北関東医学
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43 巻, 6 号
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  • 田村 雄次
    1993 年 43 巻 6 号 p. 609-626
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2010/02/17
    ジャーナル フリー
    形態学を基盤とする病理学的診断に, 腫瘍増殖能の定量的解析を加える目的で, 脳腫瘍生検例 (132例) を対象として核DNA量および細胞増殖マーカーKi-67標識率を測定し, 組織・細胞所見との比較検討を試みた.核DNA量は, 組織学的悪性度が増すにつれて, 質的異常と量的増加をみとめた.具体的な組織形態と比較すると, 細胞多態性, 核分裂像, 血管内皮増生などの間質変化と核DNA量との間に相関性をみとめる傾向が強いことが示された.Ki-67標識率も組織学的悪性度と相関を示したが, 標識率の高低と具体的な形態学的所見との間に, 直接的な関連はみいだせなかった.また核DNA量とKi-67標識率との間に密接な関係はなく, 両者は相互に独立した因子と考えられた.本研究を通じて, 核DNA量測定は腫瘍細胞の染色体・遺伝子レベルでの特徴を反映する因子として, Ki-67標識率は細胞増殖相比率を反映する因子として, 形態学的所見のみでは把握できない, 脳腫瘍の増殖能を解析するために有用であると結論された.
  • 五十嵐 恒雄
    1993 年 43 巻 6 号 p. 627-635
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    新生児期の, 完全母乳栄養児および人工栄養児において, β-ラクトグロブリン (BLG) に対する特異IgG抗体 (特異IgG) とIgM抗体 (特異IgM) の推移をELISA法により検討した.特異IgMは母乳群, 人工栄養群共に日齢0と比較してすでに3-8日の時点で有意の上昇を認めたが, 両群間に各日齢で有意差は見られなかった.一方特異IgGは, 人工栄養群では, 日齢10以降有意に上昇したが, 母乳栄養群では日齢30-44まで低値のまま推移した.また, 特異抗体の母親の血中と児の臍帯血の比較では, IgG, IgM共に母体血中の方が, 臍帯血中よりも高値を示し, 特に特異IgGは, 全例 (n=13) で母体血の方が高かった.以上の結果から, 母乳栄養児でもBLG特異IgMを産生するが, 特異IgGは産生しないこと, また, 臍帯血中に特異IgM抗体が検出され, すでに胎内において感作の過程が進行していることが判明した.さらに, 母体血と臍帯血の比較で, BLGに対する特異IgG抗体の経胎盤的な移行量は少ないことが示された.
  • 坂本 浩之助
    1993 年 43 巻 6 号 p. 637-646
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    軽症高血圧症患者20例に心理的ストレス負荷と等尺性ハンドグリップ負荷を実施し, 末梢血白血球数, 血漿活性型レニン濃度などの変動について2つの負荷の間で比較した.心理的ストレスとハンドグリップとで血圧上昇, 脈拍数増加に差がなかった.心理的ストレスは赤血球数, 白血球数, 血小板数を有意に増加させた (各々1.7±0.3%, 10.3±2.1%, 2.8±1.6%).ハンドグリップもこれらを増加させたが (各々1.0±0.3%, 6.2±1.2%, 1.9±0.8%), 心理的ストレスによる白血球増加はハンドグリップによる増加よりも大であった.両負荷とも白血球の増加率が赤血球と血小板の増加率を大きく上回っていた.なお, 心理的ストレスで白血球増加量と収縮期血圧上昇幅との間に正の相関がみられた (r=+0.49, P<0.05).心理的ストレスは活性型レニンとアルドステロンを増加させたが (各々2.9±1.0pg/ml, 7±3pg/ml), ハンドグリップはこれらを増加させなかった.以上のように, 心理的ストレスと等尺性ハンドグリップとでは, 昇圧効果が同等であっても, 白血球増加作用やレニン, アルドステロン分泌作用は心理的ストレスの方がハンドグリップよりも有意に強かった.心理的ストレスが惹起する著明な白血球増加は高血圧症患者の臓器障害を助長する可能性がある.
  • 土尾 泰弘, 岩崎 勉, 太田 直樹, 岩瀬 孝, 滝野 豊, 神田 亭勉, 今井 進, 鈴木 忠, 村田 和彦
    1993 年 43 巻 6 号 p. 647-655
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    従来, 肥大型心筋症の病因として, 胎生期におけるカテコラミンに対する発育心の反応性の異常, あるいはカテコラミンの産生異常が想定され, 妊娠ラットにthyroxineのanalogueを投与すると, その仔ラットに肥大型心筋症に類似した形態変化を生ずることが報告されている.著者らは, 妊娠ラットにthyrotropin releasing hormone (TRH) を投与し, その仔ラットの心の形態変化を観察し, 同時に, 心筋細胞増殖動態の変化をBrdU及び抗BrdUモノクロナール抗体を用いた酵素抗体法により定量検討した.TRHを負荷したラットの仔ラット心は, 非対称性中隔肥大, 心室中隔における心筋細胞のdisarray等, 肥大型心筋症に類似した形態変化を呈した.心筋細胞横径も対照に比し増大したが, 中隔と自由壁との細胞径には有意差を認めなかった.細胞核酸合成期にBrdUを取り込み抗BrdUモノクロナール抗体により標識された心筋細胞数 (BrdU標識率) は, TRHを負荷した仔ラツトの中隔で有意に増加しており, 胎生期にTRHを負荷すると発育心の中隔における細胞増殖能が亢進することが推定された.以上より, 胎生期におけるTRHの負荷により中隔における心筋細胞の分裂増殖能が亢進し, その結果, 新生仔ラットの心に非対称性中隔肥大を生じたものと推定した.
