業による教員のICT活用指導力と教育実習後の教員のICT活用指導力との関係を分析した.結果,教育実習後は「B 授業中にICTを活用して指導する能力」の3項目で,模擬授業の実施前よりも受講生の意識が高くなった.一方,教育実習で実際にICTを活用した授業を行った学生にとって,ICT活用の模擬授業の必要性は高く,かつ,模擬授業の経験は役に立つという認識が強いことが分かった.

  • ―コロナ禍における中学校での事例―
    天野 慎也
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    コロナ禍における本校の理科学習で講じた方策は,「家庭学習の方策」,「遠隔化の方策」,「個別化の方策」の三つにまとめられる.これらの方策により,新学習指導要領で求められる科学的な探究能力を育成するためのデジタル・遠隔学習環境を構築することができた.

  • ―2020年度愛媛大学附属高校WWLの経験から―
    隅田 学
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    2020年度,コロナ禍において,VUCA(Volatility,Uncertainty,Complexity,Ambiguity)が高まる中,学校教育は様々な制約の中で教育活動の継続を行うことになった.急な臨時休業や分散登校はもちろん,通常登校が再開されても常にソーシャル・ディスタンスを保ち,「静かに前を向いて」が続いた.このような状況は科学教育の営みにどのような影響を与えつつあるのか.2020年度より,愛媛大学附属高等学校は,文部科学省WWL(ワールド・ワード・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業のカリキュラム開発拠点校に採択され,これまでのSGH事業の継続発展を計画していたが,コロナ禍で大きな修正や変更が必要となった.本稿では,主に3年生を対象とする高大連携科目「課題研究」を取り上げ,その成果や課題を紹介しながら,新しい科学教育の可能性について議論してみたい.

  • ~これからのオンライン発信に向けて~
    奥本 素子
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    本発表では,緊急事態宣言下,臨時休館を行った博物館が対策として実施したオンライン発信の分析を紹介する.それらの多様な事例より,オンライン発信がオフラインの発信とは異なる内容の発信がなされた.オンライン発信は単に臨時休館中の代替活動ではなく,博物館における新しい社会文化的アプローチを提供できる可能性がある.

  • 林 敏浩
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    コロナ禍において特に大学では対面授業からオンライン授業に大きく舵を切った.オンライン授業は賛否両論があったがウィズコロナの新しい日常では特別な授業ではなくなったという現実がある.一方,アフターコロナの日常におけるオンライン授業については現時点では議論百出の状況である.平時,香川大学でICTインフラを支える情報メディアセンターの教員も兼担し,コロナ禍に突入して大学のオンライン授業が継続的に実施できるように対応してきた経験から(1)コロナ禍でのオンライン授業の特徴は?(2)コロナ禍で何が制約されていたのか?(3)利用者のリテラシーをどう見積もるか?の3点からコロナ禍でのオンライン授業を考察する.

  • -教育工学・インストラクショナルデザインの視点から-
    渡辺 雄貴
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    COVID-19の世界的流行を受け,各教育機関では,様々な感染症対策を講じた取り組みを行ってきた.関連する学協会では,対面授業の代替として遠隔授業を中心的に,その多くの実践事例が,教育実践研究の枠組みとして,報告されている.本稿では,教育工学,インストラクショナルデザインの観点から諸理論,モデルを紹介し,今後の科学教育研究,教育実践研究における今後を考察する.

  • -人はどこまで賢くなれるか?の視点から-
    益川 弘如
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    持続可能な社会の構築のために,私たち人類は「知」を生み出し続ける必要がある.これまでの認知科学・学習科学研究より,一人一人は多様であるが故に,他者との建設的相互作用が「知」の創出につながることがわかっている.ポストパンデミック社会において,人(社会)はどこまで賢くなれるのだろうか.身近な他者から異なる社会文化背景を背負う他者まで幅は様々だろうが,自分と他者との違いに価値を置き,一人一人が前向きな(well-beingにつながる)「知」を生み出し,その共有された「知」を組み込み新たな「知」を生み出すサイクルを学校や社会に実装するため,科学教育と学習科学が手を組む研究が欠かせないだろう.

