水資源・環境研究
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1989 巻 , 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 寺西 俊一
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 1-8
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    いま東京湾岸では,いわゆるウォーターフロント開発というキャッチフレーズのもとに数多くの臨海部開発計画が進行している。しかしそれらの開発計画は,たとえば欧米型のウォーターフロント開発にみるような水辺空間の環境的諸機能の回復による都市空間の公共的・市民的再生というコンセプトとは全く異なる次元で展開している。したがって各開発計画はそれ自体として内在的視点から検討されなければならないが,そうした検討視点からみても,それぞれに大きな問題点がある。いまその基本的な見直しを図る各湾岸自治体の公共的役割が鋭く問われている。
  • 石崎 正和
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 9-17
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    河川史の視点からみるならば,江戸・東京の都市形成は巧みな隅田川の治水策と物資輸送路としての隅田川とそれに連なる支川や堀に負うところが大きい。隅田川は江戸・東京の都市機能を支えるとともに,いわゆる江戸文化を育み,沿岸住民に憩いの場を与えた。しかし,江戸・東京の母なる川として住民から親しまれてきた隅田川も,昭和30~40年代には水質の悪化と防潮堤事業の進行に伴って,埋立てが議論されるほどに市民生活から極端に疎外されてしまった。水質改善の努力が実り始めた50年代以降,隅田川再生への動きが活発となる。そこには沿岸住民コミュニティの活躍と住民の期待を受けた行政とが一体となって隅田川再生への試みを展開している姿を見ることができる。しかし,隅田川再生の道程はまだ遠く,日常生活の中での隅田川との親密な関係を結ぶまでには至っていない。隅田川がこれからも隅田川らしさを失わないためには,川と住民の係わりの歴史としての沿岸住民史の把握が大切であり,隅田川をいかに蘇らせるか,その間に対する答えは沿岸住民史を紐解くことによって得られるものと考えられる。
  • 石澤 卓志
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 18-30
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    現在,首都圏は大きな変革期を迎えている。数多くの大規模プロジェクトが進行中であり,この機会に首都圏の大改造を図ろうとする提案も跡を断たない。
    これらの計画の多くがウォーターフロントを対象としているが,その根拠は開発ポテンシャルの大きさと開発容易性に着目したものであって,「水」本来の性質に合った土地利用方法に対する配慮は乏しいのが実状だ。
    既存業務地区の集積メリットの享受などのユーザー側のニーズの把握,プロジェクトの稼働時期の調整,都心部と業務核都市等の地域的な役割分担を検討した上で,各プロジェクトの有する意義を再構築すべきであろう。
  • 松岡 俊二
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 31-37
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    ウォーターフロント開発は都市再開発の中心的プロジェクトとして位置づけられてきている。確かに今日の開発形態はかつての臨海コンビナート開発とは異なり,商業施設や住宅・オフィスといった脱工業的開発が中心である。しかし,開発手法という点では大きな変化は見られないのではなかろうか。いま必要なことは,市民的観点から現在のウォーターフロント開発の抱える問題点を明らかにしてゆくことである。その中心は,やはり,埋立問題であろう。本論文は沿岸域会計という新しい分析概念を提唱し,それに基づいて大阪市・南港事業および神戸市・ポートアイランド事業を財政的側面に焦点をあて,分析した。結論として,都市自治体の開発利益の内実は制度的要因によるものであり,総合的に見たとき,埋立は経済的にいっても問題が大きいといえる。
  • 遠州 尋美
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 38-45
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    関西新空港の建設など,大阪湾では大規模な臨海部開発構想が目白押しである。その多くは,高度成長期に主流であった基礎資源型工業用地の造成とは異なり,神戸のポートアイランドなどに代表される都市型複合開発である。これらは,公害の元凶とされた前者に比べ問題が少ないように思われている。しかし,大規模な埋め立てによることから,水域面積の減少による気温の上昇,水質浄化力の低下など環境への影警も無視できない。一般には,低コストで自治体財政への寄与が大きいと思われているが,国庫補助などが考慮されていないことによる誤解であり,むしろ財政負担を増大させる危険もある。また,これらの開発でつくられた住宅地は,人工島という形態や複合開発のしわ寄せを受け,居住者に生活不便を強いることになっている。とりわけ,周囲を外貿コンテナ埠頭で囲まれたポートアイランドや大阪南港ポートタウンでは,危険物問題が深刻である。さらに,マリーナなど海洋レジャー施設の建設による海難事故の増加が懸念される。このような問題にもかかわらず事実上開発が野放しにされている状況は,計画や管理の非民主性に由来する。沿岸域の民主的計画管理の枠組みを早急に確立する必要がある。
