近年の構造生物学においては、分解能や特性の異なる構造解析実験手法を組み合わせる相関構造解析によって, タンパク質等生体分子の機能発現メカニズムの解析が行われるようになった. そのため, X 線結晶構造解析が難しいタンパク質であっても, 立体構造の特徴や構造変化の情報について知見が得られるようになってきている. X 線小角散乱(SAXS)実験は, 低分解能ながら, 溶液中のタンパク質分子の概形が得られる有力な手法である. しかし, SAXS データは1 次元の散乱曲線であり, その解釈には, 高分解能な立体構造(変化)の情報が必要である. 本稿では, 低分解能に由来する困難を, 分子動力学(MD)シミュレーションから得られる高分解能情報と相補的に組み合わせる, MD-SAXS 法によって解決した研究について紹介する. 創薬標的タンパク質核内受容体やヌクレオソームについて、それぞれ、全原子モデルと粗視化モデルで溶液構造探索を行った.
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