  • 小川 義和
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    本シンポジウムでは,科学教育研究の第一線で取り組んでいる実践者,研究者が登壇し,コロナ禍における実践的な観点や,学習者に求められる資質・能力の観点などを踏まえ,科学教育研究として期待される研究アプローチについて議論することとなっている.本稿では,その基礎となる社会における科学教育研究の目的と営為を振り返り,新たな変革の時期にあってどのような科学教育研究の可能性があるのかについて考察する.

  • 柗元 新一郎
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,筆者らの研究グループで行ってきた研究を総括し,学習指導要領改訂に向けた統計カリキュラムへの提言を行うことである.「カリキュラム・教科書・授業の収集・分析」では,統計指導が充実している国に着目して分析し,カリキュラムの改善への提言を行った.「小学校・中学校・高等学校の教科書分析」では,分析を踏まえて,批判的思考を育むための問題とその展開を3つに類型化し,教科書をアレンジした教材を提案した.「小学校と中学校,中学校と高等学校の接続を意図した教材開発と実践」では,授業実践を分析・考察し,児童・生徒が批判的な考察が働くような授業設計について検討した.「児童・生徒の批判的思考力の実態調査」では,統計に関わる批判的思考は学年進行に応じて高まる傾向があることなどを明らかにした.統計カリキュラムへの提言として「批判的な考察の扱い」「外れ値の扱い」「グラフや代表値の扱い」について取り上げた.

  • 峰野 宏祐
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,批判的思考の指導の実態を明らかにするために,平成20年及び平成29年告示の学習指導要領下で検定を受けた小学校算数の教科書の分析を通して,批判的思考を促す指導の在り方に対する示唆を得ることである.分析の結果,結論(C)に批判的思考を促す問題は増加するものの分析(A)と結論(C)に偏ること,学年別では3学年から増加していること等が見出された.また,「Ⅰ.他者の考えの真偽を問う」かつ「Ⅱ.誤読しやすいグラフ表現を提示する」の問題が多く見られること,「Ⅲ.“状況に応じた”判断をさせる」についてさらに詳細な分類を検討する必要があることが見出された.

  • 藤原 大樹
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,数学の世界での統計的問題解決における中学生の批判的思考の様相を明らかにすることである.標本の大きさの違いによる標本平均の分布の傾向を教材として扱い,生徒の問い,作業の手間,生徒の納得に関する実践上の障壁の克服を意図して,数学の世界での統計的問題解決の授業を実施した.その中で,箱ひげ図など複数の統計的表現や値を用いて,自他の「分析」に対する批判的思考を働かせる姿が多数確認された.

  • -歩数計の機能を評価する活動を通して-
    冨田 真永
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    本稿の目的は,PPDACサイクルを意図した授業実践を行い,その過程における生徒の批判的思考の様相を分析することで,高等学校における統計指導への示唆を得ることである.まず先行研究を分析し,PPDACサイクルに沿った授業をする際の留意点を考察した.次に「歩数計の機能性評価」の授業実践を行い,生徒の批判的思考の様相を,「統計的問題解決における批判的思考の働き」をもとに考察した.その結果,今後の高等学校における統計指導への示唆として,(1)数学Ⅰの箱ひげ図の学習において批判的思考を要因分析などの深い考察に焦点をあてることで,中学校での箱ひげ図の学習とのすみ分けをしていくこと.(2)箱ひげ図だけでなく複数のグラフ表現から多面的・批判的に考察する取り組みが必要であること,が得られた.

  • 岸本 忠之
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,海外における乗法・除法を中心とした研究動向について,研究のレビュー,専門誌,書籍の観点から示すこととする.その結果,1980年~2000年では,数学的問題解決と認知心理学への着目によって,文章題解決が研究対象とされた.乗法・除法を対象とした研究レビューもなされた.国際会議が開催され,報告書も出された.2000年~2020年では,認知・理解,比較,教師教育など研究対象の事例として取り上げられるようになる.2010年までは認知・理解研究がみられるが,2010年以降は教師教育の研究が多くなる.書籍も,シリーズ中で事例として取り上げるようになる.