  • 小西 和人
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 46-55
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    本来の意味のウォーターフロントの再開発には,住民運動が不可欠とされている。欧米の例では,まず「住民運動ありき」が成功へのパターンのようである。それにくらべると日本の住民運動は,か細く,弱々しく,ひと握りの人だけで,パワー不足である。
    そのか細い住民運動に,永らくたずさわってきた筆者は,住民運動の中でもユニークな存在で,ともすれば理想論が優先しがちの運動体の中で,ジャナリストとしての経験をふまえての,現実的な運動を続けてきた。釣り人でもある筆者は,ウォーターフロントの問題を,ほとんどの人が"陸の論理"から考えているのに対し,海側からの視点にたつ。
    その運動の具体例から,永らく続いている自民党一党だけの政権のなかでも,日本が変ってきつつあるという,軌跡を検証してみたい。「水資源・環境研究」というアカデミックなレポートには,いささかそぐわない異色かも知れないが……。
  • ルビエール クリスティアン
    1989 年 1989 巻 3 号 p. 56-71
    発行日: 1989/12/20
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    本論文の主目的は,財の水集約度(derived water)分析法を応用して,農・工産物の生産や輸送に要した水を家庭単位での間接水需要として表現する方法に拡張することにある。その前提として,財の水集約度分析の必要性を示すため,本文の前段では著者らの既発表の研究をも要約しながら,研究全体としてのまとめをも行うことにした。本研究全体としての目的は,地域の水資源賦存量および水環境容量の制約によって顕在化している水利用に関する費用・便益の空間的偏りを是正するために,水資源配分システムを公平性の観点から評価する方法論を開発すること,である。
    一般に,地域の都市化や工業化に伴い,種々のコンフリクトが発生する。本研究でとりあげた淀川流域では,琵琶湖総合開発や吉野川開発に関連した大規模かつ多目的計画が逆に水利用の競合を高めたり,水源地域と水利用地域との便益のアンバランスをきたすなどの問題が指摘されている。一つの結果として,例えば琵琶湖の場合,水利用に伴うコストおよび便益の社会的・空間的配分が府県間で著しい偏りを顕わすことになる。このような点に着眼し,地域水利用システムの理論的かつ方法論的な枠組を次のように設定した。
    飲料用などを除く一般の水需要は必ず財・サービスなどの需要にもとづくにも拘らず,水利用の便益評価は生産・物流システムとは隔絶されている。そこで,財生産などに必要な水資源量および環境の汚濁浄化容量,さらに生産過程における水利用技術の便益を,当該財の直接利用者に間接的に認識させるため,新しい(PPPを越えた)情報体系を確立する。このような永資源配分理論は,地域水利用システムの性格に従って,次のような条件を満たさねばならない。
    a.財・サービスの交換に関する地域の物流を考慮できること。
    b.工業用水原単位に,地域ごと・水資源種別ごと・水資源種別ごとの分類を考慮すること。
    c.水配分の決定には,水利用の正(財生産のための有効性)負(水質汚濁など)両側面を含めること。
    d.地域内,地域間,および国際的に行われる移出入・輸出入を地域水配分分析に含めること。ただし当面は,方法論の適用可能性を実証するため,流域内府県相互間の工業生産品の物流に限って取扱う。
    次に,方法論の基本的枠組を示すため,水資源利用に伴う便益配分についての分析方法と,それによる分析結果を示す。分析方法としては,生産段階での工業用水使用量とCOD発生量で財1単位(または単位生産額)あたりの原単位を決定する。この原単位が生産と消費の連鎖における財の地域配分構造にもとづいて,空間的に集合・分散するパターンを求めることによって,水資源利用に伴う便益の地域的移動状況を評価でき,これが財の水集約度分析の基本型となる。この詳細を次の2段階に従って示す。
    第1段階では,生産・消費の連鎖をモデル化するため,淀川給水区域を府県別に区分するとともに,最終消費を簡略化した製品分類で表わし,生産額,卸売額小売額を指標として各府県を「支配」「中間」「下位」の3階層に分け,各階層ごとに中間生産,最終消費のパターンをモデル化する。モデル化には上記指標の他,産業連関表をも利用する。
    第2段階では,上記モデルに水使用およびCOD原単位を組みあわせ,水資源および汚濁に関する水集約度の府県間投入・産出関係の計算法と結果を示す。これによって,産業別・水源別用水量が水利用便益配分を最終的に評価する重要な要素であることが示される。
    分析結果を簡単にまとめると以下のとうりである。まず,淀川流域では一般に,便益が上流府県から下流府県にもたらされていることが明らかになった。また地域水収支は水の水利権配分がもたらしている偏在的な利用を増大させている。汚濁負荷量からみた水便益の県域間配分も同様なパターンを示している。この配分の特徴は大阪府が全給水域の便益を最終的に集めていることである。ところが滋賀県自身の水資源の便益は,汚濁負荷からみた場合を含め,地域配分効果によって県外に移されていることになる。
    以上のような結果を応用して,技術的水利用システムと地域水利用システムの比較を行い,水資源を中心とした環境論的意味での新しい産業特性を抽出することも可能になった。
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