アンサンブル
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20 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集
連載
最近の研究から
  • 村瀬 洋介, 内種 岳詞, 伊藤 伸泰
    2018 年 20 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2018/10/31
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    本稿では我々が開発しているパラメータ空間探索フレームワーク「OACIS」を紹介します.一般に計算科学では,シミュレーションプログラムを作成したあと,様々なパラメータを設定して結果を確認するという試行錯誤を多数行う必要があります.OACIS はそのパラメータ探索の過程を自動化/簡素化し,研究者がより本質的な科学に集中することを助けるソフトウェアです.自分のシミュレーションプログラムを登録すると,ユーザーはウェブブラウザ上の画面からパラメータを指定してリモートの計算ホストにジョブを投げることができます.投入したジョブの状態は定期的にチェックされ,計算が完了すると結果を手元のマシンに自動的にダウンロードします.その際に,いつどのようなパラメータでどこにジョブを投げたかデータベースに記録され,ブラウザ上から結果をわかりやすい形で閲覧することができます.本稿ではOACIS の自体の解説に加えて,どのように分子計算に利用できるかという事例を紹介します.

  • 笠原 浩太, 椎名 政昭, 肥後 順一, 緒方 一博, 中村 春木
    2018 年 20 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2018/10/31
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    蛋白質における天然変性領域(IDR)は特定の立体構造をもたないフレキシブルな領域であり,リン酸化などの化学修飾を受けて蛋白質の機能制御を行うなど,重要な役割を果たしている.本研究では重要なDNA 結合蛋白質であるEts1 に着目し,そのIDR がリン酸化を受けることでDNA 結合親和性を低下させる制御メカニズムを理論と実験の両面から明らかにした.独自のマルチカノニカル分子動力学法(McMD)を用いて求められたリン酸化Ets1 および非リン酸化Ets1 IDR の構造アンサンブルより,リン酸基がDNA 結合領域へ接触することで競争的にDNA 結合を阻害するメカニズムが示唆された.ここで明らかとなった重要なアミノ酸残基に関する種々の変異体について実験的な結合解離速度測定を行い,計算結果と整合することを確かめた.

博士論文紹介
  • 鈴岡 大樹
    2018 年 20 巻 4 号 p. 260-263
    発行日: 2018/10/31
    公開日: 2019/10/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,量子・古典複合型の分子シミュレーション手法であるQM/MM 法と,正確かつ効率的な自由エネルギー計算手法として知られる溶液論(エネルギー表示の理論; ER 法)を結合した,QM/MM-ER 法を採用し,自由エネルギー解析を行った.本稿では,2つの研究成果について概説する.1つ目は,ベンゼン分子の水和において,電子密度揺らぎの自由エネルギーへの寄与を,π電子とσ電子に分割した.これにより,π電子がより大きく分極し,σ電子の3 倍近い安定化の寄与をすることが定量的に示された.2つ目として, 本方法を生体系に適用し,光化学系IIPhotosystem II; PSII)における酸素発生反応の酸化自由エネルギーの解析を行った.その結果,PSII タンパク質の存在が,反応中心であるMn クラスター(酸素発生複合体; OEC)の酸化自由エネルギーを著しく低下させることが明らかとなり,PSII タンパク質が生体内の電子移動を促進させていることが示唆された

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