  • 筆算と式の優位関係の逆転
    礒田 正美
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    乗数・被乗数の順序問題は,各国教育課程設計上の問題である.本稿の目的は,今日の学校数学が基盤とする西洋数学において,かけ算の式の見方,乗数・被乗数の順序にかかる変更,逆転が,歴史上,いかなる形で現れたのか,そのルーツを特定し,その設計に際しての論拠を示すことにある.そのために本稿では,筆算と文字式導入の歴史に注目し,その導入にかかる主要原典であるFibonacci (1202), Reisch (1504), Descartes (1637), Oughtred(1656, 1694)を参照し,そのルーツを特定した.原因は,筆算に対する文字式表現の導入後に筆算に式の演算記号が導入されたことであり,その際,九九の倍数詞読みを止め,式にあわせて筆算を書くように規約を変えたこと,算術としての筆算が,式を演算とみなし式の値を得る算法として筆算を用いる算術に変わったことに起因する.

  • 小原 豊
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,「異種の2量の割合」における概念化の在り方とその創造性について若干の考察を行い,小学校算数及びその発展としての中学校数学における学習指導上の幾つかの具体的手立てを試案した.結論として,単位量当たりの大きさという数学的アイデアの感得だけでなく,新たな物理量の単位を作る基礎という創造的意味を活かす上で,特異な新量の構成と対概念の明示化という2点を示した.

  • コロンビアの事例から
    小椋 知子
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,スペイン語文化圏の小学校乗法指導系統上における乗数・被乗数の順序の扱いにかかる営みを,コロンビアの事例において示すことにある.そのために,教育省基準および教科書の乗法指導系統における乗法式2表現(「乗数×被乗数」「被乗数×乗数」)の扱いを時系列で分析した.その結果,教育省基準の変遷に「2表現の文脈に応じた混在」→「乗数×被乗数」→「被乗数×乗数」の系統の出現が確認された.スペイン語由来の式表現(乗数×被乗数)では,導入時はよくとも上位学校における文字式で必要となる複合式は立式できず,乗数作用素(乗数×)を除数作用素(×除数)と揃えることで可能になる.教科書により異なる「被乗数×乗数」導入時期の検討が課題となる.日本の場合,指導系統の中で言語に準じた式表現を導入時から一貫して用いることができる.

  • 西村 徳寿
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,事象とグラフを関連づけて構成する際のグラフの見方に注目して,事象から取り出された2つの量をグラフ,式,表の順に結びつける指導例を概念定義と概念イメージの理論(Vinner,1981)から考察することである.考察の結果,指導例では,事象から取り出された2つの量を3つの表現と関連づけながら,グラフ,式,対応表の3つの表現で1つの事象が表されているが,概念定義と概念イメージの不一致があることが明らかになった.

  • 国内外の研究動向の概観からみえる論点―課題研究 企画趣旨―
    川上 貴, 佐伯 昭彦
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    わが国の算数・数学教育では,学習指導要領改訂に伴い,数学的モデリングの学習指導が一層重視されるようになった.昨今のコロナ禍の状況を考えても,その重要性は増すばかりである.だが,通常の算数・数学の授業の中に数学的モデリングの学習指導を実装化するための教師教育(教員養成・教員研修)が追いついていない.本課題研究では,国内外の研究動向を踏まえながら,数学的モデリングに関する教員養成や職能開発プログラムの国内の先行事例を,教師教育者や参加者の立場からみていく.数学的モデリングの学習指導を支えるための,わが国の教育的・社会的文脈に見合った教師教育の在り方や今後の研究課題について議論し,共有したい.

  • 池田 敏和
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は,選択肢による5つの質問を講義の事前事後に活用して,数学的モデリングの指導に関する学生の認識がどのように変容していくのかを分析し,その特徴を明らかにすることを目的としている.分析の結果,選択肢の変容の背景にある理由には,「答えは1つであると思っていたが,日常の問題だと数学化・解釈を伴うので答えは多様になる」「日常の問題でも,条件を付け加えることで解答を1つに定めることができる」といった具合に,学生の多様な解釈のあることが見いだされた.また,学生は,一方では数学的モデリングの指導の必要性を感じながら,他方ではその難しさを感じているという現状も見えてきた.事前・事後の5つの質問は,指導者側が学生の認識の変容を解釈できることに加えて,学生が事前・事後における自分の変容を振り返るための手段になりえることが見えてきた.

  • 御園 真史
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    著者が担当する算数科で指導する内容について学ぶ授業科目では,数学的モデリングについて扱い,学生自身が,自分に身近な問題について,実際に数学的モデリングを行うというレポートを課している.本研究では,小学校の教員免許の取得を目指す学生が提出したレポートから無作為に抽出された学生のレポート注目し,どのように,数学的モデリングに向き合い,数学的モデリングをとらえたかについて考察を行ったケーススタディである.この結果,比例という簡単な関数でのモデリングであったとしても,現実の世界の事象について,数学を使って考え,自分でモデルを立てるという活動自体が,その学生にとって新たな体験であり,それを通して,算数や数学への見方も変わりうることが示唆された.

