新生児期の, 完全母乳栄養児および人工栄養児において, β-ラクトグロブリン (BLG) に対する特異IgG抗体 (特異IgG) とIgM抗体 (特異IgM) の推移をELISA法により検討した.特異IgMは母乳群, 人工栄養群共に日齢0と比較してすでに3-8日の時点で有意の上昇を認めたが, 両群間に各日齢で有意差は見られなかった.一方特異IgGは, 人工栄養群では, 日齢10以降有意に上昇したが, 母乳栄養群では日齢30-44まで低値のまま推移した.また, 特異抗体の母親の血中と児の臍帯血の比較では, IgG, IgM共に母体血中の方が, 臍帯血中よりも高値を示し, 特に特異IgGは, 全例 (n=13) で母体血の方が高かった.以上の結果から, 母乳栄養児でもBLG特異IgMを産生するが, 特異IgGは産生しないこと, また, 臍帯血中に特異IgM抗体が検出され, すでに胎内において感作の過程が進行していることが判明した.さらに, 母体血と臍帯血の比較で, BLGに対する特異IgG抗体の経胎盤的な移行量は少ないことが示された.
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