  • アンケート方式による調査
    冨岡 邦昭, 鈴木 英樹, 井上 登美夫, 松本 満臣, 遠藤 啓吾
    1993 年 43 巻 6 号 p. 657-665
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    群馬県内の14施設を対象として画像診断報告書の利用・保存状況・評価に関するアンケート調査を施行した.回答者は140名で, 回収率は87%であった.超音波, CT, MRI, 血管造影, 核医学検査の報告書は, 依頼医の80%以上が利用している.比較的小規模の施設では, 単純及び造影X線撮影の報告書の利用率も高い.常勤の画像診断医がいる施設では, いない施設よりも報告書の利用率が高い.報告書は臨床問題に呼応し, シェーマの付記等も含めて極力読み易いものを, との要求が多数を占めたが, 群大病院内での調査 (1992年2月) と比較し, 日常臨床に即した画像診断報告書への期待が高いことと, 客観的な画像所見に加え, 医師としての主観的判断を報告書上で求める意見が多かった.主観的判断の記載の是非は, 施設規模の大小及び常勤医の有無により差異があった.画像診断報告書の利用度の向上には, 臨床医一画像診断医間の情報交換システムの充実が望まれる.パーソナルコンピュータの導入により, これらの要求を満足する報告書システムの構築が期待される.
  • 小林 功, 大和田 進, 竹吉 泉, 佐藤 啓宏, 森下 靖雄, 松本 満臣
    1993 年 43 巻 6 号 p. 667-671
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    消化管及び術後腹腔内出血に対する初期止血法として, 経カテーテル動脈塞栓術 (以下TAE) と手術を比較検討し, その有用性と問題点を検討した.消化管出血4例の原因は, 癌, 血管異常, 残胃潰瘍, 術後膿瘍の各1例で, 腹腔内出血の4例は膵液痩が原因であった.消化管出血の4例中3例にTAEを行い, いずれも出血部位が確認でき, 2例で止血できた.腹腔内出血の4例中2例にTAEを行い, いずれも出血部位の確認と, 止血ができた.TAE施行例での止血までの輸血量は, 開腹手術施行例に比べて, 有意に (P<0.005) 少なかった.消化管出血や腹腔内出血に対する血管造影とTAEは, 安全で有効な診断及び止血手技であり, 第一に選択すべきと考える.
  • 本邦報告231例の集計検討
    服部 徳昭, 長町 幸雄, 田中 稔, 石崎 政利
    1993 年 43 巻 6 号 p. 673-679
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    下血を主訴とした回腸末端部単純性潰瘍の1例を報告した.単純性潰瘍の病理像は腸型Behget病, Crohn病の初期病変, 腸結核の治癒期と鑑別が難しく, 診断には長期の経過観察を必要とすることがある.今回, 本邦で過去5年間に報告のあった小腸並びに大腸の単純性潰瘍, 非特異性潰瘍症例231例を集計し検討した.
  • 長沼 文雄, 谷口 靖広, 伊藤 雄一, 今井 邦彦, 今井 進, 小山 幸男, 細井 勉, 鈴木 忠, 森下 靖雄
    1993 年 43 巻 6 号 p. 681-690
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    60歳の男性.10年前から僧帽弁狭窄症, WPW症候群と診断されていたが, 僧帽弁口の狭窄が進行するとともに心房細動発作を反復するようになり, 抗不整脈薬の経口投与ではその出現を防止できず, 発作時には直流通電による除細動が必要であった.今回は心房細動が1週間持続し心不全症状を生じたため入院したが, 入院後, 抗不整脈薬により心拍数依存型のtorsades de pointes型の心室頻拍が高頻度に出現し, プロプラノロールでは心拍数を減少させることができないなど, 治療に難渋した.電気的除細動, 抗不整脈薬ならびにドパミンの投与で症状を改善させた後, 僧帽弁置換術とKent束離断術を施行し, その後, 再び心房細動となったが, 術前のように頻拍を呈することはなく, 経過良好である.僧帽弁狭窄症を合併したWPW症候群に心房細動を生ずると, 高度の頻拍のために血行動態が著しく悪化する恐れが大であり, このような時には, highrisk例でなくとも積極的に副伝導路離断を行うべきである.
  • 佐藤 泰史, 吉田 一郎, 石川 進, 大滝 章男, 坂田 一宏, 大谷 嘉己, 相崎 雅弘, 村上 淳, 吉田 崇, 森下 靖雄
    1993 年 43 巻 6 号 p. 691-697
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    右中縦隔に発生した心膜憩室の2切除例を経験した.2例とも術前に診断はつかなかったが, 術中に嚢胞と心嚢間に交通を認めたことから, 心膜憩室と診断した.いずれも上行大動脈の心膜飜転部より発生していた.心膜由来の嚢胞性疾患は右心横隔膜角部に好発するというのが一般的であったが, 心膜憩室の本邦報告例では59%が右上縦隔ないし右中縦隔に発生し, その大半が上大静脈と奇静脈に囲まれた部位, いわゆる “cephalad recess of azygos vein” に存在し, 注目すべき好発部位と考えられた.同部に発生した嚢胞性腫瘤では, 常に心膜憩室を念頭におくべきである.
  • 1993 年 43 巻 6 号 p. 699-705
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
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