  • 佐伯 昭彦, 矢田 耕資, 金児 正史
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,数学的モデリングの教材開発と授業実践に関わる教師の資質・能力の育成を目的に,算数・数学教科書の問題から数学的モデリング教材への再教材化を中核とした教師教育プログラムを実施した.2019年度に徳島県内の小中高等学校の教諭と鳴門教育大学の大学院生(現職と学卒)を対象に年間4つのコースを実施した.本稿では,教師教育プログラムの実践事例の概要とその成果及び課題について簡単に報告する.

  • 木村 優里, 原口 るみ, 大谷 忠
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では小学校のSTEM教育の要素を取り入れた2つの事例を取り上げ,その特徴を示した.まず,1つ目は,理科に「エンジニアリング」(E)を導入した事例であり,教科の学習という主旨を踏まえ,要点を抑えつつも大幅に簡略化してエンジニアリング(E)を導入した点が特徴であった.次に2つ目は,総合的な学習の時間に「統計資料の読み取り」(M)を導入した事例であり,算数の既習事項を踏まえてグラフ化した統計資料を読み取り,探究の過程を充実させつつ,それを活用して社会的な問題解決に取り組むという点が特徴であった.2つの事例とも,それぞれの教科の学びを深めることを目的としたSTEM教育型授業であるという点が,共通していた.

  • 生徒の対話に着目した教科横断的なプロセスの解明に向けて
    北澤 武, 宮村 連理, 辻 宏子
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,中学校理科の物理分野「運動とエネルギー」において,STEM/STEAM教育のInterdisciplinary(松原・高坂 2017)に着目し,台車の実験で「斜面と速度と距離の関係をどのように導くことができるか」の問いを解決する授業を行った.そして,3〜4人で1班の対話から用語を抽出し,どのように数学的な見方・考え方を働かせたのかを分析した.結果,問いを解決するための実験計画では,算数・数学に関する用語の出現が見られた.実験後のまとめの議論では,理科に関する用語の出現が上位に認められつつも,算数・数学に関する用語が抽出され,理科の現象にみられる数量関係などを数学的な用語を用いて説明していることがうかがえた.

  • 瀬戸崎 典夫, 北村 史
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,データサイエンスと情報工学の観点からのアプローチによる実社会課題解決をねらいとしたPBL科目における学びの実態について報告する.学生らの自己評価の記述から,1年次の目的であるチームビルディングの観点や,データサイエンスの観点において,意識的に取り組めたことが推察された.一方,情報工学からのアプローチに関しては,他の科目との関連も踏まえつつ,検討の余地があることが示された.

  • 下郡 啓夫
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    科学技術イノベーション政策への転換により,社会にイノベーションをもたらす人材の育成がより強く求められるようになった。その人材要件として,複数の分野にまたがっての課題解決力,課題発見力,課題設定力などが挙げられる.その人材育成のひとつのアプローチとして,デザイン思考(Design Thinking)教育が注目を集めている. デザイン思考教育では,実際に現実の課題を与え、他分野の人たちと多様性に富んだチームを組んで、課題に対する解決案を提示するというプロジェクトの実践を行う.その実践には,共感によるインサイト発見が求められるが,その基盤育成の1つに観察力育成が挙げられる. 本研究では,デザイン思考の基盤としての,観察力育成手法の開発について,現状を報告する.

  • 森田 裕介
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿では,STEM/STEAM教育のカリキュラムを構築するためのひとつの考え方として,探究活動と創造活動を往還するモデルを踏まえ,持続可能な実践のデザインを検討した.探究活動と創造活動の特性を併せ持つモデルとして,大谷(2021)はLearning by Designを挙げている.適切な「問い」と合わせて,初等教育,中等教育,高等教育へと発展的かつ継続的に,探究活動と創造活動をデザインしたカリキュラムの構築に向けて,議論をする必要があろう.

