2020 年6 月22 日,国際スーパーコンピューティング会議ISC2020 において,スーパーコンピュータ「富 岳(ふがく)」が世界のスーパーコンピュータの性能ランキングであるTOP500, HPCG, HPL-AI, Graph500 の4 部門で第 1 位を獲得した.その後,4 期連続で4 冠を達成している.本稿では「富岳」のプロジェクト概要及び,開発目標と特徴について紹介する.
富岳産業利用枠を利用した全固体電池界面の第一原理計算による解析を紹介する.固体・固体の界面は固体・液体界面構造と比べても計算モデルの立て方が難しく,信用できる結果を得るには考察する界面構造ごとに複数のモデルを計算し、物理量の分布を評価する必要がある.このため,富岳の様な大規模計算リソースが有用となる.本稿では全固体電池で問題となる電極活物質と固体電解質の界面で生じるLi 伝導の抵抗要因を,電解質が硫化物の場合と酸化物の場合を比較しながら,第一原理計算によって考察した結果を紹介する.
医薬品開発においては,有効成分(API; active pharmaceutical ingredient)の探索のみならず,標的部位への API 送達(drug delivery)を目的とした製剤開発が必要となる.効果的な医薬品の上市に向けて,有効性・安 全性・品質の多項目最適化を実現した製剤を設計することは,製薬産業界において一般的に困難な課題である.弊社では,これまで多大な人的・物的コストを要する製剤開発研究をsimulation / informatics 技術により効率化する取り組みを行っており,その学術的発展と産業課題である製剤開発研究のさらなる合理化に資することを目的に,「富岳」利用研究にて『製剤特性の理論的・分子論的解析手法の開発』も実施している.これまでの研究を略述するとともに,「富岳」を利用した研究の概要を紹介する.
非晶ポリマーの破壊挙動における延性と脆性の違いを理解するために,ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートについて,様々な多軸変形に対する全原子分子動力学シミュレーションを行った.静水圧に依存したMises の降伏条件と整合した偏差変形支配の降伏とキャビテーションに起因する体積変形支配の降伏が観察された.ポリマー種および温度に対する挙動を解析することにより,延性-脆性転移との関係と今後の課題を議論する.
ハイブリッドモンテカルロ(HMC)法は,原子配置の提案に分子動力学(MD)法を使用するモンテカルロHMC 法は比較的平坦なポテンシャルエネルギー曲面(PES)に対しては,効率的に大域的な配置サンプリングを達成する.一方,ポテンシャル障壁に隔てられた多数の極小が存在するPES に対しては,MD 法と同様に適切かつ大域的に配置をサンプルすることが困難となる.本稿では,HMC 法にPES
SINDOは分子の振動状態を計算するフリープログラムである.量子化学計算やQM/MM計算により,非調和ポテンシャルを生成するMakePES,そのポテンシャルに対する振動Schrödinger方程式を解くsindo,振動モードを可視化するJSindoの3つのサブプログラムで構成される.本稿では,最近公開したSINDO4.0を紹介し,応用例として,強い水素結合系(プロトン化水クラスター,ロドプシン内部水)を解説する.生体分子や材料系への展望を議論する.
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