日本神経回路学会誌
Online ISSN : 1883-0455
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22 巻, 2 号
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巻頭言
解説
  • 青井 伸也
    2015 年 22 巻 2 号 p. 53-63
    発行日: 2015/06/05
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    ヒトや動物は,冗長で複雑な筋骨格系を巧みに動かし,多様な環境の中で適応的な歩行を実現している.近年の生理学的研究から,生物の運動制御における様々な協調構造(シナジー)の存在が明らかにされ,生体に内在する冗長性を解決する戦略として広く示唆されている.特に筋活動に内在する協調構造は筋シナジーと呼ばれ,ヒトだけでなくサルやラットなど様々な生物で共通する構造が見受けられている.ただし,筋電図など計測データの解析からこのような生物の有する適応的な歩行戦略が垣間見られるが,神経系が実際どのように作用し,適応的な歩行に寄与しているのかは定かではなく,生物の歩行戦略を理解する上で,運動計測と解析に基づく手法には限界がある.そこで近年,解剖学的に詳細な筋骨格系の数理モデルと神経生理学的な知見に基づく神経制御系の数理モデルを統合した神経筋骨格モデルを用い,動力学シミュレーションを介して構成論的に神経制御系の役割を考察する研究が行われている.本解説では,生物の適応的な歩行に見られる筋シナジー構造や神経系におけるその制御に関する生理学的仮説について解説すると共に,生物の神経筋骨格モデルを構築し,その役割を構成論的に明らかにすることを目的とした研究についていくつか紹介する.
  • 筧 慎治, 李 鍾昊
    2015 年 22 巻 2 号 p. 64-67
    発行日: 2015/06/05
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    多くの神経疾患は原因の如何にかかわらず難治であるが,iPS細胞による再生医療革命により光明が見えつつある.しかし臨床現場における神経疾患の病態評価方法は旧態依然であり,この革命に十分に応えられないように思われる.我々は様々な神経疾患における脳内の複雑な病態を全く新しい方法で分析し,神経疾患の治療やリハビリを抜本的に革新するための「神経疾患治療ナビゲーター」というシステムを臨床現場と共同で開発中である.その背景と今後の発展の可能性について紹介する.
  • 國府 寛司, 大林 一平
    2015 年 22 巻 2 号 p. 68-77
    発行日: 2015/06/05
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    時間と共に変化する現象の多くは,非線型力学系として捉えられ,それを数理的に良く理解することで,現象の予測や制御が可能になる.しかし現実の現象のダイナミクスは,その非線型性や規模の大きさのために数学的解析が困難であり,数値シミュレーションも容易でないことが多い.また,物理的現象のように,その現象を理解するための法則が第一原理として与えられる場合を除けば,現象を数理的に記述する絶対的な基本法則が存在せず,異なる観点から複数の数理モデルが導かれる場合には,現象のダイナミクスの本質をそれらの数理モデルからどのように理解すれば良いかも必ずしも明らかではない.
    本論説では,非線型現象のダイナミクスの相空間の大域的構造の最も粗い情報に着目して,その現象を表現する数理モデルに過度に依存しない形で抽出することで,複数の数理モデルを貫く現象のダイナミクスの本質を見出そうとする試みを,筆者らの最近の研究に基づき,技術的細部は大胆に省略して,その考え方の骨格を紹介したい.
報告
会報
編集後記
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