  • 松原 憲治, 西村 圭一, 清野 辰彦
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本課題研究では,2020年の11月16日に調査結果が公表された「OECD グローバル・ティーチング・インサイト(GTI):授業ビデオ研究」の枠組と結果について報告するとともに,その活用に関する発表を行う.GTIは,実際の数学授業を撮影して授業ビデオを分析することにより,教員の指導実践や生徒の学習状況について,より客観的なエビデンスを得ることや,指導と学習成果の関係を検討することを目的とした.授業分析に用いた分析コードは,質の高い指導実践に向けて参加国で同じ水準で評価できるよう各国の数学教育の専門家等によって共同開発された.我が国におけるGTI調査では前期中等教育の数学授業を対象としたが,本課題研究では,GTIの成果の活用として,後期中等教育の数学授業についても試行的に分析を行った.

  • 長谷川 仁子, 松原 憲治, 大浦 絢子
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    「OECD グローバル・ティーチング・インサイト(GTI):授業ビデオ研究」の調査結果を中心に報告する.GTIでは,数学の授業ビデオの分析により,教員の指導実践や生徒の学習成果の関係をより客観的なエビデンスを基に検討することを目的とした.分析コードは,授業運営,社会的・情緒的支援,対話(談話),教科内容の質,生徒の認知的取り組み,生徒の理解に対する評価と対応の6つの指導実践の領域で構成され,指導実践の質が数値化された.GTIの調査結果から,K-S-T(日本)の64%の授業では,比較的高度な問いである,要約すること,規則性・手順・公式の適用を求める問いや,分析の問いに力点が置かれる傾向が見られたことや,K-S-T(日本)の55%の授業では,教員と生徒は考えや手続きがなぜそうであるかを比較的詳細に数学的に深く説明していることなどの特徴が見られた.今後は授業ビデオ研究の手法の活用が望まれる.

  • 大萩 明日香
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    授業ビデオ研究では,授業を録画,観察,分析し結果を比較する.このような取組は教育関係者にとって画期的である.一方,GTI 質問紙の結果から,実際には多くの教員がこのような実践をあまりしていないことが示された.また,GTIの授業観察コードの一つである指標の分析を通して,各国授業のデジタル化があまり進んでいないことも明らかとなった.世界各地で教育のデジタル化が急速に進められている中,急激な変化への対応が教員たちの大きな課題となっており,GTI の結果を踏まえた次のステップを考えていくことは重要である.OECD では GTI で見えた課題に対して,「TeachingMathematics for Deep Understanding: Case Studies」や「Teacher’s Knowledge Survey」等の追加的な調査を実施しており,本稿ではそれらの一部を紹介する.

  • グローバル・ティーチング・インサイト(GTI)授業観察コードを用いた授業分析を通して
    中逸 空, 西村 圭一, 長尾 篤志
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的は,高校数学の授業を,GTI(Global Teaching InSights)授業観察コードを用いて分析することが可能であることを示すとともに,高校数学授業研究会における授業の特徴を明らかにすることである.その方法として,GTI日本授業の分析者を中心とした分析者が,GTI授業観察コードを用いて高校数学の授業分析を行った.その結果,高校数学授業研究会の授業では,生徒の数学的に考える態度の育成を目標としているため,「問いかけ」や「認知面での要求が高い教科内容への取り組み」,「教員のフィードバック」のスコアがGTI日本授業の平均スコアより高くなっていることや,「対話(談話)の性質」や「問いかけ」のスコアが,数学的知識の定着を目指す高校数学の授業とは異なっていることがわかり,授業の質の違いが根拠を伴って明らかになった.

  • 構成要素に焦点を当てて
    森田 大輔
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    2020年11月にOECDグローバル・ティーチング・インサイト(GTI)の調査結果が公表された.GTIは各国の数学の授業の文化的な特徴を明らかにしてきたが,そこで用いられた分析枠組みの2次利用もされるようになってきている.そこで本稿では,GTIの分析枠組みを各種学校の研修へ援用する際の留意点を導出することを目的とする.分析上の解釈が困難な構成要素(component)として,「はっきりとした規則性(パターン),一般化」と「認知面での要求が高い教科内容への取り組み」を挙げた.前者は「少なくとも2つの例を扱う」ということが数学教育研究における一般化と異なること,後者はその観点の多さが分析上の解釈を困難にしていることを明らかにした.また,分析枠組みそのものを援用するにあたっての留意点として,「エビデンスを基に議論することの重要性」と「授業を数値化することに対する解釈」の2点を指摘した.

  • プログラミングとツールとの関わりに焦点を当てて
    飯島 康之
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    GIGAスクール構想が現実のものとなり, 「ネットワーク接続されたブラウザ」をすべての生徒が利用可能を前提とした, 様々な教育用リソースを組織的に提供すべき時代になった.数学的探究そのものを重視するなら, 問題を理解し, 解決のためのツールとしてシンプルに使えるとともに, そこから問題そのものを広げ, 深めていくことが求められる.一方, そのようなツールの仕組みを作り上げているものとしてのプログラミングに注目する生徒には, プログラミングの仕組みを実感し, それを発展させていく可能性も併せ持つこともあっていいと考える.今回, JavaScriptを使ったコンテンツやPythonをCGIで利用する複数のコンテンツ(シンプルな数え上げと形態素分析をするもの)を「テキストに使われている文字・単語をカウントする」話題に関連して開発し, 検証した.

  • 大西 俊弘
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    2 次曲線は高等学校の後半で学ぶ教材であるが,計算を用いる事なく,身近にある簡単な道具を用いて2次曲線を視覚化する教材を黒田が開発している.具体的には,特殊な形をした板に塩を振りかけて塩の山を作り,その山の稜線を真上から眺めると各種の二次曲線を観察できるという教材である.本稿ではまず黒田が考案した発展的な教材を数学的に検証する.次に,それをモデル化してGeoGebra の空間図形描画機能を用いて塩山を再現し,実際の塩山との比較を行った.

  • 濱口 直樹, 高遠 節夫
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    2020年度より多くの大学や高専などでオンライン授業が実施されているが,教育のデジタル化の動きは今後のWebを利用した教育の普及をさらに進めるものと考えられる.その際,課題の配付・提出・フィードバックという場面においては,数式の送受を小さいデータ量で迅速かつ簡単に行うことが重要なテーマとなる.我々は,大学や高専の数学教育において双方向性を重視した授業を設計するために,これまで整備を進めてきたKeTCindyを利用して,学生が入力する際にも間違いが少ない数式送受のための変換システムの開発を進め,上記の課題に取り組むこととした.本稿では,KeTCindyを利用して作成してきた様々な形式の教材例に加え,オンライン授業で効果的に利用できる数式変換システムの概要について述べる.

  • 渡邉 信
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    現在の数学教育はTechnologyを用いない。GIGAスクール構想やプログラミング授業によって、授業環境は大きく変わろうとしている。このTechnology活用の時代になったときに、数学問題は大きく変わる。この変化を具体的に因数分解を例にとって、どのような問題が消え去るかを述べる。またTechnology活用によって数学の問題はどのように変わるかを具体的に示す。数学は考えることによって、楽しい学問であることを示すとともに、Technologyによって新しい数学の世界を見ることを可能にし、数学の世界が広がることを見たい。Technologyは考える道具であって、考えることを補助してくれる。Technologyが答えだけを求めるものではない。数学は技能習得が中心課題ではなく、考えることによって楽しい学問であることを誰もが理解できるようにしたい。

  • 牧下 英世
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    本研究は,中学校,高等学校で指導する初等幾何を中心として数学の概念を視覚化する教材を開発する取り組みである.また,算額の図を題材に,作図教材を作成するものである.さらに,その開発教材を授業研究によって実証するものである.加えて,教職課程履修学生や若手の教員のための教材となることも目論んでいる.この一連の研究においては,ICT,テクノロジーを積極的に用いる.当日は,大所高所より,ご教示をいただけると幸甚である.

  • 野田 健夫, 江木 啓訓, 金子 真隆
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,動的幾何システムを用いた数学の探究的な証明活動について,これを協調学習の形で実施した際の学習者の言語的・非言語的な行動のログをもとに,証明活動における学習者にかかる認知負荷の様態について追跡することを試みる.近年提唱されている協調学習における認知負荷の理論において,課される学習課題の複雑性にとどまらず,各学習者の事前の習熟度が活動中のコミュニケーションやグループとしての認知負荷に大きく影響するとの指摘があることをふまえ,予備課題における各学習者のパフォーマンスと本課題における言語的・非言語的な行動のログとを対照することにより,認知負荷の様態を把握するというアプローチを試みる.

  • 古宇田 大介
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    GIGAスクール構想に基づいた政策により,1人1台のタブレット・PCの普及が現実のものとなった.それに伴い,テクノロジーを利用した数学的活動の場面において,探究活動を行うための教材パッケージ化の必要性が求められている.今回は教材パッケージ化の上で重要となる「探究活動における記録方法」に着目し,(株)CASIOが開発したツールであるClassPad.netを用いて実践検証を行った.授業後の生徒アンケートからは,個人の探究から成果物の共有までを含めた一連の活動をタブレット・PC上で行える良さについて肯定的な評価を得ることができた.一方で,ClassPad.netがメモ(付箋)機能と併せてグラフや図形の描画から,計算処理までを統合的に扱うシステムであるがゆえ,その機能の理解や活用に躓く生徒も散見された.今後は継続的な活用によるテクノロジーへの習熟を課題としつつ,コンテンツの開発に着手していく.

  • 情報通信ネットワークを利用した授業実践
    芝辻 正
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    GIGAスクール構想によって,児童・生徒が一人一台の端末を利活用して授業に参加することが可能となりつつある.ICT端末をインターネット環境上で活用することにより,クラウド型のアプリケーションを利用できる.このようなアプリケーションによって生徒間での思考の共有が容易に行えるようになった.生徒への質問紙調査では今回の活用方法について概ね前向きな意見が挙げられた一方で,自分自身がどの様にICT端末を活用するのかについて考えるべき意見も確認できた.また,このようなアプリケーションは対面の授業だけでなく同期型のオンライン授業でも効果を発揮できるであろう.

  • ドイツのProDaBiプロジェクトに関する研究の概観を通じて
    細田 幸希
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿は,ドイツのProDabiプロジェクトに関する先行研究の概観を通じて,日本の高等学校段階におけるデータサイエンス教育に対する示唆を得ることを目的とした.その結果,高等学校段階におけるこれからのデータサイエンス教育に対する示唆として,様々な種類のデータの傾向から文脈を関連付けたり,仮説等の文脈からデータの傾向を関連付けたりする活動を中心に学習を展開すること,機械学習の手法を扱う活動では手法の実用性を理解する側面だけではなく,異なるデータセットを用いて,作成したモデルの検証や評価を行う側面も重視することの2点が得られた.

  • 大谷 洋貴
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的はインフォーマルな仮説検定の意味の明確化である.統計教育研究の国際誌SERJにおいてこれを主題にしている2つの論文,Lee et al.(2010)とNilsson(2020)において,インフォーマルな仮説検定としてカウントされている活動の特徴を明らかにすることに取り組んだ.推論主義を背景理論としながら,分析枠組みとして,確率を捉える三世界(物質世界,仮想世界,数学世界)に仮説についての可能世界を加えた4つの世界を用いた.結果として,先行研究がコミットしているインフォーマルな仮説検定の活動には,仮説設定の活動,物質世界や仮想世界での評価活動,データ評価と仮説判断の往還という3つの特徴があることが明らかになった.

  • Webサイト上の分析ソフトの利用と授業設計の工夫
    青山 和裕
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    GIGAスクール構想による1人1台端末環境が実現しつつあるが,配備された端末を生かすことができてない学校が多いという現状もある。端末を効果的に利用することで,新教育課程の「データの活用」領域において求められる統計的な問題解決や多面的・批判的な考察を指導できる可能性が広がる。本稿では,OSによらずどの端末でも利用可能なWebサイト上で機能する分析ソフト「eStat」を用いて行われた,小学校第5学年の「データの活用」領域の授業実践をケーススタディとして取り上げ,「データの活用」領域での活動におけるソフト利用の効果と児童の活動の様子についてまとめる。

  • 西仲 則博, 吉川 厚, 高橋 聡
    セッションID: 1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
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    本研究の目的は,中学校の確率の授業で扱われる「2個の硬貨投げ」の課題についての教師用教材の作成と,その教材に対する大学生の反応について分析を行うことにある.教師用教材では,確率の授業でよく使われる,実験を行い,その実験の結果から,新たな知見を得る授業場面をシナリオとして設定し,そのシナリオの中での教師の発言や授業の組み立て方について,教師が気づき,研修を深めることを目的としている.そのため,教師の発言の裏に隠されている判断の適否や知識の間違いについて気づくことができるかを,大学生を対象に調査を行った.その結果,授業の適否については,67.9%の学生が間違っていると指摘し,埋め込まれた間違いに気づくことができた.

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